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人生に折り合いをつけるということ #猫を棄てる感想文

父親の役割を知らない私


先日、私と長男がケンカをしたとき、妻は息子にこう諭したそうだ。

パパは5歳までしかお父さん(長男にとっては祖父)と過ごしていないのよ。だから父親の役割だって分からないんだよ。


その言葉に対して長男は「へぇ、そうなんだ」と納得したらしい。それなら無理ないかと思ったかどうかは知らないが、そんな会話をしたと妻から聞いた。

事の発端は兄弟ケンカ、あまりにも長男が次男をなじるので私が止めに入ったら長男の怒りの矛先が次男から私に向けられたのだ。

その後4時間以上、長男は妻に普段思っていること(愚痴)を語りつくしたようでスッキリしたそうだ。


そんな話を聞いた私の感想は長男と同じであった。

「へぇ、そうなんだ。なるほど、5歳までしか父親がいないからこうなってしまったのか」

幼少期から父親不在が私に及ぼした影響なんて、これまで考えたこともなかった。別に父親を恨んでもいないし、かといってもっと甘えれば良かったとも思っていない。父親の役割はその後同居することになった祖母(母方)の懸命に働く背中で学ばせてもらったし、母子家庭であってもしっかり育て上げる!という母の決意みたいなのを日々感じていた。だから愛情不足なんて思ったこともないけど、自分が勝手に父親役を演じて調子に乗っていたのかもしれない(今思えばの話だけど)。一方で妹は父親のことが大好きでおそらく私とはまったく逆の立場であると予想される。同じ景色でも感じ方・見え方は違うものだ。

すでに他界しているからか、父に対して何の感情もないのが正直なところ(文章にするととても冷酷だ)。こんなどこか冷めた態度が父親不在の影響なのかもしれない。この態度を私自身はただのマイペースで片づけているけど、案外根っこは深い過去が影響しているのかもしれない。


ルーツに向き合う


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妻は最近、自身のルーツについて言語化された本をよく読んでいる。幼少期の体験や記憶が大人になった自分にどう影響を及ぼすのかをよく語るようになった。発達障害である息子に向き合う前に自分の過去に向き合うことで育児のヒントになるのかもしれない。そんなルーツブームだからこそ私の父親不在の影響をさらっと語れたのだろう。


父親について語るとき


父親不在の影響なんてまったく考えてこなかった最中、こんな本の存在を知った。天国の父がたまには俺のことを思い出してくれよと神様にお願いしたのかもしれない。そんなわけで自然ななりゆきで本を購入した。

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もともと村上春樹の本は新刊が出れば、だいたい読んでいるのでちょうどいいタイミングでもあった。なにより今は自分が読み慣れている作家の文章を必要としている。

ちょうど100ページの小ぶりな量に1,220円は割高感があるが、同じタイミングでやってくれたラジオ放送とセットと考えればちょうど良い価格なのかもと思ってみたり。


本は村上春樹の父親の生い立ち、特にこの時代には避けて通れない戦争が描かれている。私にとって村上春樹作品で戦争が語られるといえば、「ねじまき鳥クロニクル」の間宮中尉。改めて読み返してみようかな。


ラジオでも村上春樹はリスナーからのお便りに対して、戦争をこう語っています。ラジオの声を文章にすると感じ方は違うと思います。語尾の「そうですよね?」に想像力を働かせてみてください。

コロナとの戦いは戦争のようなものだ、そういう言い方をする政治家がいます。でも僕はそういうたとえは正しくないと思う。ウイルスとの戦いは、善と悪、敵と味方の対立じゃなくて、ぼくらがどれだけ知恵を絞って、協力し合い、助け合い、それぞれをうまく保っていけるかという試練の場です。殺し合うための力の戦いではなく、生かし合うための知恵の戦いです。敵意や憎しみは、そこでは不要なものです。簡単に戦争にはたとえてほしくない。そうですよね?


印象に残った言葉たち


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私の本の読み方は心にひっかかった言葉を書き留める、厳密には該当ページを織り込んだり、写メを撮ったりして後々ブログにまとめる。言葉を脳のログに残してことで未来のヒントやエールになったりしてくれるのだ。

おそらく僕らはみんな、それぞれの世代の空気を吸い込み、その固有の重力を背負って生きていくしかないのだろう。そしてその枠組みの傾向の中で成長していくしかないのだろう。良い悪いではなく、それが自然の成りたちなのだ。ちょうど今の若い世代の人々が、親たちの世代の神経をこまめに苛立たせ続けているのと同じように。
我々は結局のところ、偶然がたまたま生んだひとつの事実を、唯一無二の事実とみなして生きているだけのことなのではあるまいか。

心が晴れず、ずっとモヤモヤしたことも自然ななりたちと一旦は折り合いをつけておくことが肝要なのかもしれない。村上春樹の言葉にはそんな説得力がある。それが文章を書くプロの仕事なのだろう。

この本のあとがきは2020年2月となっているから、コロナのような出来事を踏まえた物語ではないと思う。今はアフターコロナ、ウィズコロナにどうなっていくのか誰かの意見に縋りたくなるのも事実。でも誰だって答えはしらないし、それは自分なりに腹落ちさせていくしかないのだと思う。今こそ鵜呑みにしないことが必要なのかもしれません。


人生にプロフェッショナルがいるわけがない。


「誰だって初参加なんだ。人生にプロフェッショナルがいるわけがない。まあ、時に自分が人生のプロであるかのような知った顔をした奴もいるがね、とにかく実際には全員がアマチュアで、新人だ


これは村上春樹の作品ではなく、伊坂幸太郎のラッシュライフの中で出てくるセリフ。私自身、妻の話を聞いてゆくゆくは思ったのは、プロの父親ではないしなぁ、そもそも人生は皆アマチュアだというこの言葉だ。

父親だから、教師だから、先輩だからといって模範解答を示すのではなく、一緒に答えを考える、ときには一緒に間違えて「まぁそんなこともあるよな」と思いながら成長をしていけたらと思っている。

引き続き、子どもたちと一緒に「父親」を学べたらいいな。答えを知ったかぶりするような人生の先輩にはならないようにしたい、少なくとも。



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「人生の備忘録」を週1ペースくらいで書いてます、主にランしてるときに思いつく。読書録やセミナーまとめなどをnoteを通じてアイデアにしています。主にデジタルマーケ全般、企業SNSの立ち上げや運用が生業です。ときどき企業のnote執筆もしてます♪背景写真はフランス カンヌ🇫🇷

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