私が分別を出来なくなった日
世の中には知らない方がいいこともある。これはある。絶対にある。その気付きによって今まで通りの生活を送れなくなるかも知れない。しかも何が怖いって、知識とは知らなかった状態へ戻すことが出来ないことだ。
みなさんご存知の通り、マクドナルドという罪悪感を旨味に変換するハンバーガーショップでは、提供される食器がトレーを除いて全て使い捨てである。そのため普通の飲食店であれば返却口とは厨房の洗い場に通じているべきであるが、マクドナルドの返却口には、入り口が燃えるゴミとプラスチックゴミの二つに別れているゴミ箱と、深淵につながる飲み残しボットン便所が設置されている。
私は子供の頃から母親にマクドナルドに連れて行ってもらう度に丁寧に分別をしていた。まだ分別という概念がよく理解できていない頃は母親に「これはどっちに入れればいいの?」と聞きながら、トレーに乗ったゴミを一つずつ丁寧に分別していた。分別のコツが掴めてきた年頃になると、母親からゴミを奪い取り、ゴミを分別することに高揚感を抱いていた。
分別することは当たり前のことだと思っていたし、分別することこそが毎回ハッピーセットで楽しませてもらっているマクドナルドにお返しが出来る最善で唯一の方法だとも思っていた。
そう思えている時は今思えば幸せだった。その時はまだ性善説とか唱えていたのかも知れない。ウォーターサーバーの営業の人の話も真面目に聞いていたし、公衆トイレで自分がトイレットペーパーを使い切った時には次の人の分を補填していた。
しかし私はある時、世の中の真髄を知ってしまったのである。
私の中では「X day」と呼んでいるその日、私はいつも通りマクドナルドでチーズバーガーにトマトをトッピングした食べ物を食べていた。その時、店員がゴミ袋の入れ替えにやってきたのである。店員がゴミ箱を開けると、中には二つの入り口につながるように二つのゴミ箱が設置されており、そのゴミ袋を回収して新しいゴミ袋を設置するようだ。
ここからが世の中の、そしてこの記事の真髄である。店員は燃えるゴミの方のゴミ袋を取り出してまとめ、プラスチックゴミが入っているゴミ袋にそれをぶち込んだのである。
嗚呼なんということだ。みんなが丁寧に分別したゴミは、最終的には店員によって一つの大きなゴミにまとめられて処分されていたのである。これでは今まで真面目に分別してきた私が阿呆ではないか。
それからというもの、私はもうマクドナルドでは分別もせずに、トレーの上にある全てのゴミを燃えるゴミに捨てるようになってしまった。もちろんウォーターサーバーの営業の人の話は聞かないし、公衆トイレのトイレットペーパーも変えない。
しかしこの行動に罪悪感は感じていない。悪いのは私ではないと信じて疑わないのである。
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