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第1章最終話【タロジロと私。ときどきお父ちゃん】⑩絶望と信じる勇気

愛息子タロジロへのラブレターです。
 
タロジロ
本当の優しさとともにすてきな仲間を作ってね。
 
子どもに会えない親や親に会えない子どもは、愛していると伝え続けてほしい。 
 
自分を信じて、人と寄り添い、あきらめずに歩んでいこう! 
 
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7歳ジロウが珍しく真面目な顔してお母ちゃんに質問をする。 
 
「なんで日本に帰ってきたん?」  
 
名探偵コナンの小説を読んでいる11歳タロウは、コッソリ聞き耳を立てている。 
 
なんでに「なんで?」と返すお母ちゃん。
 
懇願するような眼差しで、幼いジロウは心を吐きだす。 
 
 
 
 
「ずっとマレーシアにおったら、お母ちゃんと一緒におれたやん」 
 
 
 
 
タロウは読みかけの小説をパタンと閉じて、ジロウを見つめるお母ちゃんに視線を移す。 
 
 
 
 
帰国した私の判断はきっと間違っていない。 
 
今の出来事全てを未来のタロジロと笑い飛ばしてやる!! 
 
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「元気か?」 
 
2017年11月、振り絞ったようなお父ちゃんの声が私の胸に突き刺さる。 
 
 
マレーシアでの生活が2ヶ月を過ぎたころ、私はタロジロにお父ちゃんへのLINE通話を促した。 
 
 
 
タロジロはお父ちゃんの質問に、「うん」か「ううん」を繰り返す。 
 
発展性の薄い質問に三人の会話はどんどん心もとなくなり、お父ちゃんの言葉だけが取り残され始める。 
 
タロジロは「ウピンとイピン始まるからテレビ観る~」と言って、LINE画面から消えてしまった。 
 
うまく会話できない三人に、私はやるせなくなったけど、言葉を取り持つ心の余裕はない。 
 
 
 
お父ちゃんのただの話し声が、未熟な私の心を再び突き刺した。
 
 
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タロジロの学校と住処が定まった12月。 
私は日本への一時帰国を決めた。 
 
 
投げ出すように捨ててきた日常を清算し、タロジロが気兼ねなく、いつでも日本で暮らせる支度を整えたくなったからだ。 
 
マレーシアでも日本でも、心が豊かであれば住む場所なんてどこでもいい。 
 
そして、タロジロの心を豊かにするには、お父ちゃんとの向き合いが大切だと私の心が訴える。 
 
 
 
夫婦の距離を置いた3ヶ月間、私は自問自答を繰り返し、これでもかと自分を見つめ続けた。
 
そして、お父ちゃんも自分の心と向かい合っていると信じた。 
 
 
 
私は帰国をお父ちゃんに伝え、タロジロをお父ちゃんに2~3日間預ける約束を交わし、あらゆる選択肢を胸に秘めた。
 
 
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思いがけず早まった帰国に、タロウはよろこび、ジロウは戸惑う。  
 
ジロウは会う人会う人に「ビー ビャッキュ シューン !」と可愛らしく繰り返し、タロウはモジモジして「See you」を伝えていく。 
 
 
 
2017年12月6日。
 
関空の小さな到着出口をくぐると、待っていたお父ちゃんが歩み寄ってくる。 
 
タロジロと再会したお父ちゃんは、
笑顔を見せず、
よろこびの言葉を発っさず、
タロジロを抱きしめなかった。 
 
一言二言タロジロに声をかけ、ジロウの手を握りしめて駐車場へとせかせか歩く。 
 
 
 
 
到着時間が遅かったので、私とタロジロは最寄りのホテルに宿泊予定。 
 
タロジロをお父ちゃんに預けるのは翌7日だったから、当初、空港へのお迎えはいらないと伝えた私。 
 
でも、お父ちゃんはホテルの前で待っているときかない。 
 
タロジロのいとこに会ってから、タロジロを預けたいとの申し出も却下されていた。 
 
 
 
それほどまでにタロジロに会いたいのだと、お父ちゃんの気持ちを私は素直に汲んだ。 
 
 
 
 
久しぶりの湯船をタロジロと楽しんで、私はホテルのベッドに潜り込む。 
 
手を伸ばせばすぐ触れられるタロジロを、これでもかと抱きしめながら眠ればよかったな。
 

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2017年12月7日。 
 
チェックアウトにフロントへ降りると、お父ちゃんが待ち構えていた。 
 
昨日より様子がさらに妙だ。 
一抹の不安を感じる私。 
 
でも、タロジロはもちろん、お父ちゃんも今日の日を楽しみにしているはずだ。 
 
9日に自宅で親が入れ替わる予定だったから、大きなスーツケースを、お父ちゃんに預けようとするも何度も断られる。 
 
半ば強引に荷物を預けた私は、タロジロと別れて電車に乗った。 
 
 
翌8日、お父ちゃんからLINEがくる。 
 
 
 
 
 
 
私は半狂乱に陥った。
 
 
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翌9日、一睡もできないまま、日本を発つ前に相談していた市役所と警察に助けを求めた。 
 
市役所の担当責任者は責任者が不在と言い、顔見知りの警察官は記録がないと話す。 
 
そしてタロジロが預けられていたお父ちゃんの実家へ行くと、私は通報され警察がかけつけた。 
 
 
一体何が起きているんだ??
 
 
食事も睡眠もとらぬまま数日後の週明けになる。
私は「子の連れ去り」案件に精通した弁護士を探した。
 
そして裁判所での話し合いが始まる。 
 
 
逃げる時は誰一人非難の声をあげなかったのに、家族も友人も知人もみんな揃って、タロジロの手を離した私を咎めている錯覚に陥った。 
 
起きてしまった過去をどう変えろというんだ。 
 
そして弁護士と裁判所はおかしなことを当然のように言い放つ。 
 
 
 
 
今これからタロジロのために何をすればいいのか、狂ったように必死になる私は完全に孤立する。
 
 
誰もがタロジロの幸せを無視して、大人の都合ばかりを正義として突き付けてきた。
 
 
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ほどなくして私は日本のシステムエラーを理解する。 
 
社会に絶望した。
 
異国にてタロジロと何度も恋しんだ美しい日本は、とてつもなく醜い国だった。 
 
 
 
 
そして、改めて私の醜い心にも気づく。 
 
 
 
愛する家族が突然姿を消した3ヶ月間、お父ちゃんはきっと絶望したはずだ。 
 
自分を見つめ直す余裕すらないほどに、私はお父ちゃんを傷つけたのだろう。 
 
いつまでたっても私は自分本位でしか物事を見れていない。
 
 
 
やっぱり、神様が私に罰を与えたんだ。 
 
 
タロジロの喪失で私の魂はヒキサカレ、
日本社会の常識に吐き気をモヨオシタ。 
 
 
 
命を絶とうと頭によぎりだしたころ、私は西野亮廣氏の文章にふれ、導かれるようにオンラインサロンに入会する。 
 
「西野さんの世界を」「プペルの世界を」共感できる人々であれば、社会にかき消されたこの声に耳を傾けてもらえるかもしれない。 
 
 

 
 
タロジロを助けられる。 
 
 
 
 
 
そう思った。 
 
 
 
私は自分を信じる勇気を胸に生きることにした。
 
 
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2021年1月現在。 
 
自分を信じたらいつのまにか仲間ができた。 
嘘みたいに優しい世界で大切な人が増えていく。
 
 
 
タロジロと暮らせなくなって3年以上が経つ。
 
4歳ジロウは8歳になり、別れた時期のタロウより大きくなった。 
 
ジロウ誕生から抱っこした記憶のないタロウ。 
 
8歳~12歳の3年間はたびたび抱っこにおんぶして、会うときはいつもハグとキスをする。
 
 
只今、12歳タロウ32kg、8歳ジロウ31kg。
いつまで抱っこできるかな。
それよりもキスか!?
 

 
 
私は今なかなか幸せだ。
 
 
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2021年1月20日。
 
「何年かかってもいいからお母ちゃんが親権もってほしい」 
 
温厚なタロウが強い口調でお母ちゃんの言葉をかき消した。 
 
 
 
お母ちゃんが欲しいのはタロジロの自由だ。
タロジロを苦しめる「親権」ではない。 
 
 
 
でも親権がないとお母ちゃんはタロジロを自由にできない。
 
でも親権を争うとお父ちゃんの心をどんどん歪めてしまう。 
 
そして主たる監護者の心の歪みは子どもたちの自由を奪う。 
  
なんのために親権はあるんだろう。
 
  
 
タロジロは国によって、愛する父親から母親の愛を搾取され続けている。  
 
 
 
そして日本人の多くがこの愛の搾取を「善」と思い込み、個人の資質と勘違いし、今日も400人の子どもたちが親と生き別れになっている。 
 
明日も400人の子どもたちが親と生き別れになり、明後日も400人の子どもたちが親の愛を搾取されていく。 
 
 
 
社会制度は私たちの価値観を創る。 
 
 
 
明治時代とたいして変わらない120年前の民法の下、当たり前を疑わずに生きるなんて死んでいるようなものだ。
 
 
 
両親がいるから子どもはこの世に生をうける。 

親子は何が起ころうとも親子に変わりなく、婚姻状態などただのおまけである。 
 
日本の単独親権制度は、男女格差、貧困、虐待、DVなどにも深く関係する。 
 
時代錯誤のシステムに、数えきれない人々が心を痛め、ときに命を絶っている。
  
 
 
家族のカタチはもっともっと柔軟でいい。 
 
目の前の人を幸せにできれば、みんなで幸せになれるんだ。 

子どもたちが笑顔なら、それだけで世界は平和なんだから。
 
 
 
タロジロと美しい日本を恋しんだ、数々の瞬間は嘘ではない。 
 
 
 
2021年2月、お母ちゃんは親権を手放す。 
でもタロジロはきっと大丈夫。 
 
 
私はタロジロに優しい世界を残すんだ!!
 
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ーー第1章おしまいー 
⑩絶望と信じる勇気Facebook編(2020.1.22記)
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Posted by つむぎ まどか on Thursday, January 14, 2021


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