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#007.マウスピースについて考える その1

皆さんはどんなマウスピースを使っていますか?

こだわりの1本でしょうか?それとも楽器を買ったときについていたもの?
先輩に勧められたもの?あれこれ変えて定まらなかったり?

Twitterを見ていると、信じられない数のマウスピースをずらりと並べて、まるで楽器屋さんのような写真を掲載している方もいらっしゃいます。あれ、全部自前なんですよね?総額いくらくらいになるんだろう?

ともかくとして、マウスピースは、

こだわらない方(よく知らないという方)もいれば、こだわりすぎて、かえって混乱してしまう方もいる。

そんな不思議な存在です。


ひとつ言えるのは、「マウスピースだけでも様々な変化が起こる」ということ。

したがって、何でもいいわけではありません。
どんな演奏をしたいのか、どんな音を求めているのか、マウスピースはそれを実現してくれる大切な存在です。

マウスピースの正しい知識を手に入れれば、今までこだわらなかった(よく知らなかった)方は自分に合っているマウスピースの探し方を、こだわりすぎて混乱している方は、自分が求めているものが何であるか、どのマウスピースなら実現してくれるのかが明確になるかもしれません。

そこで、今回はマウスピースとはどんな存在なのか考えてみましょう。

マウスピースとは何か

ある程度トランペット経験を積んだ方は、マウスピースに対してそれなりに知識を持ち、少なからずマウスピースごとの「違い」を感じることができるはずです。

経験者の方にお尋ねしますが、トランペットを始めてしばらく経った頃、

「なんかこのマウスピース、小さくなった気がする」

と感じませんでしたか?「小さい」というのは、マウスピースが縮んだのではなくて、空気の通りが悪いとか、音域のコントロールがスムーズにいかないという感覚的不自由さから生まれた違和感を指します。

マウスピースのサイズは変わりませんから、自分の体に何か変化があったと考えられます。これは簡単に言うと、トランペットを操るスキルのひとつ、「ブレスコントロール」スキルが以前より上がった結果です。

そこで、このブログに書いた過去の記事を思い出してください。トランペットから音が出るのは、唇が振動するからでしたが、振動そのものはどのような原理で起きていましたか?

唇の振動は「体内の空気の圧力」によって起こります。具体的には、体内の空気圧によって発生した空気の流れがアパチュアを通過した際に振動を起こすというものです。

それに加えてマウスピースの急激に途中が細くなっている形状などから生まれる空気の跳ね返りの力=空気抵抗感も影響します。


出典:http://www.trumpet-joho.net/mpselect.html


マウスピースが行う仕事

アパチュアを通過した空気が最初にぶつかるのはマウスピースのカップです。これはいわば空気を待ち受けている壁のような存在で、その壁の中央に穴(スロート)が開いているわけですが、その穴がとても小さいために、ほとんどの空気はこの空間に一旦とどまり、跳ね返り、ぶつかることになります。抵抗感のひとつです。

したがって、カップが浅くスロートが細いものほど体内の空気抵抗感が強くなるわけです。体内の空気抵抗感が高いほどアパチュアを通過する空気のスピードが上がるため、高音域が出やすくなりますし、言い換えれば低音域を安定させるのはとても難しくなります。
カップが大きく、スロートが太いものはこの逆の結果になります。

なぜ初心者は中庸サイズを勧められるのか

「じゃあできるだけ小さいマウスピースにして高い音出せるようになったほうがいいじゃん!」

と思った方、買うのはちょっと待ってください。マウスピースの機能はこれだけではないのです。それは、カップのサイズにあります。

カップの浅いマウスピースは細く響きの少ない音色になります。そして、ほんの少し腹筋の加減が変わるだけでも空気圧変化が極端に影響するため、非常に繊細なコントロールを要求されます。要するに、「ちょっと気を抜くとすぐ音がはずれる」難しいマウスピースなのです。

響きの少ないサウンドは、吹奏楽やオーケストラなど生音で空間を共鳴させるには不向きです。小さなマウスピースは、マイクに音を直接入れるスタジオ系やライブの演奏であったり、ジャズのビッグバンドでリードと呼ばれる、いわゆる1stのパートなどで重宝します。

小さなマウスピースは音の反応が良いのも特徴です。ポップスやジャズなどは音の出るタイミングに対し、とてもシビアに反応することが大切ですので、例えば吹奏楽でトランペット経験を積んできたら、ポップス系の曲だけ、いつもよりも小さいサイズのマウスピースで演奏してみるのも良いかもしれません。

では大きいサイズのマウスピースでは高い音は困難か、と言われればそれは違います。そもそも、マウスピースサイズで音の高低を決めているのではなく、自分の体の使い方で体内の圧力を変化させるわけですから、そこにマウスピースサイズを関係させることはすべきではないと思います。

そのように考えると、極端に小さい/大きいマウスピースにはそれなりにコントロールが難しい点があるわけで、だったらその中間点に位置しているマウスピースを最初に使うのが得策である、と結論付けるのが妥当ですよね。

初心者が中庸サイズのマウスピースからスタートすることを勧められる理由はこのような理由からなのです。

ただ、やはり中庸サイズは音の響きに対しても、体の使い方に関しても、コントロール力がついてきた人にとって、「もっとこうしたい!」という意志を十分に叶えてくれない可能性もあります。そうなった時、新しいサイズのマウスピース探しを始めるのが良いと思います。

中庸サイズとは

では、具体的に中庸なサイズとはどういったものでしょうか。

どの楽器屋さんにもまず置いてあると思われるV.Bach(ヴィンセント・バック)ですと、

7C 6C 5C

あたりではないかと思います。Bachの場合、数字が若くなるとサイズ大きくなります。

"C"というのはカップの形状で、曲線的なラインを持った最も一般的なものと言えます。

長くなりましたので次回もマウスピースについて書いていきます。



荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。