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政治講座ⅴ1451「中国から人材・資本・預金・投資流出。沈没船から脱出。因果応報」

 中国を発展させた理由・原動力は鄧小平がすすめた改革開放路線と日本の身を切る経済援助により大幅な経済成長を成し遂げた。裏を返せば日本を含む海外の投資資金の資金援助と技術協力によって世界の工場として輸出による貿易黒字を成し遂げた。中国からこれらの海外投資をはぎとって、技術供与をも止めたら、良質の商品の生産が難しくなるのである。
中国経済は覆ている衣が剥がれて丸裸になるに等しいのである。中国共産党における賄賂・横領・キックバックなどの不正取引が経済発展に伴い、横行していることは周知のことである。経済発展に伴う債務額の増加は、水にぬれた衣を着ているようなものである。風邪をひくか風邪をすでに引いているのが中国経済であろう。吾輩は中国の横領・賄賂・キックバックなどに対する綱紀粛正に注力する習近平氏は評価するが、残念ながらその綱紀粛正が極度の経済の委縮現象を引き起こし、中国から企業の撤退や海外投資を躊躇させて、反スパイ法や戦狼外交で、やはり企業活動を委縮する効果を生み出している。そのような「角を矯めて牛を殺す」の故事・ことわざのようなことが中国経済を委縮させているのである。
今回はそのような報道記事を紹介する。
蛇足:銀行の破綻の原因となった取り付け騒ぎで記憶に新しいのは預金の流出の為に含み損失の米国債を売却し、3月に破綻に追い込まれた米国のシリコンバレー銀行であろう。
米テクノロジー企業への融資で知られ、米西海岸シリコンバレーのエコシステムの中核を担ってきたシリコンバレーバンク(SVB)が2023年3月10日、経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入った。中国もこのような混乱時期に突入してきたのであろうか。

     皇紀2683年10月25日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

はじめに

日本の歴史に少し触れる。昭和の金融恐慌の発端から解説する。

第二次世界大戦後の台湾にある金融機関


台湾銀行発行の台湾ドル紙幣


鈴木商店の倒産と台湾銀行の休業について
全国に広まった金融恐慌は、特殊銀行(特定の政策目的のために設立された銀行)である台湾銀行まで巻き込み、休業せざるを得なくなりました。第一次世界大戦で大もうけをした成金の一つに、台湾で砂糖やバナナなどを取り扱っていた鈴木商店という商社がありました。台湾銀行は、そこに莫大なお金(いまのお金に換算すると何十兆円に相当する)を融資していました。

その鈴木商店が金融恐慌のおかげで倒産してしまい、台湾銀行は大打撃を受けて、休業に追い込まれます。休業は倒産ではなく、窓口を開けていると破綻する可能性があるということで、営業時間内に窓口を閉めてしまうことを休業といいます。これに対して、台湾銀行救済緊急勅令案を若槻内閣が出しました。緊急勅令とはなにかというと、国会の議会を飛ばして、緊急に出される天皇命令のことをいいます。具体的な内容としては、日本銀行の特別貸し出しによって台湾銀行を救おうとしたのですが、この案に枢密院が反対して、廃案にされてしまいます。枢密院とは、もともと憲法の草案の審議をするための機関で、天皇の諮問機関でした。明治憲法がつくられたあとは、天皇の顧問役として存在していました。その枢密院が台湾銀行救済緊急勅令案に反対したため、若槻内閣は恐慌を抑えることができなくなってしまい、総辞職に追い込まれます。
モラトリアムとは?
憲政会の若槻の次に登場するのは、立憲政友会の田中義一内閣です。田中内閣は大蔵大臣に高橋是清を置いて恐慌対策に取り組み、緊急勅令として、モラトリアム(支払猶予令)をおこないました。
銀行の破綻の原因となった取り付け騒ぎを起こさないために、預金者がお金をおろせないようにしました。ずっというわけにはいかないので、このときは三週間という期限を設けました。そして、その三週間が経過するまえに、各銀行に日本銀行から特別融資(非常貸し出し)をおこない、経営を改善させました。
しかし、銀行に融資したとしても、再開したときにまた経営状態が悪くなってつぶれてしまっては意味がないので、ここで銀行法の改正に乗り出します。これは、資本金規定などを見直して、中小銀行を設立できなくするという法律です。中小の銀行は倒産しやすいので、大銀行と合併しないかぎり、銀行業務を続けてはいけないとしました。
その結果、日本の銀行は、三井、三菱、住友、安田、第一の五大銀行にまとまっていきました。これにより、このあとのファシズムにいたるまでに、金融資本の独占が財閥によって起きてきます。とりあえず、高橋蔵相のおこなった政策によって、金融恐慌はなんとか終わりを迎えました。

中国の9月資本流出は750億ドル、2016年以来の高水準=ゴールドマン

Reuters によるストーリー • 34 分

ゴールドマン・サックスの最新のリポートによると、9月の中国からの資本流出は750億ドルと、2016年以降で最大となった。写真は人民元とドルの紙幣。タイで1月撮影(2023年 ロイター/Athit Perawongmetha)© Thomson Reuters

[上海/シンガポール 23日 ロイター] - ゴールドマン・サックスの最新のリポートによると、9月の中国からの資本流出は750億ドルと、2016年以降で最大となった。

週末に公表された当局データでも資金流出の傾向が示され、銀行の外貨販売・決済、クロスボーダー決済に伴う流出が目立った。

9月の流出額は8月の420億ドルから80%近く増加した。

一方、ゴールドマンは今後の人民元相場について、下落圧力が高まっているものの当局が元相場下支えを続けるとし、年末の人民元相場は1ドル=7.30元になるとの従来予想を据え置いた。「当局は為替管理における信頼性と安定性に重きを置いているようだ」と説明した。

人民元は年初から対ドルで5.5%超下落し、アジア通貨の中でも下げが特に目立っている。

DBSのストラテジスト、チャン・ウェイ・リャン氏は元の下落を抑え、資本逃避を食い止めようとする中国当局の取り組みについて「過度な元安による悪影響を認識しており、元の安定を強化しようとしている」と述べた。

中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は21日公表の報告書で、人民元を安定的に維持し、国境をまたぐ資金フローが異常に変動するリスクを防ぎ、外国為替市場の安定を保つと述べた。

アレセイア・キャピタルの中国担当ストラテジスト、ビンセント・チャン氏は、当局が追加利下げに消極的だとして、元の大幅な下落が近いうちに起こることはなさそうだと指摘。中国経済に対する輸出の貢献度が低下していることを考えると、「比較的安定した元相場を維持することが中国にとって最善の利益だ」と述べた。

中国人富裕層の海外移住加速、巨額資本流出の恐れ-ゼロコロナ解除で

Bloomberg News

2023年1月26日 14:08 JST

  • 資本逃避はコロナ前の1500億ドル上回る可能性高いとナティクシス

  • 渡航制限解除で中国富裕層の海外移住に弾みか、問い合わせ急増

中国が新型コロナウイルス禍に伴う渡航制限を解除したことで、中国人富裕層の海外移住の動きが加速している。こうした中国人が海外の不動産や資産を購入し、巨額の資本流出につながる可能性がある。

  複数の移住コンサルタントがインタビューで明らかにしたところでは、ゼロコロナ政策が昨年12月に撤廃されて以来、多くの中国人富裕層が不動産のチェックや移住計画の最終確認のため海外に渡航し始めている。こうした中、金融市場を圧迫し得る資本流出に加え、頭脳流出が懸念されている。

バリ島スランガンからロンボク島行きの高速艇に乗り込む中国人観光客(1月25日)

Photographer: Sonny Tumbelaka/AFP/Getty Images

  中国共産党に盾突かない限り富を増やし続けられることが当たり前になっていた富裕層はこの2年間、習近平国家主席によるテクノロジー・不動産・教育業界の締め付けや、同氏が推進する「共同富裕」で動揺せざるを得なかった。富裕層向けアドバイザーは、昨年10月の共産党大会で習氏が支配体制を強化して以来、富裕層の懸念は増していると指摘した。

  カナダの移民問題専門の法律事務所ソビロフスによると、カナダへの移民を目指す中国人顧客が急増している。同事務所のシニア弁護士、フェルーザ・ジャマロワ氏は「この6カ月間でうんざりしたのだろう。相談の予約が急増している。中国の顧客は現在、移住に前向きであり、できるだけ早期を希望している」と説明した。

  ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏によれば、コロナ禍前中国からの海外渡航者による資本逃避は年間1500億ドル(約19兆4000億円)前後だったが、今年は3年間海外旅行が実質禁止されていたこともあって増加する可能性が高い。

  同氏は「中国は今年、巨額の資本流出に直面し、これが人民元と経常収支を圧迫する公算が大きい」とし、多くの人が現金を持ち出せない場合は今年の資本逃避は過去の年を上回らないかもしれないが、それでも労働力や生産性、成長に影響を及ぼし得ると指摘した。

  クレディ・スイス・グループの昨年9月のリポートによれば、資産が5000万ドルを上回る超富裕層の人数で中国は3万2000人強と、米国に続き2位となっている。

  中国人富裕層の海外移住は既に昨年から始まっている。投資移住コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズのデータ情報パートナーであるニュー・ワールド・ウェルスによると、2022年は約1万800人と、19年以来の多さとなった。世界ではロシアに次ぐ2位。

  ヘンリー&パートナーズによれば、中国の規制撤廃後、中国人からの移住に関する問い合わせが撤廃前の4倍強に増加。コロナ禍初期は移住は少なかったが、22年に問い合わせが倍増した。

  アジアの顧客への海外不動産販売を支援する不動産会社、ジュワイIQIによると、中国本土の買い手の問い合わせ件数は21年に26%、22年に11%それぞれ減少したが、今年に入って55%増加してその水準を維持しているという。

原題:Exodus of Wealthy Chinese Accelerates With End of Covid Zero(抜粋)


ついに中国の銀行で「取り付け騒ぎ」が発生!「債務膨張」で世界全体が道連れに…「中国経済崩壊」の危険すぎる「予兆」

藤 和彦 によるストーリー • 4 時間

中国の「経済停滞」が意味する危険

中国経済が着実に力を失っていながら、習近平政権はこれと言った対策を打っていない。現状の中国経済は世界的には楽観視されているが、むしろそれこそが世界全体を巻き込んだ恐慌につながりかねない予兆ではないかと不安になることがある。
まずは、中国経済の現状から確認していこう。


抜本的な対策が打たれないままの中国経済 Photo/gettyimages© 現代ビジネス


中国の第3四半期の経済成長率は前年比4.9%増となり、伸び率は第2四半期の6.3%増から減速した。経済を巡る内外の環境が悪化し続けていることが主な要因だ。
中国政府は「今年第3四半期の貿易黒字(ドル建て)は前年比13%減の2262億ドル(約34兆円)に落ち込んだ」ことを明らかにした。減少率は新型コロナウイルス流行初期の2020年第1四半期以来、3年半ぶりの大きさだった。
対立の激化が災いして米国向け輸出が前年に比べて14%も落ち込んだことが痛かった。輸出の不振は長引く可能性が高いと言わざるを得ない。
中国政府がとりまとめた9月の製造業購買担当者景気指数(PMI)によれば、3~6ヵ月先の輸出を占うとされる海外からの新規受注は6ヵ月連続で好・不調の境目である50を割り込んでいるからだ。

泣きっ面に蜂

中国のデフレ・モードも濃厚になっている。
9月の消費者物価指数(CPI)は自動車やスマートフォンの下落幅が拡大したことが災いして前年比横ばいとなった。
CPIは7月に2年5ヵ月ぶりのマイナスとなり、8月は1.1%のプラスに戻ったが、その後、上昇が続かなかった。雇用や所得の改善が遅れ、家計の節約志向がますます深まっている感が強い。
中国の消費者のセンチメントの悪化を招く主な要因となっている不動産市場は復調の兆しを見せていない。米モルガンスタンレーは10日「中国の大部分の世帯は不動産規制緩和策にもかかわらず依然として住宅購入に消極的だ」との調査結果を公表している。
「泣きっ面に蜂」ではないが、商業用不動産市場の苦境も明らかになっている。


中国の各地で不動産の空室率が問題になっている Photo/gettyimages© 現代ビジネス


英国系不動産サービス企業「サヴィルズ」によれば、中国の4大都市である北京、上海、広州、深圳の今年第2四半期のオフィスの空室率が前年に比べて軒並み悪化した。最も深刻なのは深圳で、空室率は27%に達しているという(10月5日付日本経済新聞)。
中国の不動産開発企業の経営破綻リスクは高まるばかりだ。

ついに「取り付け騒ぎ」が発生

不動産開発最大手「碧柱園」はすでに期日が到来した一部の債券の元本の支払いができない状態となっており、経営破綻は時間の問題だと言われ始めている。
不動産開発大手の破綻懸念が金融システムの動揺を招く「負の連鎖」も起きている。
経営再建中の不動産開発大手「中国恒大集団」の取引銀行で、14日までに取り付け騒ぎが発生したことが明らかになっている。
取り付け騒ぎが起きたのは河北省の地方銀行だが、「恒大に多額の融資をしている」との不確定情報がネットで広がり、預金者が支店に殺到した。
混乱を沈静化するため、一部の支店が札束を積み上げて「現金の壁」を築き、信用不安を打ち消そうとする様子がSNSで投稿されたが、その有様は戦前の日本の金融恐慌を彷彿とさせる。

いつか見た「債務膨張」の恐ろしさ

中国の金融監督局は「中国の銀行セクター全体が抱える不良債権と不良化一歩手前の要注意債権の合計は7.4兆元(約150兆円)だが、銀行は十分な資本貸し倒れ引当金などを備えているから問題はない」との見解だ(10月16日付日本経済新聞)。
しかし、1990年代の日本の経験に照らせば、楽観的すぎるのではないかと思えてならない。
中国の経済崩壊は、あまり創造 想像したくない事態をもたらす懸念を筆者は持っている。もちろん、「台湾有事」である。習近平の意識はすでに台湾侵攻の一択へと向かっていないだろうか。

拠出総額約3兆6600億円: 対中国ODA 42年の歴史に幕

政治・外交2022.08.03
岡部 伸 【Profile】
1979年から始まった中国への政府開発援助(ODA)は2022年3月で終了した。42年の長きにわたって続けられたODAはどのように拠出され、どう活用されたのか。その歴史と意義について総括する。

ODAは事実上の戦後賠償

日本が中国に対して行なっていたODAが2022年3月末、42年間の歴史に幕を下ろした。ODAは中国の経済発展を支えて日中の結びつきを強めた半面、援助を続ける必要性や中国政府が国民への周知を怠っていることなどを巡って批判も受けてきた。
外務省国際協力局と国際協力機構(JICA)によると、42年間で、日本が低金利で長期に資金を貸す「円借款」が約3兆3165億円、無償でお金を供与する「無償資金協力」は約1576億円。このほか日本語教師派遣などの「技術協力」約1858億円を合わせて拠出した総額は、約3兆6600億円にのぼる。円借款については、中国から予定通りに利子を含めて返済されており、最後の返済期限は2047年という。
対中ODAが始まったのは1979年。同年9月に訪日した谷牧副総理が日本政府に対し、8件のプロジェクトからなる総額 55.4億ドルの円借款を要請。日本は中国が78年に改革開放政策に踏み切ったことを踏まえ、79年12月に大平正芳首相が訪中し、「より豊かな中国の出現がよりよき世界につながる」と述べ、79年度から支援を開始。これが中国に対して西側から初めて供与されるODAとなった。


北京空港で出迎えの華国鋒・中国首相(右)と握手する大平正芳首相(中国・北京)1979年12月5日(時事)
日本が踏み切った背景には、中国が戦後賠償を放棄した「見返り」との性質もあったとされる。大平元首相の孫で、一般社団法人日中健康産業振興協会副会長の森田光一氏によると、首相は当時、娘婿で元運輸大臣の森田一氏(光一氏の父)に「対中ODAには戦争の償いという意味合いがあり、中国が戦後賠償を放棄する代わりに日本が経済援助をするものである。ただし、いずれ中国は経済大国となり、日本を凌駕(りょうが)するだろう。そうなれば日中外交は相当難しくなる。日本はその覚悟を持って支援しなければならない」と話していたという。
日本政府が単なる途上国援助ではなく、事実上の戦後賠償と位置づけ、改革開放政策の後押しが、アジアひいては世界の安定につながると考えていたことがうかがえる。
大平元首相の予言どおり、中国は飛躍的な成長を遂げ、2010年には国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界第2位の経済大国となった。さらにアフリカなどに戦略的な開発援助を始め、右肩上がりで軍拡を進めるなど、軍事大国の道も歩み続けている。日本政府が発展途上国を脱した中国に「(途上国支援の)一定の役割を終えた」として無償資金協力に終止符を打つのは06年。07年には円借款を打ち切った。
しかし、それ以降も技術協力は続けた。21世紀には日本への影響も懸念される大気汚染を中心とした越境公害や感染症、食品の安全など中国との協力の必要性が認められる事業や中国進出日本企業が円滑に活動するため中国の法律に関する事業などで支援が続けられた。

国際空港や総合病院建設にも貢献

援助の内容は、80年代初期は港湾や発電施設などインフラ支援が主で、90年代からは地下鉄建設や内陸部の貧困解消、環境対策など、時代が進むにつれて変わっていった。特に80年代には円借款による鉄道、空港、港湾、発電所、病院などの多くの大規模インフラが日本の支援で整備され、改革開放政策を支え、近代化に貢献。中国が経済成長し、世界第2の経済大国となる道筋をつけた。
84年、北京に建設された中日友好病院がその一つだ。81年から83年度まで無償資金協力として約165億円が投じられ、最新の医療器材が導入され、81年から92年、94年から95年まで医師、看護師、臨床技師らへ医療技術を移転し、医療サービスも日本式となる近代的総合病院を建設した。03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)発生時には、重症患者受け入れ指定病院となり、08年の北京五輪では政府公認の指定病院となるなど中国を代表する総合病院となった。


医療サービスも日本式を導入した近代的総合病院として1984年、北京に建設された中日友好病院(左)。2003年、広東省を起源とする重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が流行した際、同病院内の集中治療室(ICU)での防護服の使用法を指導する日本人専門家(右端) 提供:JICA
90年代には、新たな開発課題として北京国際空港を整備した。93、95、96年に300億円の円借款を投じて国際線、国内線用の旅客ターミナルビル、貨物ターミナルビルを新設し、旅客処理能力が300万人から3600万人となり、世界有数の国際空港に生まれ変わった。

90年代に空の玄関として整備された北京国際空港 提供:JICA


また、感染症対策として世界保健機関(WHO)が定めた「西太平洋地域(日本や中国、フィリピンを含むアジア太平洋の37の国と地域)」におけるポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)の撲滅にも日本のODAは寄与している。この西太平洋地域におけるポリオの患者総数の実に85%を中国が占めた時期があったが、90年から日本が技術協力を行ない、93年から無償資金協力など7億円が供与されたことで、中国はもちろん、西太平洋地域全域でポリオは撲滅された。
2000年代には、日本の技術による内陸部の社会開発支援として重慶のモノレール建設がある。93年に技術協力として山が多く起伏の激しい重慶市の公共交通機関としてモノレールを提案。01年に271億1千万円の円借款を供与して日立製作所が市中心部約13.5キロにモノレールを完成させ、交通渋滞と大気汚染が著しく改善された。

2001年に重慶市の公共交通機関として日本の技術で建設されたモノレール 提供:JICA
同上 提供:JICA


21世紀の技術協力に、国境を越えて飛来する微小粒子物質PM2.5の大気汚染問題がある。12年から16年に汚染排出源の中国の鉄鋼業3社に対して、日本企業が日本の計測器を使用した大気中の窒素酸化物を総量規制する改善法を指導、実現した。
また、86年から2015年度末までに中国全32州に医療・保健、農業などで約830人のボランティアを派遣、草の根レベルで技術協力事業などを進め、相互理解も進んだ。
しかしながら、支援で建設された施設のほとんどで日本側が働き掛けるまで中国政府は日本の支援について国民に周知していない。北京国際空港など一部では、日本の援助を示す銘板が掲示されているが、大部分で日本の表示がなく、「日本の貢献を知る中国の一般国民は少ない」。戦後賠償の代替と捉えた中国政府が「日本の支援は当然」と周知しなかったことが原因とされる

北京国際空港に設置された日本の支援を示す銘板 提供:JICA


日本では、日本から援助を受けながら、その一方で他の途上国に戦略的な支援を行った中国に、「日本の支援が中国の市民に知られていない」との不満が高まった。日本のODAが改革開放政策を支え、中国の近代化に貢献したことを日中両国の国民が正しく理解しなければ、真の日中友好は生まれないとの懸念からだ。

安倍元首相の決断で歴史に幕

ズルズル続いた支援の終了を決断し、終止符を打ったのが安倍晋三元首相だった。2018年10月、公式訪中した安倍氏は、日中平和友好条約発効40周年行事で、「中国は世界第2位の経済大国に発展し、(ODAは)その歴史的使命を終えた」と述べ、18年度から始まる技術協力の新規案件を最後に終了する意向を伝えた。この18年度の案件が22年3月で終わり、対中ODAは完全に終了した。
安倍氏は、「新たな時代にふさわしい新たな次元の日中協力の在り方について大所高所から胸襟(きょうきん)を開いて議論したい」と未来志向を語り、日中関係安定化に意欲を示し、ODAに代わり、第三国での開発について中国と協議する「開発協力対話」の発足を目指すと述べた。第三国での開発協力は中国が提唱する経済圏構想「一帯一路」への協力にも映り、中国の李克強首相は、「日本の積極的な参加を歓迎する」と呼びかけた。
日本側は、「一帯一路ではなく、個々のプロジェクトで協力する」(外務省幹部)との立場を表明。安倍氏が掲げた「自由で開かれたインド太平洋戦略」と一帯一路は安全保障面で対抗する側面もあり、そのバランスを取る思惑から一帯一路への関与は否定した。
外務省国際協力局によると、習近平国家主席と首脳会談で次のようなやりとりがあった。
「安倍総理(当時)からは、対中ODAの新規供与終了を踏まえ、今後は開発分野における対話・人材交流や地球規模課題における協力を通じ、両国が肩を並べて地域・世界の安定と繁栄に貢献する時代を築いていきたい旨を述べました。これに対して、習主席からは、日本のODAによる貢献を高く評価する旨述べた上で、こうした協力について前向きな発言がありました」
習氏から日本のODAへの高い評価と前向きな発言を引き出したことは、安倍氏が対中外交で遺(のこ)した功績の一つと言っていい。だが、習氏の具体的文言はつまびらかにされていない。事実上の戦後賠償である日本のODAが中国の経済発展に貢献した事実を中国の国民が正しく理解しない限り、日中友好親善は実現できない。そのためにもいつか習氏の言葉も明らかにされることを願わずにはいられない。
バナー写真:日本の対中国ODAで整備された施設前で地元幹部(左)に感謝される丹羽宇一郎駐中国大使(当時)=2011年06月24日、中国新疆ウイグル自治区アトシュ市(時事)


中国へのODA終了へ 40年で3兆円、近代化支える

鬼原民幸 清宮涼2018年10月23日 11時58分

 日本政府が中国への途上国援助(ODA)を今年度を最後に終了することが23日、わかった。26日に北京で開かれる予定の日中首脳会談で安倍晋三首相が正式に伝える方針だ。新たな日中間の枠組みとして「開発協力対話」を立ち上げ、途上国援助などで連携を図る方向だ。

 複数の日本政府関係者が明らかにした。すでに中国側へ伝達。40年にわたって続いてきた対中ODAは、歴史を終えることになる。菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で「対中ODAのあり方を含め、今後の日中の協力について意見交換する予定だ」と述べた。

 日本は中国で改革開放政策が始まった1979年以降、円借款、無償資金協力、技術協力といったODAを約40年間で計3兆6500億円余り拠出。道路を含むインフラ整備などを通じて中国の近代化を支えてきた。

 一方、中国が急速な経済発展を遂げたことで対中ODAを疑問視する声も上がり、対中円借款は2007年に新規供与を終えた。さらに中国は10年に国内総生産(GDP)で日本を抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国に成長。政府は今回の首脳会談を機に拠出を終了する意向を固めたとみられる。すでに事務レベルで中国側へ伝えており、政府関係者は「中国も了承している」という。

参考文献・参考資料

中国の9月資本流出は750億ドル、2016年以来の高水準=ゴールドマン (msn.com)

中国人富裕層の海外移住加速、巨額資本流出の恐れ-ゼロコロナ解除で - Bloomberg

ついに中国の銀行で「取り付け騒ぎ」が発生!「債務膨張」で世界全体が道連れに…「中国経済崩壊」の危険すぎる「予兆」 (msn.com)

台湾銀行 - Wikipedia

新台湾ドル - Wikipedia

拠出総額約3兆6600億円: 対中国ODA 42年の歴史に幕 | nippon.com

中国へのODA終了へ 40年で3兆円、近代化支える:朝日新聞デジタル (asahi.com)

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