⑨新天地の光と影【タロジロと私。ときどきお父ちゃん】
愛息子タロジロへのラブレターです。
困難な時期こそ柔軟な思慮とともに、歩みを止めないでいてほしいな。
子どもに会えない親や親に会えない子どもは、愛していると伝え続けてほしい。
苦しくても自分を信じて、信じて、また親子で抱きしめ合うんだ!
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12歳タロウはお気に入りの輝く地球儀をクルクル回しながら世界旅行。
ちょっとそこまでと勘違いして、アチコチ旅したお母ちゃんとタロジロ。
なかでもマレーシアは、三人にとって思い出深い異国の地。
親子の時間が無限だと勘違いしていたお母ちゃんは、有限をかみしめて3年以上が経つ。
行き止まりのない丸い地球には、きっと無数の価値観が転がっているはずだ。
お父ちゃんから逃げたお母ちゃんは、タロジロとどんな景色を眺めようとしたのだろう。
2021年の「今」を生きている私は、タロジロとの逃避行に悔いはない。
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2017年初秋の日本を離れ、私はタロジロと真夜中のマレーシアに降り立った。
空調により夏を感じない空港で、タロジロのお腹が可愛らしく鳴る。
スーツケースを乗せたカートにちょこんと座るタロジロ。
最寄りのファミマで買ったパンとリンゴジュースをモグモグする姿はただただ愛らしい。
お腹が満たされたタロジロと充電切れ間近の私は、新しいおうち目指してタクシーに乗り込む。
空港から少し離れた幹線道路までくると、月明りに揺らめく異国の景色がどこまでも広がる。
移りゆく車窓の風景はなんだか物悲しくて、大興奮するタロジロをよそに、私は夢と現実をサマヨッタ。
ココにお父ちゃんはもういないんだ。
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マレーシアは主にマレー系と中華系とインド系の民族で構成されている国だ。黒人さんや白人さんも多い。
まさにダイバーシティで、あらゆる文化がごちゃ混ぜになっている。
タロジロの興味は地球儀よりも日々グルグル。
私は通訳と質問攻めに追われまくる。
慣れない生活にテンテコマイの私は、3年ほど続いたお父ちゃんへの葛藤を、いつの間にか忘れていた。
そして、過ぎ去った時間を悔やんだ。
私は自ら変化させない日常に自ら溺れていたんだ。
とにかく逃げたくてたどり着いた新天地。
お父ちゃんから離れてようやく、私は自身の醜い価値観に気付く。
ただならぬ恐怖に押しつぶされそうになる私は、新天地でめくるめく成長を遂げるタロジロだけが救いだった。
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見知らぬ地でタロジロを守るためには友人知人が欠かせない。
私はナリフリ構わず全力で友だち作りに励んだ。
途上国独特の活気がみなぎっているマレーシアの人々は、多様の許容(無関心?)からくるのか、とてもおおらかな国民性。
適した住処と学校を探すため、3回引越ししたけれど、どこへ行ってもタロジロは可愛がってもらえた。
新天地にて、
私は自分と向き合い、
8歳タロウは戸惑い、
4歳ジロウは有頂天。
三者三様に異国を楽しみ、トキオリ日本を恋しんだ。
そして、
自身の心を俯瞰した私は、腰を据えてお父ちゃんを思い出す。
家を出てからの約2ヵ月間、タロジロが一切お父ちゃんの話を口にしなかったからだ。
親子して言い出せなかった話題を、キャッキャと実験に勤しむタロジロに私はふる。
「お父ちゃん元気かな?」
タロジロは瞬時に固まった。
タロウはちらりと私に目配せし、赤い配線の不具合を調整し直す。
ジロウはジャム瓶のフィラメントを見つめたまま「知らん~」と答える。
薄々感じとっていた幼い二人の気遣いに、私はずっと向き合えずにいた。
なんてことをしているのだろう。
私はタロジロから父親を消そうとしている。
眠りについたタロジロの顔を見つめ、日焼けした小さな頬とおでこに触れると、涙がポロポロ溢れだしてくる。
どこへいっても泣くときは結局一人だった。
心の醜い私に神様はきっと罰を与えたんだ。
そしてこのあと、人生最大の試練が私を持ち受ける。
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2019年冬、マレーシアの友人が北海道へ来日。
結果、タロジロは会えなかった。
友人の経緯を説明されたタロジロは、「会いたい!」とお母ちゃんに北海道行きを懇願。
交通手段についてタロジロは盛り上がる。
すると、10歳タロウが慌てて大きな声をだす。
「パスポートの期限切れてない?」
クスクス笑うお母ちゃんの膝を、シレっと陣取る7歳ジロウが不思議そうに質問する。
「北海道って外国なん?」
頬を赤らめたタロウとお母ちゃんとジロウは、目を合わせて大爆笑!
3年以上続く窮屈な思い出は、パスポートの有効期限と一緒に切り替えてしまえばいい。
近い将来、タロジロは間違いなく自由に羽ばたけるんだ。
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ーー最終話につづくー
⑨新天地の光と影・Facebook編(2020.01.19記)
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⑧≪≪①≫≫最終話
▼映画「#えんとつ町のプペル」で信じる勇気を!
▼「子育て改革のための共同親権プロジェクト」で【親権】の民法改正・賛同活動中
▼映画「えんとつ町のプペル」を子どもたちに届けるプロジェクト
撮影支援:前川 智洋「Soraカラ|Photo Po」
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