【短編小説】 タコスとマッキー。
視野が狭いといつも僕は怒られる。
1点だけに絞り過ぎた資料を作ってしまうクセが僕にはあるらしい。
性格なので仕方ない。
それなのに、明日は現況を俯瞰した資料を作ってプレゼンしろとマネージャーから言われた。
これが一番良いってプレゼンなんだから、良いじゃんと思うのだが・・
同じチームのPくんは、時々、凄い寝ぐせを作る。
きょうは右耳の横に、マジックのマッキーが突き刺さっているようだ。
天気が良いから、気分転換で昼ご飯を公園で食べることにした。
Pくんはマッキーを刺したまま、僕について来た。
道行く人がクスクス笑っているが、Pくんは気にしない。
公園に止まっているキッチンカーで、コーラとタコスを買った。
Pくんもタコスとミルクを買った。
空いているベンチに腰掛けたら、Pくんも隣に座った。
左に座られたので、否が応でもマッキーが視界に入ってくる。
「明日のプレゼン、どうするかなぁ」
「見て来れば?」
「??」
謎のアドバイスの後、Pくんは黙ってモグモグ食べている。
パタパタ~っと一羽のスズメがマッキーに止まった。
止まれる強度なの??
Pくんがトルティーヤをちぎって丸めて、スズメにあげた。
スズメがパクっとくわえてコクっと飲み込んだ。
「おお??」
僕は驚いてクチがひょっとこみたいになった。
Pくんがちぎって丸めたトルティーヤを僕のひょっとこ口にも放り込んだ。
気づいたら、僕はマッキーに止まっていた。
Pくんの隣には、両頬に丸い斑のある僕が座っている。
「ちょっと交代ね。こんな感じなんだぁ~♪」
「スズメ」の僕が、スズメの「僕」をニコニコ見ている。
嬉しそうに「僕」のタコスを食べ始めた。
Pくんは黙々と食べ続けている。
僕はおっかなびっくりでマッキーから飛んでみた。
なるほど、悪くない眺めだね。
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