「長新太さんの洗礼」
絵本を寝る前に必ず読むのが鈴木家の習慣だ。
毎晩3冊くらいは子どもたちに読み聞かせをしてから寝る。
僕はその時間がとても好きだ。
娘が3歳になったとき、そろそろいいかなと長新太さんの「キャベツくん」「つきよ」の2冊を読み聞かせてみた。
長新太さんと言えばシュールで独特の世界が有名。
子どもの心をとらえた、まるで子どもが描いたような作品には驚かされる。
僕のあこがれの人だ。
その憧れの長さんの絵本の中でも
特に大好きな2冊だった。
「キャベツくん」にはブタヤマさんという登場人物がいる。(もうこの時点ですごいですよね。だれ?ブタヤマさんって(笑))ブタヤマさんは驚くと「ブキャ!」という。これが子どもにウケる。
保育士時代は読み聞かせるたびに大爆笑がおこったものだ。
寝る前には過激かな?と思ったが、読んでみた。
さあ、「ブキャ」のシーン。
「キャベツくんはいいました。こうなる!」
「ブキャ!」
子どもはシーンとだまったままだった。
1歳の子はまだわからないとしても
まったくといっていいほど笑わなかった。
あっ「ブキャ」の読み方か!
声色をつかって読んでみる。
「ブキャ!」
まったく反応がない。
まだこの世界は早かったかなあと。最後のページを読みながら思った。
「おしまい」といって、本を閉じた。
次の「つきよ」も読んだ。やっぱりあまりリアクションがない。
静かに読むのを見ていた。
そして、また「おしまい」といって絵本をとじ、枕元においたその瞬間。
突然飛び起き娘が言った。
「○○ちゃんはこうなる!」
そして、壁に顔をつけてへばりついた。
壁と顔の距離は1cmくらいしかない。
きたーーーー!!!
きたけど、なんだそりゃーーーー!
体は気をつけの姿勢。
背筋はピンと、まるで手入れの行き届いた杉の木みたいにまっすぐ伸びている。
「そして、こうなる!!」
角度をかえて違う壁にその姿勢のまま、またへばりついた!!
おかしい!!
おかしいよ!
どんな絵本の影響の受け方だよ!
それ1冊前の「キャベツくん」の方の内容だよ!
僕は大笑いした。
その夜、娘ははじめてこう言った。
「ブタヤマさんとねる」
本を横において嬉しそうに微笑みながら、ブタヤマさんをトントンしている。
素敵な時間だった。
やっぱり長新太さんはすごかった。
子どもの心をつかんではなさなかった。
一日の最高の終わり方だった。
しかし、その日はかなり寝かしつけに時間がかかり、先に寝たのは僕だったということは言うまでもあるまい。
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