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20240730 イラストエッセイ「私家版パンセ」0037 自分が絶対に正しいという人が一番間違っている 正義について

 正義論というものがあります。有名なのは、サンデル先生の白熱教室。
 ロールズの正義論も有名です。
 意外なようですけれど、よくよく考えてみると正義は絶対的なものではなく、立場によって違うものだということが分かります。
 「ポイントを切り替える難問」というものがありますよね。暴走列車が数十人の路線作業員のところへ突っ込もうとしている。あなたはポイントの切り替えスイッチを持っている。切り替えると、暴走列車は違う線路に入りますが、そこには3人の作業員がいる。数十人の命と3人の命、あなたはどちらを選択するのか。
 正解はなく、その人のよって立つ正義によって答えが変わります。

 それでも何を正義とするかを決めなければ、社会が営めません。それで、民意や慣習などを参考にして、正義の概念が作られ法律になります。
 自分の中に善悪の尺度を持つことも大切です。そうでなければ、今日一日生きてゆくことができません。何が正しいかを考え、自分の生き方を決める。これは必要なことです。
 でもそれは絶対的なものではなく、社会が変われば変わります。若い人たちには信じられないかも知れませんが、ジャニーズ事務所の問題は昔から明らかになっていましたけれど、社会が「別にいいじゃないか」と思っていたのです。世の中の価値観が変わって、正義も変わった一例です。

 国際問題ではもっとはっきりしています。
 お互いの正義がぶつかり合って、戦争になるんです。
 西側には西側の正義があり、ロシアにはロシアの正義がある。
 つまり、どちらが正しいか、どちらが正義かを国際社会で白黒つけようとすると、戦争になると言っても良いと思います。
 ですから、国際社会では、どちらが正義かを決めることにはあまり意味がありません。とにかく紛争を終わらせることを目的にし、双方が妥協をすることが現実的解決になります。でもこれは普通の人から見ると分かりにくいですよね。納得もしずらいと思いますが、でも、こうするより方法がないのです。

 何が正義かを決めることは難しい。時代や場所によっても違うし、そもそも決めることに意味がない場合もある。
 しかし一つだけはっきり言えることがあります。
 それは、自分が正義であると信じて疑わぬことほど間違ったことはない、ということです。
 それが人であれ、政治団体であれ、宗教であれ、国家であっても。

チャップリン「独裁者」 オリジナルイラスト

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