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確かに届けばそれでいい 暗いからとても明るい

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最近の記事

気まぐれな天使

商業施設のテラスで昔の歌手の記事を読んでいたら近くで歩幅の小さい足音が止まった気がして顔を上げると4歳くらいの男の子が立っていた 愛らしいその姿に顔が自然に緩む。それが合図になったのか「へへ」とも「きゃっきゃ」とも違う、太陽のように明るい声と共に私の腕に飛びかかり、楽しそうに私のかけていたサングラスに手を伸ばした。 絶対に支えてくれると飛び込んだ迷いのない重みに、不意の私はバランスを崩して片手に持っていたコーヒーを落としそうになり、刹那 気を取られた。コーヒーをしっかりと

    • 時折の感情

      財布を拾ったので近所の交番に行くとそこにはハツラツとした警察官の方が居た。 書いてほしい書類があるというので住所を書いていると、「最近越してきたんですね、このあたりで気になることはありませんか?」と聞かれ最近あったぼんやりとした事を話した。 "犬を連れた老人がマンションの敷地のところに止まっていた(止まるには不自然な場所)。入っていく私を見ているようで、雰囲気が妙だったので警戒して自宅階まであがった通路から目をやるとこちらを見上げていた"という話をした。 すると「そのおじ

      • スターバックス発作

        少し混み合う日曜日のカフェの列で私は呼吸がわからなくなっていた。ここに辿り着くまで無意識に続けてきた呼吸が出来なくなる。 列を離れようか、順番は次なのに離れたら店員さんや後ろに並ぶ人は不審に思うだろうか、そしたら今日はここでコーヒーを飲むことは叶わなくなるな、でも苦しい、そんなことを考えているうちにどんどんと心の余裕はなくなり目の前がゆらゆらと霞む。 選択に迫られ、決断できずにいると順番がきた。 よしスターバックスでの対応には慣れている、どうすれば接客を早く終らせてもらえる

        • 曇りの夜に月を

          きょうも 話せることは何も起きなかったのに 何かを聞いてほしくて苦しくなったことはある? 消化するだけの日々に 些細なことで笑っていた 自分がいなくなってしまったみたいで 怖くなったことはある? これを読んでくれた人が頷いてくれたら わたしたち、ひとりじゃないね。

        気まぐれな天使

          器用な人には矢を

          私のできることが 誰かのプレッシャーになるのなら 器用さは誰のためなんだ 私ができることで できない人が 「わたしたちを見下している」と 指を刺している 狙って刺された矢が痛い 刺される前に刺すという理由が正当なら 傷つけるつもりなんてなかった ただ持っていただけのこれは むしろ攻撃される標的で 私のためですらならない。

          器用な人には矢を

          カラスの意志

          ひとりでいれば安全だって思っていた。 そう思ってじっと息を潜めていても、どこからともなくやってくる。人の想いから波紋は起こる、それはもう決められたことみたいに。 つながり続ける、私と私以外のわたしにも、同じように。 縁だなんて言葉で浮かぶ細い糸ではなく、空を飛ぶ鳥の乗る春のあたたかく、うなる気流のようなもの。 一瞬だけ目に映ったあの日のカラスのように身を任せ空を切る、その優しく勇壮な風は見えなくとも連綿と続いていく、慄くことはない。

          カラスの意志

          未来からみた今は過去だという

          必ず別れが来るとわかっているのなら 言っておきたかった美しい言葉は ためらう必要なんてなかった。 わたしはなぜ隠してしまっていたのだろう。 わたしの半端なプライドと自意識が 出ようとした言葉を遮って 汚れた両手で押さえて飲み込んだ。 居なくなった時に最初で最後 その人が形を完成させて、命の全てを現した。 歩んだ人生はあれやこれやを飲み込んで 様々な思いも解決してないことも おーるおっけー、簡潔に。 ひとりの命を手にのるサイズに収めてしまった。 手のひらの命は外界への発信を止

          未来からみた今は過去だという

          優しくないと感じる日

          気持ちよく晴れた日が明るく感じられないのは 空のせいじゃなくてどうにかする術もなく私の心が塞いでいるから。 群青色の景色でどこへ向かうのか知らない川の横を歩いている。源流には名もなくただ、流れていく。 曇った目の端にうつる人たちには人ではなく、過ぎ去る、それでもなお私は2つの目のついた命に怯えている。 私が優しい心でいようと努めても私ではない誰かは私を傷つけることができる、私があなたにそうできるように。 私は優しくないのだと苦しんでいるみたいに装っては、誰かの優しさに

          優しくないと感じる日

          朝 まだ頭が働いていない夢と現実の境界線 心は熱いブルー 今日は寒い日だって ふわふわ心地よい布団の重さを感じる Spoon me

          朝 まだ頭が働いていない夢と現実の境界線 心は熱いブルー 今日は寒い日だって ふわふわ心地よい布団の重さを感じる Spoon me

          いまいる場所を疑う

          見知った街を離れて気づいたこと 片手で数えきれないほどあった。 いつもいたそこから 知らずに受けていたダメージがあった。 後ろを振り返るとよくもまあ こんな環境で耐えてきたね、 こんな場所にいたんだもんそりゃ大変だったよ なんて誰かの話みたいに過去にいる自分に 眼差しを贈る。

          いまいる場所を疑う

          この世の色は

          急にこの世の全てが色をなくす時 過ぎゆくはずの時間はすべての生き物から離され 永遠かのようなフリをする その振りにまんまと騙される私は 空虚な永遠に 命を軽く見積もる まだ知らないいつかの日には こんなことを考えていたこと日のこともすっかり忘れて 初めて落ち込んだかのように悲観し また立ち上がって忘れていくのだろう

          この世の色は

          なみだの今日と、明日の心配

          道ですれ違う顔、置かれたもの、書かれたもの、話し声、干してある洗濯物、線路の石、ガラス窓に反射した景色 全てが情報として入ってきて 流れていってくれなくて辛くなる。美しいものだけ吸収していらないものはポイッとできたら。 いまあなたの頭を支配するそのことによって涙を流したことがあるなら、 軽視されない悲しみだって胸を張ってちょうだい、 誰かと比べて私はまだマシだなんて考えないで。これは涙を落としたいまの私からのお願い。 でも濡れた顔を洗って すっかり落ちてしまった化粧水を

          なみだの今日と、明日の心配

          夏の尻尾

          私の歩みと枯葉並行する まだ生ぬるい風にこの間過ぎ去っていった夏と 似た戸惑いを感じている 空はずいぶん遠くなっても、帯のような余韻 夏の尻尾はいつまでも残りつづける 白から細く透明に変わりながら まだ未練を感じる

          夏の尻尾

          現状が変わらなくみえても

          私はきっと漠然とした"みんな"より少し物事の音量が大きく聞こえている、それに気がついたのはここ数年で 学生時代は自分が何に苦しめられているのか分からなかったし、感じられても感情が先走り言語にすることも容易くはなかった。そのせいで苦労させてしまった人も多くて あの頃そうするしかすべがなかった自分の言動にうわぁぁとジタバタしたくなる。でもよくぞ越えてここまできたなと自分自身に賞賛を贈りたくなる。 無音のイヤホンやヘッドホン越しに聞こえる話し声や音が私には丁度良い。 同じ空間に

          現状が変わらなくみえても

          アル中の父、子どもの私

          幼少期の記憶 アルコール中毒の父 21時半~6時のどこかで帰ってくる恐怖 覚えている景色 長細い家 寝る準備を済ませてリビングの電気を消した 玄関側にあるキッチンの小さな照明 暗がりの一番端っこからみた長細の家 玄関一個隔てたガラスドア 何度目だろう、古い玄関ドアのぎいぎいいう音恐怖のはじまり 心臓がドンと打つ 布団に逃げた 寝たふりをした、ちいさいからだをもっとちいさくして 制御を忘れたしゃがれ声 優しい母の苛立つ声、つられて大きくなった怒鳴り声 ああ また … … どれく

          アル中の父、子どもの私

          歳をとると冒険しなくなるということを身をもって知った

          近頃 新しい作品に手を出すのが億劫で同じ作品ばかり繰り返し観てしまう。 疲れたくないからもう知っているものを観るというまあ単純なものだけど、まだ出会っていない大好きになれるはずの作品がどこかに必ずあるのだと思うと同じものばかり見ているこの時間の消費は、正しいのかと怖くなる。 好きな作品はいつも一定の幸せと安らぎをくれるけど、それは分かりやすい妥協の産物で幸せのマックスではないし刺激もない、でも疲れたくない、そんなループ でも現代人に入ってくる1日の情報量は、江戸時代の1

          歳をとると冒険しなくなるということを身をもって知った