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政治講座ⅴ1192「世界の工場の中国の衰退」

   鄧小平の推し進めた改革開放路線の完全なる終焉である。旧ソ連の崩壊を経済面から考察すると、社会主義(共産主義)は労働意欲の無い働かない労働者を増やしただけで国民の生活は少しも改善しない社会構造にしたことである。台湾侵攻を武力侵攻すると公言している以上中国から逃げ出さないと被害は甚大となる。旧ソ連の末路を見たらわかる通り、中国には勝ち目がないのである。中国はビジネスの競争相手と言葉を和らげてデカップリングの言葉をデリスキングと言い換えている。しかし、米国は真綿で首を絞めるように中国の息の根を止めに掛かている。今回はそのような報道記事を紹介しよう。日米開戦に追い込んだ米国の外交のえぐくて、えげつない外交を俯瞰すると、今度は中国へと矛先を向けたのかと感じざるを得ない。中国へはその点で同情する。

     皇紀2683年7月2日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

なぜ世界の製造業の多くがまだ中国を拠点にしているのか―豪メディア

Record China によるストーリー • 

16日、環球網は「なぜ世界ではまだ多くの製造業が中国にとどまっているのか」と題した豪メディアの文章を紹介する記事を掲載した。© Record China

中国メディアの環球網は「なぜ世界ではまだ多くの製造業が中国にとどまっているのか」と題した、豪メディア「ザ・カンバセーション」の14日付文章を紹介した。

文章は、中国経済の目覚ましい台頭が地政学的に多くの課題を生み出し、米国を中国との貿易戦争に駆り立ており、これまで中国に生産拠点を築いてきた多国籍企業は、ベトナム、バングラデシュ、インドなど、アジアの低コスト生産地に製造拠点を移す必要に迫られていると紹介。また、新型コロナによる世界的なサプライチェーンの混乱を受け、製造業の本国回帰、あるいは本国に近い拠点への移転を呼びかける声も出ているとした。

一方で、多くの企業はいまだに中国からの生産移管を進めていないと指摘。その原因について「中国が製造業を掌握していることが実際に証明されているからだ」とし、 他の新興国と比べて中国の労働力は割高であるものの、その生産性は労働コストのデメリットを打ち消して余りあるほど高いと説明した。

その上で、あるグローバル・ソーシング企業の幹部がパーカーの生産を例にとって中国の製造業がいかに発達、充実しているかを解説し、パーカー生産において中国が紡績から裁断縫製、トリミング、染料、ジッパー、ひもに至るまでサプライチェーン全体、工程の各セクションを一手に掌握する戦略を取っていると説明したことを伝えた。

さらに、中国は米国産を含む世界のウールや綿花のほとんどを輸入、加工して生地を作り、さらに染色や縫製などを施した上で、米国を含む世界各地に輸出しており、繊維生産のシステム全体が中国にあるとし、これは繊維産業だけでなく、他のほとんどすべての製品についても当てはまると指摘した。

文章は、米国やカナダの小売業者が繊維製品の生産を中国から移そうと思えば、生態環境全体を移さざるを得なくなるため、中国から撤退するコストは非常に高くなると紹介。製造業の生態環境が中国に残り続ける限り、世界の製造業に占める中国のシェアも大きいままだろうとの見解を示している。(翻訳・編集/川尻)

中国経済、コロナ禍からの「回復ペース」が鈍化 GDP成長率の予想値を金融機関が下方修正

財新 Biz&Tech によるストーリー • 昨日 17:00

中国の2024年のGDP成長率は4%を割り込むという厳しい見方も出ている(写真はイメージ)© 東洋経済オンライン

中国経済の回復ペースが鈍り、4月以前までのエコノミストの予想を裏切る状況になっている。そんななか、一部の金融機関は中国のGDP(国内総生産)成長率の予想値について下方修正を始めた。

日本の金融大手の野村グループは6月16日、中国のGDP成長率の予想値を2023年については5.5%から5.1%に、2024年は4.2%から3.9%にそれぞれ引き下げた。

「ゼロコロナ政策の緩和により対面式のサービスの需要が急回復したことや、不動産市況の好転への期待感などから、市場には一時的に楽観的見方が広まった。しかし4月以降は景気回復の勢いが鈍化した一方、(中国政府の)政策的なテコ入れの動きは目立たなかった。そのため市場の見方は弱気に転じ、人民元の(対ドルレートの)下落、金利の低下、株価の下落、物価の下落など(の連鎖)を招いている」

野村グループの中国担当チーフエコノミストを務める陸挺氏は、現状をそう分析し、次のように付け加えた。

「景気回復の前途は厳しさを増している。不動産市場の混迷の度合いや(ロシアのウクライナ侵攻や米中対立のエスカレートなどの)地政学的緊張による負の影響について、市場は過小評価していた可能性がある」

「特効薬はない」との見方も

スイス金融大手のUBSも同じく6月16日、2023年のGDP成長率の予想値を5.7%から5.2%に下方修正した。

「4〜6月期以降の不動産市況の失速、個人消費回復の勢い低下、輸出の落ち込み、工業生産額の伸び悩みなどを考慮すると、中国の経済成長は4〜6月期は大幅に減速しそうだ」。UBSの中国担当チーフエコノミストを務める王涛氏は、そう予想する。

中国政府は5月の主要経済指標を(6月中旬に)発表した前後から、景気回復を持続させるための対策を次々に打ち始めた。例えば6月16日に開催された国務院常務会議では、マクロ経済政策のコントロール強化、有効需要拡大の後押し、実体経済の強化と質の向上、重点領域におけるリスクの予防と低減という4項目について、一連の政策措置が提起された。

本記事は「財新」の提供記事です© 東洋経済オンライン

だが前出の陸氏は、これらの対策の効果について慎重な見方をとっており、次のように警鐘を鳴らした。

「政府の対策が万能の特効薬であるかのような、過剰な期待を持つべきではない。市場参加者は、中国のGDP成長率がこれから数四半期にわたって4.0%、あるいはそれ以下に減速することを覚悟すべきだ」(財新記者:范浅蝉)※原文の配信は6月19日

中国人民銀、元安進行下で外銀にドル預金金利調査 引き下げ指導も

Reuters によるストーリー • 

中国人民銀、元安進行下で外銀にドル預金金利調査 引き下げ指導も© Thomson Reuters

[上海/北京 30日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)がこの1週間、一部外国銀行にドル預金金利について調査したことが関係者の話で分かった。ある商業銀行は金利の引き下げを指導されたという。景気減速、ドルとの金利差拡大で人民元は下落基調にある。

元は対ドルで8カ月ぶり安値付近に下落。年初からの下落率は5%近くになっている。最近の元安進行で当局は為替取引に厳しい目を向けている。

当局の動きを受け、企業は輸出企業を中心により多くの外貨収入を元に交換する可能性がある。

公式データによると、中国国内の外貨預金は5月末時点で8518億ドル。

5月中旬、人民銀行は為替レートの大幅な変動を断固として抑制し、ドル預金業務の自律的管理強化を検討すると表明した。

OCBC銀行の為替ストラテジスト、クリストファー・ウォン氏は「元安にどんな対応をとっても下落ペースを弱めるだけで、基調が転換することはないだろう」と述べた。

一部市場ウォッチャーは、企業が当局の意図通りに動く可能性は低いとみている。ドル預金金利が下がれば、保有資本を国外に移すことも考えられるという。

ある外銀トレーダーは、オフショアドル預金の増加、ひいては中国の国際収支や元に下押し圧力が掛かる可能性があると指摘した。

“密告”を奨励、ターゲットは企業にも拡大か…中国の改正反スパイ法 きょう施行 日本企業が注意したいポイントとは

FNNプライムオンライン によるストーリー • 3 時間前


“密告”を奨励、ターゲットは企業にも拡大か…中国の改正反スパイ法 きょう施行 日本企業が注意したいポイントとは© FNNプライムオンライン

中国による反スパイ法の改正

西村康稔経産相が、5月26日に中国の王文濤商務相と会談し、日中の経済協力を進めるためにも、北京で3月に反スパイ法容疑で拘束された日本の製薬大手「アステラス製薬」の現地法人の幹部である日本人男性の早期解放を求めたという。
しかし、実際のところは未だ解放の目途は立っておらず、打ち手がない状況だ。
中国は2014年に「反スパイ法」を制定。これまでに17名の日本人がスパイ活動への関与を疑われ拘束された。そのうち1名が病死し、11人は刑期を終えるなどして帰国しているが、今回拘束された日本人男性を含め5人がいまだ拘束されている。
また、あまり報じられていないが、中国籍で元北海道教育大学の教授、袁克勤(えん・こくきん)氏も、2019年5月に一時帰国した中国でスパイ容疑のため拘束されて未だ解放されていない。
こうした状況下で、この反スパイ法が改正され、7月1日に施行された。
その改正反スパイ法のポイントと企業が注意すべきポイントとは。

反スパイ法改正のポイント

まず、改正反スパイ法は、その目的として総体的国家安全観を堅持することを掲げている。
総体的国家安全観とは、2014年4月15日、国家安全委員会が設立された際に習近平国家主席が提唱した国家安全保障の概念で、政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核等を掲げ、中でも“政治の安全”(=体制の安定)が最重要であることが示唆されている。
その改正反スパイ法について、以下注意すべきポイントを記載していく。(文量の関係上、全て記載はできない旨を断っておく)
1.定義の拡大(4条1項)
取り締まりの対象行為について、 「国家の安全に危害を及ぼす行為」等で、当局がみなす全ての行為とし、自らの行為か他人の行為か、またはその行為の支持・支援等であるか、中国に関するものか第三国に関するものかを問わない。
現行法にある“国家機密 “に加え、「そのほかの国家安全と利益に関係する文書、データ、資料、物品」を対象に含むと定義し、更に「重要な情報インフラの脆弱性に関する情報」もスパイ行為の対象であると規定している。
2.キャッチオール文言による恣意的運用の拡大可能性(4条1項)
「その他のスパイ活動」という広範な解釈を可能にする恣意的運用を可能にする文言がある。
3.反スパイ工作(中国による“対スパイ”活動)への協力義務化(8条)
反スパイ工作への支援・協力義務、秘密保持の義務化が明文化。更に、同義務には外国にいる中国国籍者や外国企業の中国現地法人も含まれると推察されるため、例えば日本にいる中国人留学生やビジネスマン、日本企業の中国現地法人もその対象となる可能性がある。
4.密告の奨励(9条)
密告に対する表彰、報酬が奨励されている。これにより、日本の中国現地法人の中国人従業員から当局に積極的な通報が行われる可能性も。
関連するビデオ: 中国で「改正反スパイ法」施行 取り締まり強化 (日テレNEWS)

日テレNEWS
中国で「改正反スパイ法」施行 取り締まり強化
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5.当局への強力な調査権限の付与(24条~44条)
スパイ摘発に関し、以下のような強力な調査権限等の付与。
調査権限例:取調べ、差し押さえ、財産情報紹介、資産凍結、施設等の徴用、封印・凍結~
例えば、誰かが密告すれば、濡れ衣であっても、封印、凍結等がなされてしまうことになりかねない。
よって、理論上は日本企業内に密告者を送り込み又は買収し、密告させる“攻撃”も可能である。
(同法原文、CISTEC、企業法務ナビから筆者が加筆修正したもの)
結論として、反スパイ法の危険性は以下の通りである。
1.法自体が漠然としており、予見可能性がない 2.スパイ行為の定義は拡大され、恣意的運用の余地も拡大(更に、キャッチオール文言が残存している) 3.法的根拠を持った当局による摘発行為の拡大 4.密告の奨励により、企業内に懸念すべき対象者が潜む可能性 5.反スパイ法のターゲットは人に加え、企業に拡大する可能性
今後、中国は改正反スパイ法にのっとり、日本人を不当に拘束し続けていくだろう。
また、中国当局はコンサル大手の凱盛融英信息科技(キャップビジョン)や米国調査会社ミンツ・グループ、米コンサル会社ベイン・アンド・カンパニーに対し、反スパイ法を根拠とした取り締まりを行っており、企業に対する同法の適用も拡大するおそれがある。
このような状況下で、企業がどう注意すれば良いのだろうか。

中国現地で注意すべきこととは

中国現地では以下のポイントに注意してほしい。
1.まず外務省の「中国安全対策基礎データ」を参照し、基本的な情報を押さえる
例:地図や文書を持たない、軍事施設の写真を撮らない(看板等はないので注意)、無許可の国土調査や統計調査を行わない等
2.中国にとって機微な話題は外出先で話さない
例:新型コロナウイルス、ウイグル、香港、臓器移植、台湾有事、北朝鮮関連等
3.日中友好コミュニティに深く関与する人物は要注意、慎重な行動を
これまでの日本人拘束の傾向から、上記人物が拘束されているため要注意である。
4.日本の行政・情報機関と接点がある人物は要注意、なるべく渡航しない
これまでの日本人拘束の傾向から、上記機関と接点があり、且つ日中コミュニティに深く関与する人物が拘束されているケースが多い。
例えば、情報機関との接点で言えば、日本人が情報機関と認識せずにオープンな場で公開情報のやりとりをしただけでも、摘発する中国側からすれば、「日本の情報機関と接点を持った人物が、日中コミュニティを通して中国政府系人物と接触する可能性」があると見えれば危険と感じ、摘発の対象となる可能性は格段に上がる。

企業が注意すべきこととは

日本企業は以下のポイントに注意してほしい。
1.中国駐在員、中国出張者の属性を把握し、リスクがあるか判断する(前記#3、#4) 2.リスクが高い人物の出張を控える 3.これまでの中国と同様の関係であるという前提を変える
反スパイ法も当然だが、現在の日中関係は従前の関係とは異なる。まず日本という“国”の視点に立って、中国との関係が従前と変わっているという認識を持つべきだ。
4.企業のリスクシナリオにこれまでにはなかった領域の中国事業リスクを組み込む
例:反スパイ法、諜報活動、合法的技術窃取、台湾有事、国防権限法、国家情報法など
今回の改正反スパイ法は従前の反スパイ法から危険性が増したのは事実である。
外資を呼び込みたい中国は、なぜ反スパイ法を改悪し、外資の中国離れを進めるのか。
本改正により、在中国の外資系企業で働く外国人の安全に影響が及ぶのは必至である。
【執筆:稲村悠・日本カウンターインテリジェンス協会代表理事】

米中対立は不可避、日本はデカップリングに備えよ

荒井寿光 知財評論家、元特許庁長官

2020年09月07日

1 米国の対中強硬路線は当分続く

(1)国防権限法がデカップリングの法的根拠

 2017年トランプ大統領が就任すると、選挙公約通りに貿易不均衡や知財窃盗などを理由に中国からの輸入の大部分に高率の制裁関税を課し、中国も報復関税を課し、「米中貿易戦争」が始まった。

 当時、米国では中国経済とのデカップリング(分離、引き離し)が検討されていると報道された。第2次大戦後の冷戦時代、米欧日を中心とする西側自由主義諸国とソ連を中心とする東側共産主義諸国は別々の経済ブロックを作り対立した。今回は米国が中国との経済関係を縮小して中国経済を封じ込めようとするものだ。

 米中経済の相互依存関係は深く、また両国経済を分離し、引き離すことは経済的に合理的でないため、デカップリングされることはないだろうと多くの人は見ていた。ところが予想に反し米国はデカップリングを着々と進め、日本も巻き込まれている。

 米国のデカップリング戦略には法律の裏付けがある。それは2018年8月に超党派議員の賛成で成立した「米国国防権限法」だ。

 同法は中国の軍備増強に対抗するため過去9年間で最大の国防予算を認めるだけでなく、中国に対するハイテク製品や技術の輸出を禁止すること、中国企業の米国企業の買収を制限すること、米国政府がファーウエイ、ZTEなど中国企業5社からの政府調達を禁止すること、サイバー防衛を強化することなどの法律を盛り込んだ総合的な「米中デカップリング法」だ。米国はこの法律に基づき次々とデカップリングのための具体策を打ち出している。

ホワイトハウスで行われた、中国との貿易合意署名式で演説するトランプ大統領=2020年1月15日、ワシントン

(2)米中対立はエスカレートしている

 当初、米中対立は経済分野で発生したが、2018年10月にはペンス副大統領が従来の米国の対中路線を転換する演説を行い、中国との冷戦を宣言し、世界をビックリさせた

 さらに2020年1月に発生した新型コロナウィルス問題に関し、中国が初期情報を隠したことが世界に大流行させた原因だとして、トランプ大統領は中国を強く非難し、米中対立はエスカレートしている。

 今や学術分野におけるビザ発給制限、外交分野における総領事館の閉鎖、防衛分野における軍事演習やミサイル発射実験など全面的な対立に拡大している。最近の中国共産党に対する激しい批判は1950年代の赤狩りに似てきているとの見方もある。

 米国の対中強硬姿勢は11月の大統領選挙の結果により変わることはないとの見方が多い。

(3)国務長官はクリーンネットワーク構想を同盟国に呼びかけ

 ポンペオ国務長官は今年7月中国共産党を激しく非難し、自由主義の同盟・有志国は結束して中国に立ち向かうことを呼びかけた。

 さらに8月には「クリーンネットワーク構想」を発表した。これは通信ネットワークにおけるデカップリング構想である。「クリーン」とは中国共産党の悪質な攻撃・侵入から米国の個人や企業の情報を守るため、(ダーティな)中国の製品、ソフト、サービスなどを使わないことを言い、通信ネットワークの通信キャリア、アプリストア、アプリ、クラウド、海底ケーブルのすべての分野から中国製品などを排除しようとするものだ。

 既にファーウエイの他、バイトダンスのTikTok、テンセントのWeChatなどのアプリ、アリババ、百度などのクラウドベースが使用禁止されている。同盟国の政府と企業にも協力を呼び掛けており、国務省のホームページには、クリーンな通信企業として日本のNTT、KDDI、ソフトバンク、楽天が紹介されている。

 米国のデカップリング戦略は全面的な米中対立の一環として位置付けられているので簡単には止まらないし、色々な分野に広がる可能性がある。

日中関係、「政治分離」から「経済分離」へ

中国経済新聞


2023年3月1日 16:30
アメリカに遅れること5年、ついに日本も追随し、中国への全面的な半導体の輸出規制に踏み切った。トランプ氏がホワイトハウスの主だった5年前、アメリカ政府は日本に対し「主な半導体製品の中国への輸出を禁止」するよう求めた。当時の安倍政権はこれに対し、ファーウェイの携帯電話やシャオミ、OPPOの携帯電話、センサーなど主な部品がいずれもソニーなど日本企業の供与であることを踏まえ、「引き延ばし」作戦をとった。なかでもファーウェイの機種「P30Pro」は、1,631件ある部品のうち日本製のものが53.2%にあたる869件である。
 安倍元首相は、経済産業省がアメリカとはぐらかし合いながら「ファーウェイの通信機器は買わないが日本製の部品の輸出は認める」という対策を講じた。中国'の需要があまりに魅力的であるゆえに企業の利益をできるだけ守るためであった。半導体製造設備の販売量について、中国は2020年に初めてトップに立った。
 しかし岸田首相の就任後は、軍事面で「日米三共同」(兵器や装備の共同使用、軍事基地の共同利用、指揮・情報システムの共同化)を実現し、「日米連合軍」を築き始めたほか、経済面でもこれまでの「同床異夢」という策を改め、「日米経済安保同盟」によって中国の台頭を締め付けるようになった。
 岸田首相は1月13日にホワイトハウスを訪れ、「中国への半導体輸出禁止に向けてオランダも含めた3カ国の協力体制を形成」というバイデン大統領の要望に全面的に同意した。
 岸田首相の帰国後、これら3カ国の政府がワシントンで個別および三者での協議を行い、1月27日に中国への半導体輸出の「禁止令」について合意に達した。この主な内容は以下の3点である。
 1 回路線の幅が14nm以下の先進的半導体を規制の対象とする。
 2 中国など海外の工場で製造される製品も含め、アメリカの技術を使った製品の中国への輸出を禁止する。
 3 先進的半導体部品の製造が可能である設備の中国への輸出を禁止する。
 今回の中国締め付けにあたり、アメリカが日本とオランダを引き入れた理由は何か。日本はチップの開発こそ遅れを取っているが、材料や製造設備は世界のトップを走っている。なかでも東京エレクトロンは、半導体やFPD製造設備について、オランダのASMLと並ぶ世界のトップメーカーである。アメリカの中国締め付けはすでに材料や部品から製造設備にまでおよび、全面的な作戦を展開するようになっている。
 日本政府の2月4日の情報では、岸田首相が経済産業大臣に対して早期に「外為法」(外国為替および外国貿易法)の修正案を提出するよう指示した。近々国会での審議を経て、4月ごろにはアメリカやオランダと歩調を合わせて中国への半導体輸出規制に踏み切る方向である。
 この規制が実施されて矢面に立たされるのは、日本企業自身である。経済産業省の調査によると、世界の半導体製造設備の売上高上位15社のうち7社が以下の日本企業である。
 1 東京エレクトロン
 2 アドバンテスト
 3 SCREENホールディングス
 4 KOKUSAI ELECTRIC
 5 日立ハイテク
 6 キヤノン
 7 ディスコ
 日本半導体製造装置協会のまとめによると、半導体製造設備の輸出額は、2020年は計2兆3,835億円(約1,200億元)で、このうち中国向けが26%の6,306億円(約363億元)となっている。また2021年は計3兆4,430億円となり、中国向けは57%も増えて9,924億円(約514億元)に達し、全体割合も29%にのぼっている。すなわち、半導体設備各社は売上高の3分の1を中国に頼っているのである。
 日本政府がアメリカとの合意に沿って輸出規制に踏み切れば、以上の7社も含めた各設備メーカーが売上の30%近くを失うことになり、株価の値下がりも避けられなくなる。きらに半導体の材料や部品の輸出も止まれば、各社とも中国市場での利益が著しく低下する。岸田首相は、一年以上前の就任時の施政方針演説で、「新しい資本主義」として、企業を豊かにし国民を豊かにして好循環を生み出す経済成長の仕組み「キシダノミクス」を打ち出した。しかし岸田首相はこれまで、安全保障面で完全にアメリカに丸め込まれたほか、国内の実績も惨憺たるもので、「新しい資本主義」はすでに絵に描いた餅となり、内閣支持率も当初の54%から26%に下落、退任を求める声が34%に達している。
 中国に進出している企業のなかで、アメリカの制裁を避けようと産業チェーンの改革に乗り出す動きが出ている。ソニーはこのほど、日本や欧米向けのデジタルカメラの生産ラインを中国の工場からタイの工場にシフトし、中国では現地販売品のみを製造すると発表した。
 ソニーのデジタルカメラは海外では中国とタイの2カ所に工場をもつ。2022年の売上台数はキヤノンに次ぐ世界2位の211万台であり、このうち中国で製造されたものが約160万台で、現地販売分は15万台、それ以外は日本や欧米に出荷されている。日本経済新聞が主な企業100社に対して実施した最新のアンケートでは、中国からの部品購入量を減らすと答えた割合が53%に達しており、5年後には中国からの購入割合が28%に低下するという。
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中国が日本を侵略する可能性は~日中ビジネス交渉人徐静波の日本企業へのメッセージ
 2023年に入り、中日両国は「政治分離」から「経済分離」へと向かい始めている。「日中友好条約」の締結から今年で45年となるが、こうした「分離」の流れを速やかに止めなければ、中日両国は全面的な対立の時期を迎え、「日中友好条約」の期待する「両国は子々孫々にわたり友好を続ける」との願いも泡と消える。岸田政権は、日米同盟を堅持する一方で、中国は隣国であり日本もアジアの一員である、ということを胸に刻むべきだ。対立する米中両国を前に、片方の味方をせず、日米そして日中関係の平衡感や距離感を把握し、日本の利益を最大限に確保して、日中関係をあわや開戦などという状態に持ち込まない。これこそ政治家の最大の英知である。

参考文献・参考資料

なぜ世界の製造業の多くがまだ中国を拠点にしているのか―豪メディア (msn.com)

中国経済、コロナ禍からの「回復ペース」が鈍化 GDP成長率の予想値を金融機関が下方修正 (msn.com)

“密告”を奨励、ターゲットは企業にも拡大か…中国の改正反スパイ法 きょう施行 日本企業が注意したいポイントとは (msn.com)

中国人民銀、元安進行下で外銀にドル預金金利調査 引き下げ指導も (msn.com)

米中対立は不可避、日本はデカップリングに備えよ - 荒井寿光|論座 - 朝日新聞社の言論サイト (asahi.com)

日中関係、「政治分離」から「経済分離」へ|NetIB-News (data-max.co.jp)

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