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デザインのひきだしNo.46表紙 箔押し加工について ③腐食版作成 

さて、つらつらと書いてきた「デザインのひきだし46」驚異の1000パターン表紙についてのnote第3弾です。

過去記事は下記のとおり。


前回の②では彫刻版について取り上げましたので、今回は腐食版について取り上げます。

また、こちらコスモテックさんの圧巻のnoteは箔押し工程のみならず版についても非常に詳細に書いておられるので是非ご覧いただきたいです!!


表紙に使用された腐食版について

様々な微細パターンが入った腐食版(銅3mm版)

今回の表紙に使用された腐食版の見どころは

・彩光腐食
・マジックエンボス

この2点です!

彩光腐食について

彩光腐食とは非常に微細なテクスチャーが表面に施されたホットスタンプ版です。2段階で腐食されていることから2段腐食版と呼んだりもします。
この2段階の腐食のうち、浅く腐食された部分に細かな模様を入れることができます。
通常の腐食版と彩光腐食版を比較するとこんな感じです!


この彩光腐食の微細エンボスパターンですが、数多くの既存テクスチャーからパターンを選択いただけます。
また オリジナルのパターンを作成することも可能です
(別途データ作成費必要)。
こんなんやってみたい!という方は弊社営業にお声がけください。

マジックエンボスについて

こちらは近年弊社で開発された比較的新しい技術です!
腐食の手法としては彩光腐食と同じく2段階腐食なのですが、特殊なデータの作成方法で、浮き出ししていないのに浮き出ているような、立体的に見える効果を出すことができます。
今回の表紙ではチョコの部分にこの技術が使われています。


腐食版データ制作者に聞いてみました!

今回は腐食版のデータを作成した製版部次長DTP課のSさんにお話を聞きました。
Sさんは今回の表紙の打ち合わせ段階から参加してもらい、ツジカワのイチ押し技術や版でできること、できないことを丁寧に説明してもらいました。
DTP歴ウン十年(知らんのかい)、ツジカワ製版部DTP課の生き字引、腐食版データ作成における知の巨人であります!!(古舘伊知郎風)

ー完成品は見ましたか??どう思いました?

…いや、まあ、すごいな思たよ。
どっちかゆうと今回は彫刻版がメインやね。
腐食はそんな凄いことしてないからな・・・

―(のっけからやりにく!!)いやいや、腐食版もすごいですよ!?
今回最初に話が来た時はどうでしたか?嬉しかったですか?

嬉しかったよ!
ただ・・・今開発中の技法とか・・・(諸々の事情で)出したいけど出せない版とか色々あったから。それとか出せたらよかったけど。

―(・・・・気になる!!!)そうなんですね。
そこらへんはまたゆっくり聞きます笑

腐食版のデータはこれだ!


ウシ?ウシやん!!~画像データ修正編~


―データが来て、まず何からしましたか?

画像データの修正やね。画像データから腐食版データ作成するって結構大変で。
細すぎて版に反映されなそうな線や、箔詰まり(※)起こしそうなところを修正したな。

※箔詰まりとは
箔押し時に、細い隙間が箔で埋まってしまい柄が潰れてしまう現象

―機械部は3Dモデリングデータを作成する際に、画像データをトレースしたとのことですが製版も同じやり方ですか?

いや、トレースではなく元の画像に足すようなかんじかな。線を太くしたり・・・箔ヌケが良くなるように隙間を広げたり。
この画像データのままだったら線が細すぎてうまく箔押し印刷できないから、こことかここ、結構修正したなぁ。

―ウシの形のところとか、ぴえんマークのところですね。

え・・・?ウシ??ウシ!?ウシって何や?
あああ!!!ウシやったん!?今気付いたわ!!!!

―データの細部見すぎて気づかないやーつ!

元データ:細い線が多い画像データのため、このまま製版してもこの仕上がりにはならない


なんかええ感じに描いただけではなかった・・・!~マジックエンボス編~


元データ
実際の表紙

―マジックエンボスのところはどうですか?チョコのところ

この画像データからあの表紙の柄になるまでは結構色々な技術が使われてるねん。

―すみません、正直、イラレとかで画像トレースしてなんかええ感じに描けるものなのかと思ってました・・・!

・・・いや、違うよ(呆)。
確かに最初はざっくり形をトレースしたけど。そこからあの立体感を出すためには特殊な技術を使いながら細かい線を書き足していく必要があって。
これに関してはほぼイチから描きなおしたみたいなもんやなぁ。

大まかな形をトレースして・・・
特殊な技術で線入れ。立体的!!

―もともとこのチョコのデザインが採用されたのは、打ち合わせ時に津田さんやデザイナーの中澤さんがこのサンプルを気に入ってくれた経緯がありましたね。

打ち合わせ時ツジカワから提出したサンプル


実はこのチョコサンプルのアイデアを出したのは俺じゃなくて、DTPの若い子やねん

―え!?そうだったんですか?!

最初このマジックエンボスの技術を開発しているときは、動物や水滴みたいな有機的なフォルムをどうやって立体的に見せようかと思って開発してて。
モチーフとしては丸みを帯びた曲線的なものが多かってん。
それを若い子にやらせてみたら、このチョコってゆう直線的なモチーフで立体感を出すってゆうおもしろいのを作ってきた。
これは俺では思いつかなかったからすごいな、と思ったよ。


大したことやってない?!~彩光腐食編~


―表紙の出来上がりをみて「おもしろいな」って思った部分ってありますか?

これちゃう?(表紙右下の「初回限定実物見本~」とある部分)

箔によっても見え方が変わります。

―ツジカワの彩光腐食パターンが施されている部分ですね。角度によってパターンの見え方が変わるのが面白いです。

これはツジカワが渡した彩光腐食パターンサンプルから先方が指定してくれたやつやね。

該当部分はType-Jを使用

実はこれはめちゃめちゃ複雑な模様を組み合わせて作ってるパターンなんやけど継ぎ目がないのがポイントやな。
拡大しても本当に複雑だからなかなか他には真似できないパターンだと思う。今回彩光腐食の色んなパターンを採用してくれたんはありがたかった。

―画面で拡大してみるとめっちゃ複雑なパターンですね。凄いなあ。

いや、大したことやってへん。今回のは決められた場所にパターン当てはめただけやし。

―(や!り!に!く!!!)ありがとうございました!!!


とまあ、終始大したことないっすな雰囲気を出してたSさんではありますが、現在弊社には押し見本だけでも100種類以上の彩光腐食パターンがあり、そのほとんどはSさんが作っております。

確かに今回の作業の中にはもともとあるパターンをあてはめただけの部分もあったかもしれませんが、
そのパターンを作るにあたって何千、何百種類とデータを作って、実際に箔押しをする、という試行錯誤を重ねており、その仕事ぶりは間違いなく大したことあるっすと私は思いました。


そもそも箔押しって押してみるまではどんな表現になるかわからない要素が多いです。

画面データで見ている状態と実物では迫力や質感が違うことが箔押しの魅力であり、難しいところでもあると思います。
この点に関しては今回の1000パターン表紙が何よりも如実に表していますよね!データ上で1000種類の色を変えたパターンを見せられたとしてもピンとこなかったと思います。

彩光腐食のパターンやマジックエンボス、チェンジング(※)もパソコンの画面上では2階調(白黒)の細っかい線が並んでるだけです。

※チェンジングとは
角度によって柄や文字が変わる印刷手法。
今回の表紙では「Cosmotech⇔Tsujikawa」と文字が変化する部分。
表紙は彫刻版で作成しましたが通常は(予算の関係上)腐食版での作成が多いです。

しかし、パソコン画面で見たデータから、実際に箔押しした状態を想像しながらデータを作成する、というのは製版技術・印刷・箔押しについての深い知識と経験がなければできないと思いました。

製版技術もすごいんです・・・・!!!


そのようにして作成された精細なデータを細部まできちんと反映させて作成する製版技術も特筆すべきところです。
特筆すべきところで本当に、本当にすごい技術がつまっている工程なのですが、製版技術に関してはデリケートな情報が多く、写真も載せられないので今回は泣く泣くカットとなりました泣。
また取り上げられる範囲で情報をお伝えできたらと思います!

以上、データの話のみにはなってしまいましたが「デザインのひきだし46」表紙に使用された腐食版はこんな風に作られたのでした。

デザインのひきだし46表紙について、すでに3本note書いておりますが、、、付録なんかについてもまだまだ言いたいことがあるので続編追加していきます!


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