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(答え合わせ)7月FOMC展望

 7月28日米国東部時間午後2時(日本時間29日午前3時)、FOMCの声明文が公表されました。

「FOMCって何?」と関心のある読者の方は昨晩の記事をご覧ください。

 さて、昨晩の予想は当たっていたでしょうか。答え合わせです。

 ダウンロードは不便という読者のために、以下、テキストも貼り付けます。PDFでは、ポイントを赤字で示しているほか、昨晩の予想記事も再掲していますので、便利です。

 予想どおり「インフレが一時的でないリスク」がこれまで以上に強調されるようになった(「リスクは真剣にとらえる必要がある」)が、声明文の変更には踏み込まないなど、当方の予想と比べるとdovish寄りだった。なお、当方が予想した声明文の変更文案は、記者会見での冒頭説明では使われており、声明文では「もし委員会の目標の実現を阻害しかねないリスクが表れれば」を維持し、口頭では「インフレのパスや長期的なインフレ期待が我々の目標と整合的な水準を大きくかつ継続的に超えて動いている兆候がみられる場合には」を使うというやや興味深い使い分けが行われている。

 なお、29日付けのWall Street Journalは、「FRBは今年のCPIの急上昇を予測できず、過小評価を続けてきた。FRBは予測を見誤っても責任を取ろうとしない。パウエル氏率いるFRBが、その中心的な使命である物価水準に対する責任さえも認めないのであれば、そろそろ責任を負う気のあるFRB議長が必要なのかもしれない」とかなり手厳しい社説を掲載しています。政府の急増する債務負担を軽くするため、さらなるインフレをひそかに望んでいるのではないかとまで書いています。

 テーパリングについては、予想どおり「やり方の計画」に踏み込んだが、実施時期については、「(条件を満たしたか)今後複数会合で評価する」としたことで、事実上「11月決定、12月開始」か「12月決定、来年初開始」のどちらかに絞られた。なお、開始前にwell in advanceにアナウンスするという点は「すでにその過程にある(=アナウンスしている)」と記者会見で明確にされた(「決定」を「開始」のwell in advanceに行う必要はなく、アナウンスはすでに開始されていることから、「決定」は「開始」の直前の会合でもよいことになった)。また、当方が予想していたMBSの削減を前倒しで実施する点は、FOMC内でもかなり議論されたようだが、議長自身は「米国債とMBSの購入は金融情勢に同じように影響していると考えている」としており、(MBS前倒しには)否定的なスタンスを明確にしている(議論は継続)。

 実体経済面では、当方のノートでも指摘したサービス業の人手不足の深刻化、雇用のミスマッチ拡大、雇用特例給付が就業を阻害している可能性などを従来以上に指摘するようになっている。これまでの雇用者数の増加ペースが思ったほど伸びていないのは、「働きたいのに働けない」状況が理由とは必ずしもいえない点について理解が進んでいる。

 常設のレポファシリティ(SRF)は予想どおり今回の会合で決定された(焦点の対象先については「当初はプライマリー・ディーラー、その後銀行への拡大を検討する」と折衷案に落ち着いた)。この点に着目したコメントはあまり聞かれないが、テーパリングによって生じる思わぬ事態(短期金利の上昇圧力など)に対応する意味で、テーパリングを実施するための重要な環境整備である。

 テーパリングの「やり方の計画」のアナウンスが着実に進み、テーパリングの実施時期についても絞られてきたことで、ジャクソンホールの焦点は、労働市場の改善ペースの評価や「インフレが一時的でないリスク」への評価が中心になる。テーパリングについては、あとは削減のペース(削減の期間)が焦点になる。

 今回のややdovish寄りの決定をみて、長期金利は1.2%台前半に若干低下した。8月以降はノートにも書いたように1.4~1.8%をレンジに戻ることを予想するが、市場の「いいとこどり」のセンチメントはもうしばらく続くかもしれない。

(予想どおりだった点)
・ 「一時的でないリスクにも注意を払っていますよ」というメッセージの明確化(「リスクは真剣にとらえる必要がある」)
・ テーパリングのやり方についてはその「計画」が7月会合でかなり明確になった
・ 常設レポファシリティの決定(テーパリングの環境整備として重要)

(予想が外れた点)
・ 政策スタンスの変更(政策調整)の条件に関する声明文の変更はなかった(ただ、記者会見の冒頭説明では声明文の文言ではなく予想した文言が使われている)
・ テーパリングの開始時期は予想比若干後ろ倒し(当方予想通り12月開始(11月決定)の可能性もあるが、「12月決定、来年初開始」の可能性も残った)
・ テーパリングでMBSの前倒し削減は行わない方向(議論は継続)

以上です。お疲れ様でした。

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