見出し画像

デリヘル嬢らしき女性が、待ちぼうけを食らっていた。


先日、ぼくの住むマンションで、デリヘル嬢らしき女性が待ちぼうけを食らっていた。

ちょうど、ぼくが近くのスーパーに買い物に出かけようと家を出た際に、同じ階の角部屋の前で、見知らぬ女性が立っていた。今までに見たことがないので、おそらくこのマンションの住人ではないとは思う。

その女性はどこか挙動不審で、エレベーターの前で待っているぼくと、一瞬、目が合ったのだが、軽く会釈を交わしただけで、「こんにちは」などの挨拶せず、ただ、その角部屋のドアの前で、居心地悪そうに突っ立ていた。

その部屋の住人は、20代中盤? くらいの男性が一人で住んでいたはずなので、そのときは、

「あ〜、たぶん、遠方に住んでいるお姉さんか誰かが、訪ねてきてて、部屋を片付けたいから、外で待たされているんだろう」

くらいに考えていたのだが、どう説明していいのか、その女性の挙動になんとも言えない違和感があり、ぼくがエレベータ−を待っている際にも、何度かその女性がインターホンを鳴らしていたのだが、部屋の住人は一向に出てくる気配がなく、女性もかなり居心地悪そうにしており、そのうち、ぼくの視界から逃げるように、そわそわとしながら、階段の踊り場のほうに消えていき、ぼくから見えないところで、どこかに電話をかけているようだった。

そうこうしているうちにエレベーターが到着し、ぼくはエレベーターに乗り込むと(その間1、2分?)、目的の買い物の用事を済ませるために、近所のスーパーまで足を伸ばした。

スーパーへ向かう道すがらも、なんとなく、先ほどの女性が気になってしまい、自分の住んでいるマンションの踊り場を、目視で確認してみると(駅を挟んだ向かいにスーパーがあるので、道中もマンションの全体像が確認できる)、まだ、その女性が階段の踊り場で待ちぼうけを食らっており、どうしていいのか判らないといった様子で、階段を踊り場で途方に暮れているのが見えた。

「さっきの電話の相手が、たとえ住人の男性だったとしても、部屋が片づけたいからって、ちょっと待たせすぎだよな? いや、そもそも実の姉であれば、前もって連絡をして来ているだろうし、その前に片付けとくのが礼儀でしょ? まさか彼女? いやいや、そもそも、そんな玉じゃない(完全な偏見)……。もしかして居留守? 待て待て、実の姉に居留守なんか使わんだろ? だったら何? サプライズ訪問とか……?」

などと、考え事をしながらスーパーへと向かっていたのだが、スーパーへ向かう道中も もう気になって気になって、自然とその女性を目で追っており、「どういうこと? いったいアレは誰だったわけ?」と、頭の中はクエスチョンマークであふれ、正直、買い物どころではなかった。

手早く買い物を済ませ、事の真相を確かめたくて、足早に自分の住んでるマンションへと踵を返し、帰宅している途中も、何度もマンションのほうをふり返り、無意識に女性の姿を探している自分がいた。

「あ、あれ? 居ない? え? どこに行ったの? ん? あー、なんだ。やっぱり、あそこの住人の男性の、お姉さんか何かだったのか……。あー、やっと部屋に入れて貰えたのね……、あー、はいはい……」

と、自分の中でこの一件を勝手な解釈で終わらせ、とにかく家路を急いだ。

(この間、数分)

マンション下に到着し、ぼくがオートロックのドアを開いた途端、さっきの女性がエレベーターからとつぜん姿を現した。

「は? まだ居ったんかい!!」

そう心の中でツッコミを入れ、エレベーターに乗り込もうと、その女性の横をすれ違った瞬間、〝ある物〟がすれ違い様に目に飛び込んできた。

「セ、セーラー服!?」

見間違いかと思い、その女性の抱えていた手提げ袋の中を、再度一瞥。

やはり、あれは、紛れもなくセーラー服!!

「ど、ど、どういうこと? お姉さんがセーラー服持参で、弟の家に行くか?」

一瞬、頭の中がパニックになる。

が、次の瞬間ひらめく……

「あーーーーーーーーーーー!! アレは、デリヘル嬢か!!!!!!!!!」

すべてを喩った瞬間、今まで結びつかなかった点と点が、一本の線で結ばれた。

「デリヘル嬢ね!! あーー、はいはい。デリヘル嬢なら納得だわ!!!」

そうスッキリとし、ぼくは帰宅したのだった。





ただ、一つだけ疑問が残る。


あとえ、あの女性が〝デリヘル嬢〟だったとして、


だったとしてだ……


なぜ、部屋に入れてもらえなかったのか? と……


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?