自信、欲望、復讐。理不尽は正しい。 ~ BASARAO バサラオ ~
チケットサイトの案内で、古田新太さんご出演はいつもチェックしています。
大概チケット争奪戦になるのですが、今回は劇団☆新感線の周年記念と主演する生田斗真さんの誕生記念公演となっていたそうで、激戦。
取りたかった席は外れてしまいましたが、チケットはどうにかゲット。
残念ながら舞台左サイドが見切れてしまう席で、そこは設置されていたモニターでの鑑賞となりました。
仕事を頑張ってやっつけて、明治座へ出掛けました。
ここからはネタバレを含む感想になります。
これから観劇予定の方は後日お読み頂けましたら幸いです!
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幕府と帝が争う混乱の島国「ヒノモト」が舞台となります。
幕府の密偵をしていたカイリこと中村倫也さんは仕事を辞めたいと、ヒノモトを牛耳る鎌倉の執権・キタタカこと粟根まことさんへ申し出ますが、島流しに遭っている帝のゴノミカドこと古田新太さんへ寝返ったと勘繰られ危うく切り殺されそうなところ、強烈な匂い袋をふりまいて命からがら逃げ出します。
そんな中村さんの前に、一年中咲いているため「狂い桜」と呼ばれる桜の下で、絶世の美貌を持つヒュウガこと生田斗真さんが宴を開いていました。
実は中村さんと生田さんは同じ村の出であり、当時から美し過ぎる生田さんは他の男たちからいじめられ、唯一手出しをせずに遠くから見ていたのは中村さんだけでした。
その村は火事が元で焼け落ちており、いまは存在していません。
宴に参加している女たちは生田さんの美貌に惹かれ家を出て来ているため、陳情を受けた幕府の役人たちが女たちを連れ戻すため生田さんの元にやって来ます。
ところが女たちは生田さんを守るため嬉々として命をかけて役人と対峙し、二人の女がその場に散り、役人たちは這う這うの体で逃げ帰ります。
散った女を弔うことなく放置する生田さんは、その血が桜の栄養になり、自分のために死ねたことで女たちは喜んでいるだろうと言い放ちます。
自分の邪魔をする幕府はこの美貌を武器に打ち倒すと言い放つ生田さんに、中村さんも幕府から邪険に扱われた身。
密偵として動いていた自分は役に立つ、参謀になってやろう!と手を結びます。
逃げ帰った役人の報告を聞き、女大名のサキドことりょうさんが粟野さんへ生田さんの成敗を申し出ます。
しばらくの後、生田さんに遭遇したりょうさんは切りかかるのですが、生田さんの美貌に一瞬で魅了され隙を見せてしまい濃厚なキッスを受け腰砕けに。
そんなりょうさんへ「古田さんの首を取って来る」と二人は告げ、それならば・・とりょうさんは二人を一時開放することにします。
成り行き上、倒幕から帝の古田さんの首を取ることにシフトチェンジと相成った二人。
まずは、京の都から離島にいる古田さんへ会いに向かいます。
古田さんの側近のヌイこと山本カナコさんを生田さんはあっさり魅惑のキッスで落とし、古田さんに会えるように取り次いで貰います。
接見するや否やで二人は古田さんに襲い掛かりますが、そんな二人に古田さんの守護役・戦女のアキノこと西野七瀬さんの弓矢が襲い掛かります。
二人はシレっと襲ったことを棚上げし、倒幕も視野にある生田さんは、古田さんにもう一度その御印となるべく説得しますが、古田さんは「今夜のごはんはレンコンの挟み焼」と聞いただけでヒャッホー状態の腑抜けとなっており、全く興味を示しません。
そんな古田さんへ生田さんは美貌のキッス、そして古田さんは何故かフォーリン。
話はまとまり、いざ鎌倉!!
反幕府で帝に忠臣を誓うクスマこと村木よし子さん率いる山賊一派を巻き込み、まずは京の都を制圧。
古田さんは徐々に本来の冷酷さを取り戻し、美貌の生田さんは後に危険な存在になると見抜き、抹殺しようとしますが失敗。
生田さんは村木さんが匿っていた古田さんの嫡子である何の威厳も無いダサさの象徴みたいなタダノミヤことインディ高橋さんを担ぎ、鎌倉の粟野さんを倒幕した後に鎌倉の帝として立てます。
東と西にそれぞれの帝が出現し、どちらがヒノモトを手中に治めるか、決戦の火蓋が切られます!!
ここまで壮大で殺伐としたストーリーになってしまった理由。
それは中村さんと生田さんの育った村にあり、淡い恋心と復讐がきっかけだったのでした。
騙し騙され、転がし転がされ、口八丁手八丁の目まぐるしさ。
それはそれは、バッサバッサと人が切り殺され首が飛び交いますが、物凄いスピード感に悲哀を感じてるヒマはありません。
楽しく歌って踊っての文字通りの宴、そして政治の宴、殺戮の宴。
狐と狸の化かし合いの如く、オセロの白黒がどんどんめくれるような、敵と味方が目まぐるしく入れ替わる展開。
血生臭い欲望にまみれた展開は、それぞれの個性そして煌びやかな衣装、狂い桜の華やかさで覆ってしまうようでした。
生田さん演じる美貌のヒュウガによる、悪い意味での無邪気な「ヒノモトを美貌と宴で覆いつくす」という野望に、他の登場人物が飲み込まれていく様が怖くもあり、有無を言わさない圧倒的な力にも感じました。
ただひとり飲み込まれない人物にある揺るぎない思いが、そんなヒュウガに唯一、対峙するのですが、どちらが真の勝者なのか、正しいのかは誰にも分らないのかもしれません。
「個人」の思想は「他者」に真には理解されない。
思いやる気持ちのある人物は、その気持ちのために次々と淘汰される世界。
随所随所ブラックジョークで笑いましたが、ラストシーンは今の世界で起こっている様々な事象に対する答えなのかな、と思いました。
野望、欲望は留まることが出来るのか?
善人も悪人もどんな場面でも関係無く、出来ることなのか。
先日観た舞台も毒まみれの辛辣なストーリーでした。
「バサラオ」は文字を入れ替えると、意味のある言葉が顔を見せることに気付きました。
それが偶然なのか分かりませんが、色々な事象に対する答えなのかもしれません。
ストーリー展開の目まぐるしさに翻弄されますが、演者さんの熱気、舞台衣装や装置が目に楽しいです。
当日券が出ていたら、ぜひ足を運んでみて下さい!
モヤっとしつつ、疾走感に案外スッキリもします(笑)