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「デザインのひきだし46 表紙加工」

こんにちは、現場の前田です。

今回加工でお手伝いさせていただいたのは『 デザインのひきだし46 』の表紙です。私が今まで加工で携わらせていただいたのは、『 デザインのひきだし 』39号41号44号 です。

箔押しの匠 佐藤の時代から今号(46号)まで数えると、大変光栄なことにコスモテックが担当させていただいた『 デザインのひきだし 』の表紙加工は計9回にもなります。


今回の『 デザインのひきだし46 』は『 箔押し & 箔加工編 』ということで、「 コスモテックで表紙加工の話が決まったぞ!うれしい! 」と営業の青木から聞いた時は私もとても嬉しく思っていたのですが、いざ加工内容を聞いてみると、尻込みしてしまう、何やらとてつもない内容だったのです…


2色箔( 箔×箔 ) × 紙10種で全1000パターンの組み合わせ!?

無題

1工程目の箔色 × 2工程目の箔色 × 紙の種類をまとめたエクセル
1から1000までの組み合わせを事前に計画


なんと! 10種類の紙に2色の箔押しで、
驚きの1000パターンの組み合わせを加工するのです!!

「 え? 1000パターン…!? 」
この話を青木から聞いた時、日々の箔押し加工で聞いたことのない組み合わせ数で、思わず思考が停止してしまうほどの衝撃を受けました。
「 1000 」という数字の破壊力、重みがとにかくすごいのです!

渾身の美しい版はツジカワ株式会社によるもの

ツジカワ株式会社(製版会社)が総力をあげて製作した版は
本当に素晴らしい出来栄え


紙と箔、1000パターンの組み合わせも驚きですが、表紙の箔押し加工で使う金属製の版もすごいつくりになっているのです。

『 デザインのひきだし46 』の表紙を見ると、普通に箔押しされているだけでなく、箔押し部分に模様が入っているものやリアルな凹凸表現になっている部分などが見られます。

2色の箔押しはそれぞれ、①腐食させてつくる銅版 と ②彫刻箔押しエンボス版という2種類の版を使用しています。彫刻箔押しエンボス版は、1回の押しで箔押しと浮き出しを同時に加工でき、しかも複雑な凹凸表現が可能な版です。

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1工程目で使用するツジカワ製 腐食版( ①の版 )


①の腐食版は、版の表面にさまざまな模様を入れることができる『 彩光腐食 』、そして、スタンダードな箔押し表現で使われることの多い、押す面がフラットな凸版部分( 繊細な模様が入っていない )との箔押し表現の差がよくわかるデザインになっています。

◎ うわさの『 マジックエンボス 』!?
また、『 デザインのひきだし 』編集長の津田さんが「 コレは必ず表紙のデザインに入れたい! 」とおっしゃっていた表現が、ツジカワ株式会社イチオシの『 マジックエンボス 』で、①の腐食版内に配置されております。

今回は、表紙中央あたりにある板チョコレート部分にこの『 マジックエンボス 』が使われております。箔押し加工後、一見すると立体的に見える板チョコレート部分。エンボス(浮き出し)加工がされているのかな? と思いきや…

実は、エンボス(浮き出し)版を使わずとも版の効果『 マジックエンボス 』によって立体的に見せることができるのです!

線のみで描かれた板チョコレートはツジカワ株式会社(製版会社)の高度なデータ制作力と製版技術によって見事に立体的に表現されています。

実は、②の彫刻箔押しエンボス版でチョコレートの包み紙もリアルに立体的に表現されているので、こちらもぜひ注目していただきたいポイントの一つです!( この後説明します )

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2工程目で使用するツジカワ製 彫刻版( ②の版 )
彫刻版は凸凹版の2種1セット 写真はそのうちの片方(凹版)


②の彫刻箔押しエンボス版は、前述したように、『 1回の押しで箔押し加工とエンボス加工を同時にできる 』という特徴があります。

そして、この複雑な彫刻箔押しエンボス版を製作するにあたって、『 デザインのひきだし 』編集長の津田さん、表紙のデザインをされた 株式会社STUDIO PT. のアートディレクター / デザイナーの中澤耕平さん、ツジカワ株式会社(製版会社)、コスモテックが集結し、版の再現性や加工でどこまで表現が可能なのかなどの綿密な打ち合わせをおこないました。


打ち合わせで中澤さんのデザインイメージを初めて拝見した際、
「 おお… これは本当にすごい! 複雑な形状で、しかも箔押し面積が大きいデザインを、彫刻箔押しエンボス版でどのくらい表現出来るのだろうか… 」と一瞬怖気づきそうになりました。

「 でも、きれいに押せたら、きっとすごいものができる…!!!!! 」

最初は不安とワクワク両方の感情がいりまじっておりましたが、今回ツジカワ株式会社のメンバーの皆さまが総力を挙げて、デザインイメージ通りの素晴らしい版を製作してくださいました。渾身の美しい版を製作いただき、今度は「 我らコスモテックがこの版で、皆さんにご満足いただける美しい箔押しをしなければ! 」と心に強く思いました。

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表4部分には使用箔色のクレジット情報を箔押し
写真上はツジカワ製 腐食版 | 写真下はツジカワ製 彫刻版


◎ 表4部分の箔押しも さり気なくすごい!
加工の際は表1部分の版はずっと固定したままにし、箔色を変える時に上の写真の箔色表記版をその都度つけ替えて加工します。

箔色表記版は表1の版と同じ高さでないと均一に箔が定着しないため、腐食版・彫刻版共にツジカワ株式会社で表1の版とぴったり同じ高さになるように製作していただきました。

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ツジカワ株式会社(製版会社)で表紙加工のための
金属版作成前のイメージ よく見ると 右側の青楕円の中に
ツジカワ+コスモテックロゴの表記が!

◎ 版づくりの丁寧な仕事
表紙のデザインイメージ( 上の画像 )をよく見てみると、パーツごとに表現したい内容が細かく書かれています。版をいざ製作する前の段階では、この内容をもとに、ツジカワ株式会社が腐食版と彫刻箔押しエンボス版のデータを入念に整えてくださいました。

彫刻箔押しエンボス版は、デザインイメージからツジカワ株式会社が複雑な凹凸を3Dデータ化し、そのデータを確認後に金属製の版が製作されます。

また、表紙にはツジカワとコスモテックの社名 / ロゴがチェンジング( 見る角度で画像が切り替わる技術 )でチラチラと切り替わるような部分もあり、この津田さんと中澤さんの粋な計らいとデザインは、本当に格別に嬉しいものでした。

さまざまな箔メーカーの箔材を掛け合わせ


表紙の紙10種類に加工する2色の箔は、さまざまな箔メーカーの箔材20種類の中から組み合わせています。

◎ 全20種類の箔!!!!!?
1つのデザインに20種類もの箔を贅沢に使ったことは今までありません…!

スタンダードなメタリック系の箔や透明系の箔、ホログラム箔、さらには柄の入っているホログラム箔など、国内の箔はもちろん海外の箔も一堂に会して、腐食版で1色+彫刻箔押しエンボス版で1色、計2色組み合わせたら、紙色と相まって果たしてどのように見えるのか…

加工する私自身、楽しみでなりません!

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豪華絢爛! 加工に使用する箔材は全20色
国内外の箔材メーカー5社の箔を組み合わせて使用


今回の『 デザインのひきだし 』の表紙加工では、箔押しするサイズが大きく、またデザイン上のベタ部分( 塗りつぶされた面積の大きい部分 )にしっかり箔を定着させるために、箔の接着剤は比較的やわらかいものを各箔材メーカーの方々にご用意いただきました!

今回ご協力いただいた箔材メーカー5社は、 村田金箔 ・ カタニ産業 ・ クルツジャパン ・ 堀金箔粉 ・ EP Print です。 今回の表紙で2色の箔を使用する際には、例えば 村田金箔 × カタニ産業、クルツジャパン × 堀金箔粉のように、異なる箔材メーカー同士のコラボレーションも実現しています!

しかも、どこのメーカーの何という名前の箔を用いて製作されたのかは、表4 に箔押し加工をする色チップを見ればわかるようにデザインされています( 上に挙げた 表4部分 使用箔色 表記版の写真を参照 )

10種の紙は全て大和板紙株式会社のもの

色味の濃いものや淡い色味のもの、厚みも2種類あるなど多種多様


◎ 見つけた嬉しいサプライズ!
表紙10種の紙にはシルバーのインキで表紙製作の関連会社名などが印刷されています。そして、私が格別に嬉しかったのは、印刷で表現された「 表紙のヒミツ 」という項目内。 

『 本誌登場回数No.1 の箔押し会社コスモテック 』という文章が!!
表紙のコスモテックの社名 / ロゴチェンジング表現に続いて、この文章を見つけた時は、背筋が伸びる感じがしました。『 デザインのひきだし 』への加工は箔押しの匠 佐藤の時代から続くもので、コスモテックにとっても、私自身にとっても大変大切にしているお仕事のひとつです。今もこうして多様な箔押し加工の可能性に挑ませていただけることの責任と重圧、そして感謝の気持ちを改めて抱きました。

「 津田さん、本当にありがとうございます! 」

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紙は全10種類 紙はすべて大和板紙株式会社によるもの

表紙の紙色は淡いものから、鮮やかな赤、茶色・黒色など様々です。
同じ組み合わせの箔を押していても、紙色によって表紙の印象は大きく変化します。

ゆるチップより4色バリエーション、黒丸αF、アスカαF、インディゴブルーF、エースボールF、カッパーレッドF、エゾマツクラフト(こい茶) の全10種類の上に、箔材メーカー5社の合計20種の箔材の中から2色の箔をセレクトし、ツジカワ株式会社による腐食版・彫刻版を用いて、ガンガン箔押しをし、全1000パターンの『 デザインのひきだし46 』表紙をつくります。

そして、全1000パターンもつくるとなると、搬入された紙や箔の配置や管理の方法でも一工夫が必要です。実は全1000パターンの表紙を実現するには加工自体よりもこちらの方が非常に重要なポイントで、コスモテックの現場に表紙の紙がどんどん搬入されてきた時から勝負は始まりました。

本番に組み合わせを間違えず、加工し易いように、準備の段階から管理し、材料の配置などの工夫をしている
のです。

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表紙加工で使用!ツジカワ製、極上の版のすべて


こうして、ツジカワ製の「 版 」、箔材メーカー5社による「 箔 」20種、表紙の「 紙 」10種がすべてコスモテックの箔押しの現場に搬入されました。これで加工に必要な材料がすべて揃ったということです。

今回の表紙製作部数は14000部。
表紙は2色箔押しなので、28000回 箔押しをすべて手作業・手加工で1枚1枚箔押ししていきます。気の遠くなるような数量なのですが、前人未到の挑戦を前に「 必ず成し遂げてみせる! 」と心に強く思いました。

『 デザインのひきだし46 』の表紙は、まるで箔押し界隈のお祭りのような表紙なのです!

いざ、箔押し加工!

手差しの箔押し機の良さを最大限活かしつつ
限界点突破の未だかつてない箔押し加工を実現


箔の定着具合や紙と箔の組み合わせの確認のため、『 デザインのひきだし 』編集長の津田さんや 株式会社STUDIO PT. のアートディレクター / デザイナーの中澤耕平さん、そしてツジカワ株式会社の制作チームメンバーがコスモテックの現場へ箔押し加工の立ち会いに足を運んでくださいました。

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予測不能な紙 × 箔の組み合わせから生まれる、新しい発見と感動


いざ現場で、実際に箔押し加工をしてみた際、
「 イカの模様がもう少ししっかり見えるように 」
「 文字や絵柄がシャープに見えるように 」など… 押し具合いについてや、

「 白色の紙に透明系の箔はどのように見えるのか? 」
「 紙色から箔色にかけて全体を同系色でまとめると果たしてどう見えるか? 」などなど… 試してみたいことも どんどんアイデアが出てきました。

加工立ち会いのその場で皆さまからのご意見をうかがいながら、さまざまな組み合わせを瞬時に調整を加えながら加工しました。 

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2色箔(腐食版+彫刻版)を押すことで完成する豪華図案


渋いイメージのもの、可愛らしいイメージのもの、爽やかなイメージのもの、ギラッギラしたものなど、紙色と箔色の組み合わせを変えるごとに くるくるとイメージ違いの表紙が次々と目の前に現れ、現場では自然と歓声があがりました。

日頃箔押し加工に従事している私も、今までこれほどの広範囲の面積で、しかもこれだけ多くの紙や箔の種類を変えての箔押し加工を経験したことはありません。押すごとに変化する表紙を見て、たくさんの気づきや発見があり、ドキドキ・ワクワク感と共に、私の気持ちがより前のめりに変化していくのを肌で感じました。

「 必ず1000パターン、押しきるぞ! 押しきれるぞ! 」 と。
箔押し加工を進めながら「 箔押し表紙を1000パターンも並べたらきっと壮観だろうな 」とイメージを膨らませました。 実際は1000枚も並べて置くスペースがなく、一度に全ての組み合わせを目にすることは出来ないため、目の前にある表紙を頭の中で並べて想像してみました。

広い広い箔押しの野原のような景色です。

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紙や箔色が変わることで与える印象はまるで異なる!


皆さまが『 デザインのひきだし46 』を手に取る際には、ぜひ、気になる、そして好みの表紙を選んでいただき、版 × 紙 × 箔による繊細な箔押し表現はもちろん、さらには「 この紙色と箔色、自分では想像しない。けど、ありかも!? こんな使い方あったのか! 」という驚きや感動を実感していただけると、加工の現場冥利に尽きます。

津田さん、今回も多大なる挑戦の機会をあたえてくださり、加工のお手伝いをさせていただきまして、本当にありがとうございました!

「 全1000種類の表紙製作、加工。 なかなか味わうことのできない、おそらく この先も出会うことがないであろう貴重な体験でした! 」

たった一言から形づくられた

青木(コスモテック)より
『 デザインのひきだし 』編集長の津田さんと『 デザインのひきだし46 』の特集『 箔押し & 箔加工編 』の企画段階時、お声がけいただいた一回目のお打ち合わせ( この時は表紙の打ち合わせではない )の際、津田さんがおっしゃった「 以前コスモテックさんで製作いただいた私の50パターンの箔押し名刺の衝撃が忘れられない… 」という嬉しい一言。


この津田さんのたった一言から、一気に話がトントン拍子で進み、そして50パターンがいつの間にか20倍に膨らみ、今回の全1000パターンの表紙加工の仕様・デザインプランが どどん! と目の前に現れました。

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箔押し製版技術の結晶。 実物のインパクトはもの凄い!


・ 以前に津田さんの50パターンのお名刺を製作していなければ…
・ 出版流通に この驚異の仕様( 表紙1000パターン )の本の企画を通す『 デザインのひきだし 』編集長 津田さんの意気込みなくして…
・ 版製作会社、箔メーカー各社の多大なるご尽力、良い仕事なくして…

箔押し界隈の名だたる各社を巻き込んでの今回の表紙は、たくさんの繋がりやご縁、そしてお力添えなくして実現不可能な『 デザインのひきだし46 』表紙加工なのです。

スタートは津田さんとの何気ない普段の会話からなのかもしれませんが、『 面白い! 見てみたい! やってみよう! 』の好奇心と瞬発力、実行力に勝るものはないことを実感しました。

まさか本当に実現できてしまうとは、僕自身驚きです。

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表紙製作にご協力いただいた各社 / 者、皆さま、ご一緒させていただき、本当にありがとうございました。

- Special Thanks -(順不同)
ツジカワ株式会社    | 版作成
カタニ産業株式会社   | 箔材
クルツジャパン株式会社 | 箔材
村田金箔グループ    | 箔材
堀金箔粉株式会社    | 箔材
EP Print    | 箔材
大和板紙株式会社    | 紙

【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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