月越 瑠璃

医療職ママ、商業連載中(ネオページ)🖋️ ■目標は単著出版! ■公募歴:文藝コラボ賞 …

月越 瑠璃

医療職ママ、商業連載中(ネオページ)🖋️ ■目標は単著出版! ■公募歴:文藝コラボ賞 一次選考通過、健康系エッセイコンテスト 受賞など■原稿依頼はHP「CONTACT」より ■文学フリマ東京39に出店します🗼 HP: https://www.tsukikoshiruri.com/

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  • 「あなたの話し相手になります。100円/分」

    note創作大賞 お仕事小説部門へ応募した「あなたの話し相手になります。100円/分(仮)」を全話まとめています。

  • 「すべて、狂った水槽」

    note創作大賞2024 漫画原作部門へ応募した「すべて、狂った水槽」を全話まとめています。

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『すべて、狂った水槽』第一話

【あらすじ】 主人公はクラスメイトの腕に痣を見つける。加虐性に悩むクラスメイト自身が付けているものだと悟ると、自分が身代わりになることを申し出る。主人公の提案を跳ね除けるクラスメイトだったが、煽られて一度だけ手を出し、通りがかりの先生にいじめを疑われる。クラスメイトの疑いを晴らすため、主人公は黒ずんだ肌を見せ、これまで義父から受けてきた虐待を打ち明ける。被虐待児だった主人公に慄くクラスメイトだったが、高校卒業後も家を訪れる不思議な関係性が続く。混泳させられないオス同士のベタを

    • 「すべて、狂った水槽」について 素敵なご感想をいただきました! ありがとうございました🌱 https://note.com/rin_14225/n/n619196d0e20c

      • HP更新|商業デビューのお知らせとプロフィールの更新

        SNSでも書いたのですが、改めてのご報告とHPの情報を更新したお知らせです。 最終的に書籍化を目指しているため、公募は引き続きゆるやかに続けていきます。 どうぞよろしくお願いいたします! ▼お知らせ(商業連載の件) ▼プロフィール(更新)

        • お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第九話(最終話)

          ――予約が入りました。  スマホを確認すると、バンビちゃんからの予約だった。  バンビちゃんは被服系の専門学校生だった。あれから何度か予約を入れてくれる。わたしの対物性愛への理解は一歩進んだような、一歩も進んでいないような、何とも形容しがたい進捗だ。  それでも彼女は、わたしに”彼との恋バナ”を聞かせにやってくる。 「ごめんね、いつも」  彼女との雑談の最中、わたしは度々謝ってしまう。 「また謝った! ヒロセさんって不思議ちゃん」  反り返った形のいいまつ毛が、何度も揺れ

        • 固定された記事

        『すべて、狂った水槽』第一話

        • 「すべて、狂った水槽」について 素敵なご感想をいただきました! ありがとうございました🌱 https://note.com/rin_14225/n/n619196d0e20c

        • HP更新|商業デビューのお知らせとプロフィールの更新

        • お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第九話(最終話)

        マガジン

        • 「あなたの話し相手になります。100円/分」
          9本
        • 「すべて、狂った水槽」
          3本

        記事

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第八話

           子どもが幼稚園に行っている間、わたしは平均2件/日の雑談を受ける。  まったく予約が入らないときもあれば、急遽続くときもあった。今のところ、固定客が3割、飛び込みの客が7割といったところだ。  こんな平日の真昼間に時間がある人には、ろくでもないやつもままいた。  ちょっとお酒が入っていることも珍しくない。頭が悪いから話が合わないなどと一方的に怒鳴られ切られることもあった。  また別の日は、紳士的だと思われた男性から「おっぱい見せてよ」と言われる始末。そして昨日の最後の予約

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第八話

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第七話

          「こんにちは!」  パソコンの画面には、ブルーの髪色のボブの女の子が映った。よく見ると瞳も淡いブルー系のカラコンをつけている。黒のオーバーサイズパーカーを着て、だほっとした洋服のシルエットから細い腕が覗いている。年齢は20前後に見えた。 「廣瀬と申します。13時までの30分コースのご予約、ありがとうございます。スケジュールの都合で、13時以降の延長ができかねるのですが、大丈夫でしょうか」 「りょーかいです。時間になりそうだったら言ってください!」  柔和な雰囲気とエネルギッシ

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第七話

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第六話

           次のお客さんは、もう何度か話をしているリピーターのおじさんだ。40後半で、派遣社員としてビルの警備員をしている。  そして、ガールズバー通いのアル中だ。 「こんにちは、信二さん」 「どうも」 「今日もご予約ありがとうございます」  彼との雑談はもう10回を越えた。サービスの説明はいらないし、呼び方も決めてある。  「信二」というのは彼の下の名前だった。きっとガールズバーの女の子にも、同じように呼ばせている。  そして彼は、わたしを「廣瀬ちゃん」と呼んだ。 「この前はごめ

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第六話

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第五話

          「やらされてきただけなんです。ちょっと耳が良かったからって、親が調子に乗って」  伏し目がちに、黒く、水分をふんだんに含んだ毛先を触る。彼女の感情は十分動いていた。しかし、やはり声を荒げることはない。これが本人のキャラクターなのか、はたまた無気力による鈍りなのかは分からなかった。ただ、そこには確実に葛藤するものが見え隠れしている。  もどかしさを感じながら、わたしはどう声をかけていいか判然とせず、「期待してたのかなぁ」などと腑抜けた相槌を打つ。それに対して彼女は、「自分たちが

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第五話

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第四話

          「どうして行かなくなったの」 「理由、聞きたい?」 「うん、でも嫌なら言わなくていいよ」  慎重に会話を進める。彼女は泣くでも怒るでもなかった。頬はぴくりとも動かないまま、平気な顔で話を続ける。 「特にないです」  え? と、わたしは思わず声を漏らす。 「理由はないです。っていうか、分かんない」  彼女は念押しするように、もう一度言った。わたしは「そうなんだ」とだけ言って、まず一度話を受け取る。 「はい。勉強もついていけるし、友達も幼稚園から一緒の子が多いので、困ってない。

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第四話

          漫画原作部門用にすでに投稿していた「すべて、狂った水槽」ですが、規定が3話まで提出マストだったのを見落としており、区切りを変えて再度投稿しています💡(内容に変更はありません。)

          漫画原作部門用にすでに投稿していた「すべて、狂った水槽」ですが、規定が3話まで提出マストだったのを見落としており、区切りを変えて再度投稿しています💡(内容に変更はありません。)

          『すべて、狂った水槽』第三話(最終話)

           僕は一時的に保護されたのち、高校を卒業するまでの間、児童養護施設が家となった。だがそれもすぐに終わった。児童養護施設は18歳までと決まっていたのだ。  高校卒業とともに自立を求められた僕は、大学受験を諦めることにした。別に特別行きたかったわけではない。持っているものが少ないので、学歴をつけて安心したかっただけだ。  不安をかき消すように、本を片っ端から読み漁るようになった。受験勉強をやめて空いた時間は、すべて図書館で過ごした。  両親とはもう会っていない。  義父は捕ま

          『すべて、狂った水槽』第三話(最終話)

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第三話

           マイページを開くと、今日は2件の予約が入っていた。9時半から10時の30分枠と、11時から12時の1時間枠がひとつずつ埋まっている。  予約時間の5分前になると、わたしはパソコンの画面の前でヘッドセットを装着し、そしてサービス購入者のみが入ることができるビデオチャットの待機画面で予約の時間を待った。手元には、メモを取るためにノートを広げる。 「あ、こんにちは」  切り替わった画面の向こうには、小さな女の子が映っていた。重たい一重の奥に、黒々とした瞳がある。 「こんにちは

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第三話

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第二話

           予約が入らないときは、家事をしている。もともとそのための時間だった。掃除をしたいところは尽きないし、料理もバランスを考えると必然的に時間がかかる。オンライン上で雑談サービスを始めたのは、暇を持て余したからではなかった。  家事の分類は、掃除や洗濯のように名前が付いたものばかりではないし、幼稚園の送迎前後であるママ友の集まりにも、それなりに気を遣う。しかし時折、「それらは、”適当”で済ませることができたはずのものだったのではないか」という考えが過る。  もちろん今だって、誰

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第二話

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第一話

          【あらすじ】  主人公の廣瀬は、子どもが幼稚園に行っている日中の数時間だけオンライン上で「話し相手」のサービスを提供している。以前はフルタイムの事務職として働いていたが、出産後に育児と仕事のバランスを取ることができず退職した。それ以降、あてのない後ろ暗さを抱えている。  オンライン上での雑談サービスには、学校に行く意味を見出せないでいる不登校児、ガールズバー通いがやめられないアルコール中毒者、万年筆が恋人の対物性愛者など多様な人々から予約が入る。資格も知識もないことに怯えな

          お仕事小説部門|「あなたの話し相手になります。100円/分」第一話

          『すべて、狂った水槽』第二話

           誰にも話すつもりはなかった。哀れみの目を向けられたいわけでも、話を聞かされた相手を困らせたいわけでもなかったからだ。むしろ自分が欠けた人間であると明らかにするような、恥の告白に似ていた。  物心ついたときには、すでに父親が変わっていた。義父になったひとは導火線の短い男だったので、失敗を繰り返す子どもの僕を嫌った。温厚だと思っていた母親を事なかれ主義の愚かな女だと知ったのは、少し大きくなってからだ。  おかげで幼少期からずっと痣を眺めて過ごした。そうして皮膚の下で血管が破れ

          『すべて、狂った水槽』第二話

          自己紹介・ポートフォリオ

          筆名月越 瑠璃/ Tsukikoshi Ruri ◎ネオページさまにて商業連載が始まりました🎈 執筆歴【小説】 ・モノコン2023「文藝」×monogatary.comコラボ賞(応募総数879作)にて、短編小説が一次選考通過59作に選出。(旧名義) ・「言葉の舟」刊行記念140字小説コンテスト(応募総数460編)にて、予選通過作66編に選出。 ・ウミネコ文庫『ウミネコ童話集(一)』に掌編小説を寄稿。(旧名義)  *ウミネコ制作委員会さまのイベントブースまたは通販(B

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