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#008.マウスピースについて考える その2

前回より「マウスピースについて考える」と題してお送りしております。
前回の記事はこちらです。

なぜマウスピースにいろいろな種類があるのか、おわかりいただけたかと思いますが、では、自分に合ったマウスピースは実際どう選べば良いのか。

今回はまずこれについて考えてみましょう。

マウスピースの選び方

初心者の方はまず「中庸」から

初心者の方は前回お話した通り、「中庸なもの」を選ぶことをお勧めします。本当に最初の段階では、楽器を購入した際の付属品でも良いと思います。

ただ、過去の記事「トランペットに必要な備品」でも書きましたが、部活動でトランペットを始めた方は、学校の楽器ケースに入っているマウスピースがどこからどう見ても清潔で、キズや凹みもないコンディション良好のもので、そして中庸サイズであればそれを使用しても構いませんが、それであってもやはり可能な限りマウスピースだけでも自分のものを手に入れてください。

違和感を覚えたら交換時期かも?

そして、「中庸なもの」を使い続けているうちに、「なんだかコントロールしにくいなあ」と感じる時期がやってくるかもしれません。なんかこう、(イメージの話です)部屋が狭くて手足が自由に動かせないような、もっと動き回りたいのにそれができないもどかしさを感じるようになったときは、マウスピースの交換時期かもしれません。

というのも、前回お話したようにトランペットというのは空気抵抗によって音を出し、音域を変化させる楽器です。トランペットをコントロールできる力がついてくると、「もっと響きのある音で演奏したい」「もっと大きな音量で鳴らしたい」と感じたり、「スムーズに演奏できない」という感覚を持つようになる場合もあります。

その理由がマウスピースサイズにある可能性が高く、今よりも大きなサイズのマウスピースにすることで、今以上に自由な空気圧や抵抗感の変化が可能になり、音の響きやコントロールのしやすさを実感できるわけです(人によります)。

ですから、「もっとこうしたいのに!(できない!)」という欲求不満が募ってきたら、今より大きなサイズのマウスピースに変えてみるのも選択肢のひとつかもしれません。

※ただし、中庸サイズのマウスピースで素晴らしい演奏をされている方もたくさんいらっしゃいます。中庸サイズは決して初心者の方のためだけのものではなく、すべてのマウスピースはそれぞれの奏者がそれぞれに求めるものによって選択が異なるわけですから、経験を重ねていったら絶対に大きなマウスピースに変えていななければならない、ということではありません。

マウスピースの選び方

自分に合うマウスピースのサイズは、実際に使ってみないとわかりませんから、ネットでの購入は絶対NGです。必ず楽器屋さんに行きましょう。そして、今使っている楽器とマウスピースも必ず持参します。

ドルチェ楽器さんはレジカウンターがマウスピースショーケースになっていて、宝石屋さんみたいです。これは数年前の写真ですので現在とは商品や配列などが違うところがあります

管楽器専門店では、ほとんどの場合あらゆるメーカーのほとんど全てのサイズを揃えているとは思いますが、一応事前に試奏したいマウスピース(を含む前後いくつかのサイズ)があるか問い合わせておきましょう。

今回の話の流れでは、中庸なサイズよりも大きめなものを探しているので、仮にアメリカのメーカー、V.Bach(ヴィンセント・バック)で選ぶとするならば中庸が7C,6C,5Cあたりなので、それよりも若い数字のマウスピースになるわけです。

なぜだかわかりませんがBachのマウスピースを使っているトランペット奏者は3Cとか1Cとか奇数のマウスピースの人が圧倒的に多いです。でも、例えば2Cなどがとても合う可能性も大いにありますので、とにかく楽器屋さんにある近いサイズは全部出してもらうのが良いでしょう。

マウスピースは当然Bachだけではありません。ヤマハや他のメーカーもいくつもあります。メーカーによってサイズ表記の仕方が異なるので、楽器屋さんにどの程度のサイズを探しているのかを伝えて、近いものを出してもらうのもいいかもしれません。

お店が混雑していなければ、音出しができるスタジオを貸してもらえると思います(これも事前に予約できるならそのほうが良いです)。そこで、マウスピース選定をするわけですが、「っていうか、どうやって選べばいいの?」という声が聞こえますので、僕のやっている「トーナメント方式」をお伝えします。

トーナメント方式でマウスピースを選定しよう

これは自分の直感を信じる選び方で、先入観を排除して吹き心地や唇とのフィット感を選定基準にします。

どうしてもマウスピースに刻印されている数字を見てしまうと、「ああ、これはさっきのと比べるとサイズが...」と変に意識してしまうのです。

刻印を見ないようにランダムに横一列に並べ、今使っているマウスピースもその中に混入させます。
そして、サイズ確認を一切せずにひとつずつ順番に口に当て、軽く空気圧を発生させて音を出してみます(いきなり楽器で音出しをすることをおすすめします)。ここで感じたいのは「口に当てたときのフィット感」や「空気の抵抗感」です。

そのあと、音の響きを確認したり隣り合う音のスラーやリップスラー、インターバル(跳躍)タンギング、簡単なメロディなどを演奏し、コントロールのしやすさがどうであるか確認してみましょう。

マウスピースでの差を感じたいわけですから、当然すべてのマウスピースでまったく同じものを演奏します。もし可能であれば、誰かに一緒に来てもらって演奏を聴いてもらうと、より客観的に判断してもらえるので良いと思います。

このようにして印象が良かったマウスピースとそうでないものを分けていきます。そして良いと感じたマウスピース群を再びランダムに演奏していきます。当然刻印やサイズ確認はしません。
一度退いたマウスピースに未練を持ってはいけません。自分の感覚を信じてください。この流れで最後に残ったマウスピースが「感覚的に一番合ってるもの」であると言えます。

今まで使っていたマウスピースが一番よかった、なんてことになるかもしれませんよ。

マウスピースに責任を押し付け過ぎない

少し話が変わりますが、調子が悪い時や、上手くコントロールできないことに対して、「マウスピースが原因ではないか」と疑心を持たないようにして欲しいのです。

確かに今の自分に合ったものを見つけられることは理想ではありますが「これが100%自分に合っている!」と定義する方法はありません。

また、仮に「合っていない」と感じたとしても、それは求めていることが「できない」わけではありません。結局は自分のからだの使い方が最も重要なので、マウスピースに対してあまり神経質になりすぎないようにしましょう。

迷わずに、1本に絞る

明確なコンセプトを持って、複数のマウスピースを使い分けている上級者の方は別として、マウスピースは1本に絞ってしばらく使い続けることをお勧めします。

マウスピースは何度も言うように「感覚」でコントロールするものです。もしも毎日全然違うサイズや違う形状のマウスピースをとっかえひっかえ吹いていたら、その「感覚」の変化に合わせて自分の体の使い方を変化させなければならなくなります。それはとても難しいことで、コンディションに影響を与えてしまう可能性もあります。

マウスピースという道具のことをあれこれ言う前に、安定したからだのコントロールを身につけることを優先し、マウスピースは同じものを使い続けることが大切だと考えます。

ではどれくらいの期間1本に絞るかと言うと、それは個人差、練習量、求められる内容や経験年数があるので具体的な期間はわかりません。感覚的に「(今までと)なんか違うな」といった疑問を何度も持つようになったら考える時期なのかもしれません。例えば、どうしても音量をもっと豊かにして響かせたいのにできない。低音域をしっかりと演奏し続けたいのに、音色やピッチが不安定になってしまう。これがどんなに工夫して研究や練習を重ねても十分に満足する結果が得られないとき、「もしかするとマウスピースが変われば...」といった考えに及ぶのが良いかと思います。

◯◯モデル

マウスピースの中には、メーカーと有名な奏者が共同で開発したモデルがあります。スタンダードなものと差別化を図るため、商品名に名前が入っているので非常にわかりやすいと思います。

しかしこの「◯◯モデル」は、楽器屋さんにおいてある選定品(プロ奏者が楽器を吹いてみて、これ良い楽器!と太鼓判を押した商品)みたいなものではなく、具体的なコンセプトを持って設計された、いわば専門的なマウスピースです。

ですからその奏者のファンだからとか、そういった目線で選ばないほうが良いと思います。もちろん、楽器屋さんで試してみる価値はあると思いますが、先入観に躍らされずにやはり「感覚」を重要視してください。

大切に扱いましょう

楽器はとても大切に扱っているのに、マウスピースの扱いが乱雑なのは良くありません。

マウスピースは唇を振動させ、響きに変換するわけですから、楽器と同じく大切に大切に扱わなければなりません。

例えば、楽器を持っているときにマウスピースが下になるような持ち方は抜け落ちる恐れがあるので絶対にNGです。常にベルが水平より下にあるように持ちしましょう。

そうでなくてもマウスピースは落としたりぶつけたらシャンクの先端が潰れたり曲がったりしますし、リム部分に大きくキズをつけてしまったまま演奏していたら、唇にダメージを与える可能性があり、危険です。マウスピースだけを持ち歩くときには、必ず専用のケースを使って保護してください。


ということで2回に渡ってマウスピースについて書きました。みなさんが自分に合ったマウスピースを「感覚」で見つけられることを期待しています。

荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。