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お宅のお子さんは、まだ指を使って計算してますよ!!

大学を卒業してから数年経って、家庭教師をしていた25歳の時、近くの町の集会所を借りて子供向けの教室を開くことにした。
1回数百円という安い料金で、小さい子供向けに勉強を教えたいと、具体的にプレゼンテーションした。すると、



「よしいいだろう! 貸してあげるよ!」と、管理人のおじさんからすんなりOKがもらえた。

月に数千円程度で集会所を貸してくれるとのことだった。

団地が近くにあったため、低価格で勉強を学べる家庭向けの教室の必要性があると考えた。

小学生向けの英会話、国語、算数の無料体験をまず行うことにした。

かなり申し込みがあり、無料体験後も続けたいと言ってもらえた。

その中に、まりのちゃんという、小柄で人見知りの小学1年生のおんなのこがいた。

まりのちゃんは、お母さんと一緒にきており、お母さんの後ろから、ちょこっとだけ顔を出して私を見ていた。

「こんにちは…」っと、驚かせないように小さめに声をかけた。

まりのちゃんは、恥ずかしそうに、わたしよりもっと小さな声で、

「こんにちは…」っと言った。

椅子に腰掛けてもらい面談をすると、勉強が苦手で、学校から帰ってきてもなかなか宿題をせず、いつもお母さんが困っているということだった。

先日、小学校の先生との面談で、

「お宅のお子さんは、まだ指を使って計算してますよ!! 今後は使わないように、お母さんからも注意してくださいね!」

と、言われたそうだ。

こんな相談を受けたのは、初めてだった。

そして、驚きと同時に悲しくなった。

私は十人十色という言葉が好きだ。

小さな子供を見ていると、日本の教育の中で狭い枠にはめ込まれ、大人になるにつれて個性を失っていくのが悲しくてたまらない。

どこを切ってもおなじ、金太郎飴になってしまう。

私は、海外に留学しており、海外生活の経験をしたことがあるので、なおさらその様に強く感じるのかもしれない。

海外では、他人と違うことが個性であり、良いとされ、肯定されている。

みんな違っていていいと、いう考えだ。

学習の進度や、理解度は、他の人とおなじである必要はないんじゃないか、個人差があってもいいんだと思う。

他の人より理解が遅いと言われ、怒られて萎縮してしまうデメリットは親子共に、大きすぎる。

勢いと怒りが入り混じり、


私は、「お母さん、大丈夫ですよ。指を使っても、問題ありませんから、気にしないでくださいね。」

と、即答した。

数日後、まりのちゃんのはじめての授業。

まりのちゃんは、その学校の先生からいつも怒られているせいか、算数というだけで緊張している雰囲気だった。

「ん〜っと…え〜っと…」

と、ほんとに小さくつぶやきながら指を使いながら、たし算やひき算をしだした。

そして、私の顔を見上げて、ばっと手を机の下に隠した。

私は、

「あ…指? 指、使っていいんよ。気にせんでいいっちゃっ。」

と、言った。

まりのちゃんは、えっ?と驚いた表情をしたあと、少しだけにこっとした。


それから、わたしも、

「3たす4は〜」と、指を使いながら

まりのちゃんと一緒に問題を解いていった。

授業中に、

「今日、小さなカエルが、ぴょんって飛んでるの見たよ。かわいいなぁって。」

と、算数と関係ない話がでた。

「へぇー、カエル好き?」

「うん!!」

数日後、私は本屋さんにいき、カエルが載った算数ドリルを買いに行った。

次の授業で、早速、まりのちゃんにそのドリルを開くと、目をキラキラさせて

「ワァーかわいい!! ここにも、あっ、こっにも、カエルがいる!」

と、喜んでくれた。

「この池に浮いてる葉っぱの上にカエルが4匹いるよね?
この中の1匹が池に飛び込んだら、4ひく1だから…何匹残る?」

まりのちゃんの計算は、指を使ってはいるものの、格段に早くなり、また、間違えも減った。

それから、数日後

教室が開く前に、集会所のまえにお母さんが、立っていた。

「あれっ、どうしたんですか?」と、声をかけた。

私に、手紙を書いて渡しにきてくれていた。

私は、嬉しくて嬉しくて、胸が熱くなった。

※写真がその手紙です。


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