桜の終わり(短歌付)
桜色と鮮やかな葉色が目に入る。
今年もまた葉桜の季節へと移り、あのほのかに香る花びらは地上に帰った。
「また来年」「また来年」と言いながら。
「あぁ、散ってしまった」と寂しさを感じるかもしれないし、残念に思うかもしれない。
でも、散った彼らをしっかりと踏みしめ、生きた跡を確かに感じたい。
そこに悲しみは一つもないから。
顔を上に上げれば、彼らは青く強くそこにいる。ほのかになんて香らないし、見映えも他の木々と変わない。
普通にズンと立っていて、葉を揺らし再び一年を巡らせていく。
「さて来年、もう少しだけ香らせてみようか」「また来年、しっかり色づけてみようか」なんて考えずに、彼らはいつもそこにいて、毎日を毎時間を毎秒を地下から栄養をたっぷり取り込んでいる。
一年後に芽吹かせるため。
葉桜になった彼らの足元で「また来年」「あなたをちゃんと感じに来るから」と伝えて再び上を向く。
この一年をしっかりと確かに私を巡らせていくために。
でもなぜか、毎年違って見えるのは私の変化?彼らの成長?
きっとその答えは来年彼らに会ったとき、分かるような気がする。
今はただ、彼らの生きた跡をしっかり受け取り、この瞬間を噛みしめていたい。
【短歌】
さくら色 踏まれ大地に 戻る君 生命感を我は受け取り
©2024Tohko Tsuchi
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