【読書】 日常なんて砂上の楼閣。 ~ 軀 KARADA 乃南アサ ~
コンプレックスは誰でもひとつはあると思います。
自分は身長に対して平均的な体重ですが、もう少し痩せてスラっとしたいと思っています。
視力も良くなりたいし、歯も治療痕の無い綺麗な歯になりたいし、白髪も無くなって黒い髪に戻りたいし、喘息も無くなって欲しい。
これらはもはや無いモノねだりの範疇で、努力のしようが無いと理解しています。
体重は努力出来るところを手抜きしている感が拭えませんが。
・・・ここは頑張ります(小声)
今回読んだ「軀 KARADA」は、そのまま体にまつわる執着が止められなくなる人たちの短編集です。
身長が低い人がいらしたとして、その人がシークレットブーツ的なアイテムでそのコンプレックスを解消出来るレベルなら、ひょっとしたらさほど強いコンプレックスでは無いかもしれません。ファッションアイテムとしての要素も加わるなら、健康的な感じすらします。
でも足の骨を切断して、その骨と骨の間に他の部位や人工的な何かを継ぎ足すような大改造的手術をしてまで身長を伸ばそうとする。
「失敗して歩行不可となっても文句は言わない」といった誓約書にサインするレベルだとすると、自分はコンプレックスでは無くて「何が何でも背を伸ばさなくてはいけない執着」と思います。
身体的に問題があっての手術ではなく「健康体に必要としない」ことが条件とされることが大前提の執着。
本書は、身体の部位に執着する5つのお話です。
臍・血流・つむじ・尻・顎
パっと字面で並んでいると、どんな執着が思い浮かびますか?
自分は具体的に思い浮かんだのは「尻」
ズバリ、上記に書いた「痩せたい」からの連想。
「顎」にも若干要素はありますが、「痩せたい」と強く思う部位として「尻」はピーンと来ました。
みなさんは5つの内で個人的にでも「ピーン」と来るものはありますか?
5つの物語は、それぞれの小さなきっかけから、思いがけない執着に飲み込まれていく人々が描かれています。
それこそ冒頭の「身長を高くするための手術」レベルから、自業自得的なものまで様々。
「顎」は他の4つのお話とはテイストが少し異なりますが、形が違ったとしても「執着してしまうこと」に境遇が似通ったことのある方にはズーンと重いお話かと思います。
お金でどうにか「出来てしまうこと」。
「ふとしたきっかけ」が深みに嵌ること。
「優越感と打算のバランス」が崩れる瞬間。
自分でコントロール出来る「過剰」。
境遇による不幸と、本当に欲しかったものがわかった時の「手遅れ感」。
(「顎」以外)ある瞬間から平穏が崩れていく様を対岸からじっくり見せて頂いた気分でした。
1999年に出版されていますが、もっと前からも、これからもきっと変わることの無い考え方の話だと思います。
きっとみんな黙っているだけで、似ていることはあるんだろうな。。
と、敢えて他人事風に書いてみて・・。
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