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続・ノリスケを笑えない。〆切を守ってもらえない編集者の気持ち。

「〆切を守ってくれない著者さんがいる」という記事を書いた2021年9月、ちょうど上半期終盤、また来年もやってくる2022年3月の年度末に焦りを感じ、「ギィィヤァァァ!」と、noteに心の乱れを書きなぐった。

あれから3か月。
1年と2か月待たされていた原稿は、1年と5か月待たされている原稿になっている。

私もおとなしく待っているわけではなく、かなりギリギリの言葉とテンションで、じわりじわりと先生を追い詰めている。
はぐれメタルが目の前に現れて、逃げられないように少しずつ少しずつ攻めていく感じ。
先生に「そんなひどいこと言うなら、もうこの仕事はやめる!」と言われるかもしれないという覚悟で、言葉を伝える。

先生はそういうとき、ものすごいスピードで返事をくれる。
相変わらず、具体的な日程を提示し、最近は
「最低です、自分」(倒置法)
「人間失格です」(太宰オマージュ)
「必ず、この仕事をやりきって、ほかにも迷惑をかけている他社さんの仕事もやり遂げます」(え⁉ 私には関係ない…)
という、自責の念や決意表明が添えられている。

そして相変わらず、原稿は来ない。
そのときに添えられる言い訳は、グレードアップしていて
「体調を崩してしまい…」(10回目)
「他社に缶詰めにされていて…」(え⁉ 私には関係ない…再び)
「すみません、PC広げて座ったまま寝てしまい、朝になってしまいました」(ついにそこまで、ぶっちゃける仲に⁉)
という状態。

この状態を隣の部署の後輩に伝えると、
「それはもう、今期もあきらめて、早めに出せる本を先に出したほうが、健全です!」と言われた。

「確かに!!」

私は、意を決して先生にメールを打った。
「もう待つことはできません。私は、いつでも著者さんと笑ってお仕事をしたいのに、今それができなくなりそうです。先生にもこれ以上、嫌な言葉を伝えたくありません。ただ、この本は絶対に出したいのです。だから先生、毎週月曜日の午前中に必ず一節ずつ私に送ってください。
その原稿が、遅れても私からはもう何も言いません。いかがでしょう?」
これは、作戦でもなんでもなく、本当にそう思って、失礼を承知でぶつけた言葉だ。

先生からの返事は「今度こそ、この約束を守ります」だった。

あれから、1か月とちょっと…。
昨日6回目の月曜日をむかえ、原稿は3本届いている。
5割という微妙な打率(いや、打率でいうとよく聞こえてしまう)。

ちなみに月曜日の午前中に「すみません、夕方には必ずや!」というメールは10割の打率で送られてくる。
「先生、このペースでお詫びメールを集めたら、また本1冊分になってしまいそうですよ…」と思いながら、私はもう待ち続けると決めた。

先日、久しぶりにご本人に会ったとき、申し訳なさそうに、「本当にごめんなさい。必ず原稿は仕上げるから」と言いながら箱入りの高級チョコレートをくれた。
ちなみに私は、あまり高級チョコレートが好きではない…。
meijiの板チョコが好きだ。

今年の月曜日もあと2回。
先生、あと1本は打っておきたいですっ!!!

≪余談≫
前回のノリスケの記事(自分の中でそう呼んでいる…)が、賞をいただいた。

たくさんの方に見ていただいて、なんだか、申し訳ないやら、ありがたいやら、「スキ」をしてくださった皆様に御礼申し上げます。
賞をもらえるって、いくつになってもうれしいものですね。

Amazonギフト券もいただいたので、これで
『〆切本2』を買って、先生の原稿が全部揃ったら1巻と一緒にまとめ読みをしようと思います。

つづく。

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