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アート×クルージングが斬新な「ボストン現代美術館」

ボストン美術館、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館――ボストンにある美術館はどれもレベルが高い。

目を見張る建築や作品を際立たせる内装、一歩足を踏み入れると完璧で美しい世界が広がる。

展示されている作品もかなりのクオリティだが、そこにあぐらをかかない。魅力的な企画展はもちろん、音楽系イベントや子供向けのワークショップなど盛りだくさんだ。

港近くにあるボストン現代美術館(The Institute of Contemporary Art)を訪れたのは先日。息子の学校が早く終わるので、半日あれば楽しめるところへ行こう。最初はそんなカジュアルな感覚で訪れた。


湾岸オフィス街に現れるスタイリッシュな美術館へ


ボストンの地下鉄は色で呼び分けられている。レッドライン、イエローライン、オレンジライン、グリーンライン、そしてシルバーライン。この美術館にはシルバーラインに乗って向かう。

シルバーラインは少し変わっている。ダウンタウン地区では専用の地下道を走る。架線から給電を受けて走るトロリーバスなのだが、郊外では一般道にでてディーゼルエンジンで走る。いわゆるデュアルモード車だ。

最寄りのコートハウス駅で降りて駅の階段を上ると、湾岸のオフィス街といった雰囲気が広がっている。抜けるような青空の下、ビルとビルの間を海風が勢いよく吹き抜ける。

ボストンでよく見かけるベンチのブランコ。ブランコに揺られながら読書を楽しむ人を多く見かける。

駅から5分ほどで、ボストン・コンテンポラリーアート美術館(ICA)にたどり着く。湾に直面した、このスタイリッシュな建物だ。

湾側は広い階段兼座席になっており、ここでは音楽イベントなども催される。木材とガラスが空間に洗練された柔らかさを生み出している。

入場券にクルージングチケットも付いてきた

入場チケットにはクルージングチケット(夏季限定)がつくと、受付で教えてもらう。なんでも到着した先に別館があって、インスタレーションの展示を楽しめるという。最初は事態をよく飲み込めず、何度も聞き返してしまった。

事態を飲み込めた後も若干の不安は残る。二人の子連れ+時間も時間だったので少し戸惑ったが、こんなチャンスを逃すわけにはいかない。念のため最終便は避け、最終便の一つ前の3時出発のクルーズを予約した。

それまで本館の展示をじっくり鑑賞。アーティスト達の力強い作品に子供達も圧倒され、細部まで興味深そうに鑑賞していた。

いくつかの企画展が開催されていたので、主な2つを簡単にご紹介。

1つは「A Place for Me」という企画展で、新進気鋭のアーティストたちの作品を展覧している。自宅のキッチンやリビングルームでくつろぐ家族や恋人、友人たちとのありのままの姿を描写して、親密さや愛情、暗さや穏やかさなど、様々な感情を表現している。どれも色鮮やかで生命力にあふれている。

もうひとつはジョーンズ・ヘンダーソンというアーティストの作品展で「Napoleon Jones-Henderson: I Am As I Am—A Man」。アフリカン・ディアスポラの人々の生活や文化からインスピレーションを得て、織物のタペストリーや神殿風の彫刻など様々な作品で表現している。一つひとつがすごくユニークで、ビビッドな色を多用したり、さまざまな素材を用いているのに不思議とひとつの作品としてまとまっている。唯一無二の存在感を放つ作品。

作品の写真は著作権の問題を考慮して掲載を断念したが、こちらのウェブサイトでぜひ。

館内には湾を一望できるスペースも設けられている。作品鑑賞で得たさまざまな刺激をここでクールダウン。

いざクルージングへ。小さなボートなので海面がすごく近い。子供達は大はしゃぎ。ボストンは今夏至で夜9時くらいまで空が明るい。3時なんてまだまだ真昼の日差し。

大きな運搬船や客船が行き交う隙間を、小型のモーターボートが軽快に走り抜ける。太陽と潮の香りに気持ちが緩む。さっき歩いていた湾岸のオフィス街がどんどん小さくなっていく。

日差し降り注ぐ半島へ

約20分ほどで目的地の東ボストンに到着した。ジブリの「紅の豚」を彷彿させる、のどかな地中海の島といった雰囲気。個人所有のクルーズ船が所狭しと停められている。

ICAの別館は、倉庫を再利用したような雰囲気のあるギャラリーだった。

今は Revival: Materials and Monumental Formsという企画展が開催されていて、古着や木箱など日常的な素材を再利用している大規模な作品が展示されていた。自動車の赤いバックランプを再利用した展示が圧巻だった。


島に流れるゆったりした時間の流れをたっぷり満喫してから満を持して帰路につく。往路よりも日差しが少し傾いているせいか、海風も涼しく心地よい。

何気ない平日の午後を、あっという間に非日常に塗り替えてくれたボストン・コンテンポラリーアート美術館(ICA)。ボストンの美術館はどれもレベルが高い。

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