見出し画像

趣味として自転車を始めたきっかけと失ったもの。

こんにちは。神楽坂つむりです。

2010年頃から自転車旅を始めて早くも10年が経過しました。振り返ってみればものすごく濃厚な10年で、人生のエンドロールの際には間違いなくハイライトされる10年だと思います。

note記事一作目は自己紹介も兼ねてこの3,650日の初日、自転車旅を始めたきっかけについて書きたいと思います。

都会住みのフラストレーション

少し自己紹介になりますが、私は大阪府在住です。生まれも育ちも大阪、と言うとチャキチャキの(このチャキチャキと言う表現も昔から使っているので一体これが具体的に何を指すのか分かっていません)大阪人と思われることが多いですが、本人は至って普通の人物です。

今でこそ暇を見つけては日本中を駆け回っていますが、昔からアウトドアは好きでした。小学校の頃は夏休みが来る度にカブトムシに負けないくらい太陽光で肌が黒光りするまで外で遊び回っていましたし、中学時代には当時流行していた「メタルギアソリッド」に憧れて同級生達と一緒に十三の商店街近くにあったガンショップまでママチャリを漕いで行き、PSG-1を購入して箕面の山奥でスナイパーの真似をしたりしていました。近所の河川敷に自生していたツクシや菜の花、それに初夏の紫陽花やひまわり、秋の紅葉や冬のマーガレットなんかを採集したりしてオリジナルの図鑑を作るなんてことをしていたくらいなので、今思えば結構外にいる時間が多かったように思えます。

とは言うものの、外に出る割には遠くに行く機会が少なかった学生時代でした。
両親とも実家は大阪府内で、親戚のほとんども大阪府内、遠くても京都の市内でした。石川県の和倉に住んでいる親戚もいましたが、そこまで親しいわけでもなく、せいぜいお正月に会うくらいでしたし、それも大阪の実家に集まって顔を合わせると言うものでした。

つまり私はいわゆる「帰省」と言うイベントを体験したことがありませんでした。

知らない場所への憧れ

夏休みや春休みなどの長期休暇が明けてからの一週間くらい、学校に行くと友達同士が田舎へ帰省した話をしているのを隣で聞くことがありましたが、結局最後まで私はその会話に参加することができませんでした。

心の奥底では友達が遠くの町へーー例えそれが本人の意思ではなく帰省と言う強制参加イベントであったとしてもーー私の知らない場所に行っている事実を羨ましく感じていました。フラストレーションと言ってもいいでしょう。

最初にそう感じたのは小学校三年生の頃だったと記憶しています。友達のナオ君に広島県の海と線路が見えるどこかの港町で釣りをしている写真を見せてもらった時に、私は「実際にこの場所に僕も行ってみたい」と思いました。大阪は海があるものの写真で見せてもらったような青い海は見たことがなくて驚きましたし、何より写真から伝わって来る空気感や雰囲気に心惹かれました。

「知らない場所への憧れ」がこの時に芽生えたと思います。ちなみにこの場所へは自転車を始めてからは何度も訪れることになります。まさか当時は自転車で行くことになるなんて想像もしていませんでしたが。

画像4

結局、経済的に多少なりとも自立する大学生になるまでは、まともに県外に出ることがありませんでした。家族旅行で京都や奈良、和歌山に行くことはありましたが、それはあくまで旅行であり、私が現在楽しんでいる「旅」ではありません。

小学三年生の頃に胸に抱いたあの「知らない場所への憧れ」を解消するために必要なリソースがようやく揃いつつありました。

お金が、ない。

子供時代から溜まりに溜まった「旅欲」をいよいよ解放するときが来たのです。
私は小学生の頃からこのときに備えて、いつかの誕生日に両親に買ってもらった日本地図を擦り切れるまで隅々まで読んで日本のおおよそのことを把握していました。桃太郎電鉄にもずいぶんとお世話になりました。ナオ君とは一緒にゲームをする仲でしたが、たまにお互いヒートアップしてコントローラーを投げたり突然電源を押して喧嘩するなんてこともありましたが、今となっては良い思い出です。

おかげで地理のテストでは毎回ほぼ満点を取れる程度には各地のことに詳しくなっていたのです。この行為は旅欲を満たすどころか、その欲望を増幅させる行為に他ならなかったと今になって思います。

大学生になりいよいよ「旅に出るぞ!!」と思い至った段階で私はふと冷静になりました。

「どうやって旅をしよう・・・・?」

日本地図は頭に入っている。訪れたい場所たくさんメモしている。ただ具体的にどうやって訪れるかを考えていませんでした。

全国を旅するならば電車もあるけれど、当時の私は何となくバイクに憧れがありました。車はその次くらい。エンジン付きの乗り物を乗りこなしたいという若者が一度は持つ欲望を私も忠実に持ち合わせていました。が、ここで現実的な問題が降りかかってきました。

「お金が、ない。」

時間はあってもお金がない。

なにせろくに貯金もしてこなかった学生なのだから当然です。
それに私は高校一年生の頃から大学を卒業するまでの7年間、バンド活動をしていました。高校生の頃は軽音楽部の部長をしたり、大学時代は複数のサークルやバンドを掛け持ちしていた程度には結構ハマっていたのですが、世間一般的なバンドマンに対するイメージ通りに、お金がありませんでした。ベースの弦やシールド、アンプ、エフェクター、ライブ会場費やスタジオ練習費、交通費、部費エトセトラエトセトラ・・・。

とてもじゃないけれどいきなり20万円も30万円も用意できっこない。
せいぜい10万円が限度だ・・・・。でも10万円で旅なんてできっこない・・・・ヒッチハイクや青春18切符旅という手段も思いつきましたが、なんだかロマンを感じませんでした。私がしたかった旅はもっとこうアナログだけれど爽快感があって、サマーウォーズに出てくる田舎の風景を見に行くような旅がしたくって・・・。

思い立ったが吉日

そんな折、染谷翔さんという人が自転車で日本一周している様子をニコニコ動画にアップしているのをたまたま見つけました。

「これだ!!!」

まさにピンと来ました。
自転車だったら大してお金もかからないし、免許もいらない。走る場所も自由だし、ガソリンもいらないし、体力さえあればどこまで進めそう。

それに「自転車で旅するってなんかかっこいい!」と思いました。

そう思い立った翌日にはネットで家の近くの自転車店を検索して、その翌日には10万円を握りしめてとある中古自転車店に飛び込んでいました。
ろくな知識もなかった私ですが旅をするにあたって必要な「太いタイヤを履ける」「荷台(キャリア)を取り付けるためのダボ穴がついている」という2点だけは頭に入れて店内を物色。店員さんにも私のしたいことだけをストレートに伝えて自転車選びを手伝っていただきました。

わずかばかりの(だけど当時の私には大金の)予算内で収まったルイガノの中古ロードバイク をほぼ即決で購入しました。7万円。今からすると「7万円で走ることができる状態の自転車が手に入ってそれで旅をするの!??」と言う感覚ですが(もちろん今でも10万円以下で自転車旅に適した自転車を買うことはできます)知識も経験もない当時の私です。今のようにSNSで情報が手に入る時代でもなかったですし、お金もなかったですし、仕方がありません。

残りのお金と翌月のバイト代で荷台バッグ、ボトルケージ、テント、自炊道具などの自転車旅で必要なアイテムを購入し、そしてその翌月に初めての宿泊旅である瀬戸内海一周旅に旅立ちました。

画像1


この旅のことは今でも鮮烈に覚えています。

自宅の玄関を飛び出したときのわくわく感、
見慣れた景色が徐々に薄れていき、
見知らぬ土地にたどり着いていたときの高揚感、
知らないお店、知らない建物、知らない地名、
手間取りながらも設営できたテントのしわ、
お湯の温度が足りずに少し硬めにできたカップラーメンの味、
キャンプ場から眺めた瀬戸内海に沈む夕焼けの赤・・・。

「ああ、旅に出て良かった。自転車で来て良かった・・・。」


小学三年生の頃から抱いていた「知らない場所への憧れ」がようやくカタチになりました。このときから私は自転車旅の魅力に取り憑かれてしまったのです。

全国行脚

初めての瀬戸内海旅から私が続けていることがあります。

「走ったことがある場所を日本地図に赤線で書き込む」

自室にある日本地図に自転車で走ったことがある場所を赤線で書き込むという儀式をこの時から私は続けています。最初は何となく「どの辺走ったっけ?」と思い出すために軽い気持ちでスッと線を入れただけ。次の北海道一周旅が終わった時にも同じことをしました。九州へ旅立った時にも同じことを。四国、山陽、山陰、北陸、中部、東北・・・

これを繰り返しているうちに、いつしか日本の外周部、つまり気付いた時には日本を一周していました。

画像3

地図に赤線を引くことが目的じゃないけれど・・・それを求めることはつまり「今まで見たことがない景色に出会うこと」と同義。私の好奇心は日本地図の赤線を引いていない場所へと強烈に惹きつけられて行ったのです。

こうして私はあの瀬戸内海一周旅からずっと「見たことがない景色」を追い求めて自転車で旅をするようになりました。

根底になるのはあの頃の自分の力ではどうしようもなかった「知らない場所への憧れ」であることは言うまでもありません。

画像2

私が自転車を始めてから得たものはこれから少しずつ執筆していこうと思います。それは経験だったり考察だったり見た景色だったり文化の学習だったり人との出会いだったり。本記事のタイトル後半と真逆のことばかりを書いていくつもりです。お金と時間は、得られたものを考えればお釣りが来て余りあるくらいですから。


主にTwitterで日々の旅のことを呟いています。よろしければフォローお願いします。
Twitter

Instagramもやっています。写真をまとめています。
Instagram

最後に、全国各地の旅の様子をブログにまとめています。是非ご覧ください。
つむりの悠々自適ライフ

この記事が参加している募集

スキしてみて

サポートいただければ記事執筆の励みになります。頭の中の堆積物を私なりのカタチで今後もアウトプットしていきます。