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小説 詩篇

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聖書の中の「詩篇」と共に歩む大学生の日常を小説にしています。 人生のその時々に、必要な言葉が現れる。
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#詩篇

小説 詩篇 7篇

小説 詩篇 7篇

7

問題はカンニングがバレそうになった同級生たちだった。

急に緊張してきた。
すごく怒っていたらどうしよう。。。

教室に入る。
別の授業だが彼らはいる。
怖くて顔を上げられない。
彼らの顔も見れないが視線は感じる気がする。

席について聖書のアプリを開く
『わが神、主よ、わたしはあなたに寄り頼みます。
 どうかすべての追い迫る者からわたしを救い、
 わたしをお助けください。
 さもないと彼ら

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小説 詩篇 6篇

小説 詩篇 6篇

6

「主よ、僕を責めないで。
 僕を懲らしめないで。
 憐んでください。疲れました。
 癒してください。僕の魂が震えています」

疲れ切った体を、そんな祈りと共にベッドに沈めた。

学期末のテストだったのだ。
疲れてたんだ。
目の前で小さな紙を手渡しする場面を見て、また「あっ」と声を漏らしてしまったのだ。

集まる教室中の目。
先生に注意される彼ら。
こちらに向けられる敵意。
僕はいたたまれなか

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小説 詩篇 5篇

小説 詩篇 5篇

5

「私のことばに耳を傾けてください!主よ!
 私のうめきを聞き取ってください!
 私の叫ぶ声を耳に留めてください!」

こんな祈りと共に目覚めたのは、
二日酔いの朝だった。

昨日読んだ言葉が祈りとなったのだ。
本気で苦しいからだ。

初めての二日酔い。
こんなにも苦しいのか。

しかし、朝から祈るのも初めてだ。
苦しみもまた、良いこと、ともなんとか言える気もしないでもないこともない。
「私の

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小説 詩篇 4篇

小説 詩篇 4篇

4

文学部の授業に真面目に受けている学生はいない。
ある日の一般教養の授業で僕は最悪な状況に陥った。

入学して三ヶ月が経っても僕は、当然のように友達のいない生活を送っていた。
その日も日本史の授業では前の方の人気のない席に一人座っていた。

しかしその日はたまたま、キリスト教について触れられたのだ。

「えー、このようにキリスト教でも十戒を中心とした律法が重要な位置を占めており、
 信者はそれ

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