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編集者とふりがな

自分の仕事の中で嫌いな作業トップ3の中に「ルビ振り」がある。
「ルビ=ふりがな」を本文に指定する作業だ。

ふりがなの入れ方として
①先生が前もって入れてくれている
②原稿(主にWordの段階で、編集者が入れる)
③ゲラになった時点で入れたい文字に、赤字を入れる
がある。

①の場合、ありがたいのだが難点は……
・ルビのルールが定まっていないときがある
⇒基本、初出(最初にその文字が出たときに入れる)のだが、初出スルーで2番目、3番目の文字に振られてあったり、何度も同じ文字に振られてあったりするとそろえるのが面倒だ。
・そもそものルールが定まっていない
⇒1冊を通して初出にだけ振るのか? 章ごとの初出で振るのか? はたまた見開きごとに振るのか?(←マンガ『キングダム』は、そうですよね。内容よりも「編集者さん、大変だろうな……」という気持ちで読んでしまう)。
どれなんだい!?

本来は②が一番やりやすい。ただ、Wordのルビ機能(勝手にルビを振ってくれる)は、使わない方がいい。DTPさん(文字をゲラ状態にしてくれる人)が、文字を抜き出すのが大変だからだ。あと、一文字に対してルビを振るので、それを抜き出してもらうのは大変だろう。
例えば、第14代内閣総理大臣「西園寺公望」をルビ機能にかけてしまうと
さい
おん

きん
もち
と5つに分かれたパーツを組み合わせなければならない。
あと、おバカさんなWordの場合、
にし
ぞの
てら
こう
ぼう
とかにしそうで、直す方が面倒くさい。
なので私は、西園寺公望(ル:さいおんじきんもち)と原稿にベタ打ちして、マーカーで目立つようにしておく。

一番地獄は③だ。
普通は、常用漢字外や難読漢字にだけ振ろうと思うのだが、歴史ものや学術書、古典ものなどを担当してしまった日にはもう地獄。本当に地獄(何度も言います)。

そして現在、歴史もの、古典ものを担当している私は、まさに地獄。②の段階で出来るだけつぶしたつもりだったが、ゲラにした後に気付いてしまう、ふりがなが山ほどある。

世界史ものは、中国史ゾーンに突入するととんでもないことになる。
咸陽(かんよう)とか、『キングダム』にいっぱい出てくるから読めるよね?? と思いつつ、ここが読めないせいで文章に引っかかってほしくないので入れる……。
楊貴妃くらい読めるよね? ってか、読めるからこの本に興味を持ってくださったんですよね?
など、葛藤しながら結局微妙なラインの「ようきひ」「けんりゅうてい」「あいしんかくら ふぎ」などと入れていくのだ。
以前書いたように、私は字が汚い……。
なのでこの作業は、激しくストレスを感じる。

人物名は基本、初出に振ろうと思うのだが「鈴木一郎」とか、もう「すずきいちろう」以外読まなくね?? と悩みつつ入れてみる。違和感を感じて消す……を何度も繰り返したり、「徳川家康」読めないのはヤバいレベル。だけど、学術書だから入れなきゃと「とくがわいえやす」と、人生でそう書きはしないだろうひらがなを書く。

章ごとの初出ルールを作ってしまうと、どの文字にルビを入れるルールにしたかわからなくなってしまうので、入れながらExcelで表を作る。
あとでこれを、プロ校正さんに渡して、正誤チェックをしてもらう。
先日、人物名が山ほど出てくる本を作ったら、500人くらいいて白目をむいた。

ほかにも、ルビは厄介だ。
グループルビ指定とか……。
「五月雨(さみだれ)」などは、「さ・み・だれ」とかではないわけです。そうするとルビをグループ「さみだれ」にして文字に均等に配置をするのです。
一文字に対して3文字以上のルビとか……。
紫式部とか「紫」に対して「むらさき」と4文字入れないといけない。
あと、「平将門」とか「源頼朝」とか「藤原道長」の「の」って何なん??? 入らないんですけど!

あと、あれな。
児童書の総ルビ(全部の漢字にふりがな振る本)は、本当につらい。
でも、幼稚園生も読んでくれる本になるのだから、がんばらなくては……なのだ。

で、何が言いたいのかというと、『キングダム』って本当にすごいと思うのです。
作者が凄いのはもちろんわかるのですが、見開きごとに難読の人物名や地名にルビを振ってくれてるの本当にスゴイ!!!!
おかげで嬴政も羌瘣も蒙恬も読めますよ!


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