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#クリスチャン小説

小説 創世記 16章

小説 創世記 16章

16章

その頃、一雄とその妻ヒメの間に子はなかった。

その頃、イブキが蘇土村の女性と結婚した。
その名を空(ソラ)と言った。
結婚式は蘇土村、吾村、河南町の三つの村が集まって、盛大に行われた。

そしてその一年後、ソラは子どもを身籠った。
そのことでヒメは心を痛めた。
神の一雄にした約束を知っていたからだ。
自分がその約束にふさわしくない者であるように感じた。
そのヒメを見て、一雄は心を痛めた

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小説 創世記 15章

小説 創世記 15章

15章

激動の数日間が終わった夜、
一雄の上に神の言葉が響いた。
一雄は幻を見ていた。
その声に、心は躍った。

「恐れるな。
 わたしがお前の盾だ。
 お前は大きなものを得る」

一雄の目の前には大きな光があった。
光に向かって叫んだ。
神との対話は初めてのことだった。
「神よ!あなたは何をくださるのですか!
 この財産はなんのためにあるのですか!
 わたしの子が後を継ぐのでしょうか!
 それ

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小説箴言 9章

小説箴言 9章

9章

「浅はかな者よ!ここに来い!」

僕(悟)はまた夢を見た。
俺(龍)はまた夢を見た。

夢の中でその人は家を建てている。
建てあげて、石の柱を7本切り出した。

家畜から肉の料理を並べ、
ぶどう酒を注ぎ、
食卓を整えた。

そして周りにいた女性たちに何かをことづけた。
その人たちが小高い丘の上に駆け上り、この言葉を届けた。
「浅はかな者よ!ここに来い!」

僕は「行きます」と叫んだ。
俺は

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小説箴言 8章

小説箴言 8章

8章

僕(悟)は夢を見た。
俺(龍)は夢を見た。

何かが叫んでいる夢だ。
人の形をしている。
丘の上で、街の中で、家の前で、
必死に何かを叫んでいる。

僕に向かって。
俺に向かって。

「お前だ!お前に言っている!
 お前に届くよう声を枯らしている!
 浅はかな者よ!悟れ!
 愚かな者よ!知恵を得よ!」
その必死さに、言葉とは逆に、愛のようなものを感じた。

「聞け!これは支配する者の言葉だ

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小説箴言 7章

小説箴言 7章

7章

夜、おばあちゃんの家まで、お父さんと車で行くことになった。
僕(悟)が学校から帰ってすぐに、お父さんの妹から電話があって、調子が悪いから見に行ってほしいとなったそうだ。
お母さんは仕事だからいけなくて、夕飯の都合で僕も一緒に行くことになった。

二時間ほどある車の中で、お父さんとたくさん話した。
あの子のことを話した。
お父さんの教えてくれたことを守ろうとしていることも。

するとお父さん

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小説 創世記 14章

小説 創世記 14章

14章

カイは王国を築いていた。

カイが大阪の街を支配していた頃の組織『バビロン』は解散する。
それに取って代わる組織は即座に、その領域を奪っていった。
結局、人々にとっては、
支配される組織が代わり、街が少し物騒になっただけで、大した変化はなかった。

カイは蘇土村(そどむら)の長となっていた。
村が豊かになったのはカイの商才のおかげだった。
カイは村の若者たちを力で従えて、すぐに村を支配し

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小説 創世記 13章

小説 創世記 13章

13章

飢饉を乗り越えた村はどんどん豊かになった。
家畜も増え、一雄もイブキもそれぞれ牧場を持つようになった。
その牧場はどんどん大きくなっていった。

村に子どもが増えていった。
家族も大きくなっていき、村を広げなければいけないということになった。

そこで一雄はイブキに言った。
「ここで一度、僕ら、分かれていこう。
 村を広げるのに、君の牧場をそこに移動させてくれないか?
 みんながそこをも

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小説 詩篇 9篇

小説 詩篇 9篇

9

「心を尽くして、
 心を尽くして感謝します!
 あなたのことを語り伝えます!
 あなたを喜び、誇ります!
 いと高き方!あなたの名を誉め歌います!!」

そんな祈りと共にキャンプは終わった。
感動して感動して、そんな大胆な祈りを心からしたのだ。

そしてまた、元の生活に戻っていった。

一人の部屋に戻ると孤独が襲ってきた。
孤独は不安を呼んだ。
不安は恥を生み出した。
恥は虚しさとなった。

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小説箴言 6章

小説箴言 6章

6章

さらに最悪なことが俺(龍)には待っていた。
いや、最悪を止めるために必要な最悪だったのかもしれないが。

年上のその彼女を仲間との集まりに連れて行った時のことだった。
久しぶりに会えて浮かれていたのだ。
女に飢えた男どもの前で優越感に浸っていた。
「おい、こいつらとも遊んだってくれや。ははは!」
冗談のつもりだった。
「おい、龍!ほんとか!いいんか?」
「おう、おう!なぁ?」
笑いながら振

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小説箴言 5章

小説箴言 5章

5章

あの頃、じいちゃんは俺(龍)に言った。
「おい!よう聞けよ!!
 調子に乗るなよ!調子ええことばっか言ってんなよ!!」

あの女に会ったのは中1の夏だ。

年上の女に誘われついて行った。
初めは刺激的で、魅力的な、甘い言葉と匂いに、興奮した。
その気持ちよさに浸った。

しかし、しばらくして俺は、沼にハマっていっている心地がした。
俺はなんとか這い上がろうとしたけれど、あいつはどんどん闇に

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小説 創世記 12章b

12章b

その年、何日も雨が降らない日が続いた。
作物が実らず、家畜もバタバタと死んでいった。

そこで一雄は大阪の中心部、街の方へ行き、食料を買ってこようということにした。
村から送り出されて、何人かの若い衆とヒメ、イブキと共に街に向かった。

大阪の街は荒れていた。
暴力で支配している者たちがいた。

そのことを心配して一雄はヒメに言った。
「聞いてほしい。
 僕は君が本当に美しいと思う。そ

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小説 創世記 12章a

小説 創世記 12章a

12章a

一雄はまた声を聞いた。
「北へ行け。
 おまえはおまえの家族を離れて北へ行け」

大きく、腹の中で響く声。
一雄はすぐに「はい」と言ってヒメとイブキに伝えた。

ちょうどその頃、ヒメの両親たちは新たな産業のアイデアとノウハウを得ていた。
そこで一雄たちと両親たちは別の道を行くことにした。
一雄たちは北、大阪へ、両親たちは南、牧場のあるあの町へ行くこととなった。

ノアから与えられた様々

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小説 詩篇 8篇

小説 詩篇 8篇

8

キャンプにきている。

キャンプと言っても焚き火したりテントをはったりのキャンプじゃなくて、
合宿みたいなやつだ。

聖書研究会みたいな部活は他の大学にもあって、
そのクリスチャンたちが集まってキャンプをする。
面白い文化である。
教会でも話はよく聞いていたけど、なんか苦手そうで行くことはなかった。

「わたしたちの神様」そんな祈りを、
前で自分と同い年の人がしていることが不思議だった。

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小説 詩篇 7篇

小説 詩篇 7篇

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問題はカンニングがバレそうになった同級生たちだった。

急に緊張してきた。
すごく怒っていたらどうしよう。。。

教室に入る。
別の授業だが彼らはいる。
怖くて顔を上げられない。
彼らの顔も見れないが視線は感じる気がする。

席について聖書のアプリを開く
『わが神、主よ、わたしはあなたに寄り頼みます。
 どうかすべての追い迫る者からわたしを救い、
 わたしをお助けください。
 さもないと彼ら

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