見出し画像

読書家ではないけど本を読む人

私は時として本を読む。読書家と言えるほどの量では到底ないが、年間10冊くらいは読む。

自分がどのくらい本を読むのかを考えた時に、月に1冊は読まないけれども、2ヶ月に1冊では少ないと思っていた矢先に、「年間10冊」と言うキリも良ければ私が本を読むペースを表すのにもシンデレラフィットする数字と出会えた奇跡に感動した。やはり読書とは出会いである。

そんなシンデレラな私がどんな本を読むのかと言えば、9割が芸人のエッセイである。自分がキャッチーで読みやすいエッセイばかり読んでいる点から見ても「読書家」と言うにはまだ道半ばだと分かる。

そんな道半ばシンデレラな私も、たまには気分を変えて小説でも読もうとか思った。そんな考えからぼんやりと小説を探す。学生時代に熱を上げていた森見登美彦の小説を久々に調べる時間が何だか心地よかった。

本を買う時にフリマサイトを利用することが時折ある。とにかく安いし、意外にも本の状態も新品同様であったりするからだ。1回だけ読んだらあとは嵩張るし、読み返す機会もないからという理由で出品しているユーザが多いのではないだろうか。確かに紙の本には電子書籍にはない「何か」がある気がするから、あえて紙の本を愛読する人もいるだろう。その「何か」がなくならない限り紙の本はこうして生き続けていくのだろう。

そんなこんなで今回は森見登美彦の「夜行」と言う小説をフリマサイトで購入した。なんとキャンペーンだかポイント還元だかで文庫本が1冊50円で変えた。おいおい、こんなことがあっていいのか。自分はとても楽しませてもらってますし全然もっと出せますよとか思いながら、逆に何でこんなに安いのにみんな買ってないんだろうとか思いながら、最近家の近くに出来た喫茶店にベトナム人ばかり吸い込まれていくのはなぜだろうとか思いながら、本が届くのを心待ちにしていた。

しかし本はいつになっても届かない。配送業者へ追跡情報を問い合わせてみると配達済みとなっており、フリマサイトの出品者からは俺の不手際で受け取れてないのではないかと疑われ、不可抗力による板挟み状態である。

しかしよく確認してみると、フリマサイトでの登録住所が実家になっていたのだ。嗚呼何とも阿呆なのだろう。先日引っ越した際に住所変更を失念していたのである。環境の変化にうわついていたため魂だけ引っ越してしまい「側」を置いてきてしまった。

そんな訳で実家の父を通して本の無事を確認し、後日受け取る約束を取り付けたので一安心だ。

ただここで皆さんと確認しておきたいのが、私の父は読書家であるということだ。詳しくは知らないが恐らく年間100冊くらいは本を読んでいるだろう。そんな父に本を渡してしまえばもう一瞬、翌週に本を受け取りに行った時には「この本、面白かったぞ」とすでに読破しているのである。

しかも父曰く、その本は非常に練られていて緻密に構成されているとのこと。皆まで描かれていないが、それらを表現する描写が細かく、何度も繰り返し読むことでどんどん見えてくる物が増えるとのこと。「もうすでに2周読んだが、また読みたいからお前が読み終わったら貸してくれ」と私の手に本が触れた時にはすでに、本のレンタル移籍みたいな状況になっていたのである。

まあ安さ故に買ったような本でありそこまでこの本に固執していた訳ではないので、そんな本を父がえらく気に入ってくれたならもうそれだけで十分50円以上の価値を見出せているように思える。もう私は読まずともこの50円の本を父にあげてもいいくらいである。結果的には私もその本を読んだ上で開催される感想会がまた一興であり、それも含めてこの本であったのかもしれない。

何気ない50円から始まった物語であったが、思わぬ結果として収穫を得た。ぜひ今後とも本を読む習慣は忘れずに脈を打っていきたい。

この記事が参加している募集

スキしてみて

最近の学び

サポートよろしくお願いします!あなたから頂いたサポートは必ず「非日常」に使います!