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#003.トランペットに必要な備品

パソコンを購入する際、心を決めていざお店へ赴き、

「こ、これください!」

と言うまではよかったのですが、

「有料の保証期間の延長はいかがですか?」
「これを接続するコードは...」
「メモリの増設が...」
「こちらの付属品を購入していただくと...」
「一緒にこちらに加入することでお得に...」
「インターネットはどちらをお使いで...」
「配達料金は...」
「今お使いのものを下取りできるサービスが...」
「ポイントカードをお持ちでしょうか?」
「アプリに登録されるとお安くなるサービスが...」

うわああああああぁあぁあぁぁあっ!

予算を決めてそれギリギリのものを購入すると、大概他のオプションでオーバーする、ということです。
トランペットを購入する際にここまでのことはおきませんが、楽器本体と合わせて持っていて欲しいものがいくつかあるので、ご紹介します。

今回は「初めてトランペットを演奏した」ということで書いていきます。

マウスピース

マウスピースがないと音は出せません。

管楽器の専門店で本体を購入すると、メーカーによっては付属している場合もありますし、店員さんから「マウスピースはどうしますか?」と聞かれることでしょう。

最初のうちは付属のマウスピースでも構わないと思いますが、しばらくしたら(半年とか1年後とか)には買い直してもいいかもしれません。そのタイミングは自分で感じ始めることもありますし、第三者からのアドバイスの場合もあると思います。

なぜ買い換える必要があるのか。それは、マウスピースには様々なサイズや形状の違いがあり、この部分で演奏のしやすさが大きく変わるからです。
マウスピースに関してはまた後日きちんと書きますが、とりあえず最初は「いわゆる中庸なもの」を選択するに限ります。

具体的にはユーザー層の厚いBach(バック)というアメリカのメーカーのサイズで言うなら、「7C」「6C」「5C」あたりを指します。

憧れのあの奏者がプロデュースした〇〇モデル!なんてものもありますが、それらはもう少し演奏できるようになってからのほうが良いでしょう。

あと、ここだけの話、玄人仕込みのマウスピースマニアな意見や提案は、最初は参考にしなくて良いと思います。その話が対等にできるくらいになってから、ということで。


学校の備品はコンディションを必ずチェック

部活動でトランペットを担当することになった初心者の方で、とりあえず学校の備品楽器を使うという場合はぜひ覚えておいてほしいのですが、学校の備品マウスピースのコンディションを使う前に必ずチェックしましょう。

というのも、以前指導に行った中学生の部員ひとりが、音を出すのにとても苦労していて、よくよくマウスピースを見てみたらジャズのリードプレイヤーが使うんですか?ってくらいカップが浅く、サイズが小さいものでした。それだけでなく、メッキは真っ黒になっていて部分的に剥がれていて、どこのメーカーだかわからないし、シャンク(楽器に差し込むところ)がボコボコに凹んでいる、という信じられないマウスピースを使って大変そうに音を出していました。

「そんなことある?」と思われるかもしれませんが、金管の知識がない顧問の先生だけで部活をやっているところ(しかし歴史だけはとても長い部活)では、何十年も前から備品として存在している楽器やマウスピースが眠っている場合も少なくありません。

情報がほとんど入ってこない環境下では、結構ある話です。

メッキが剥がれたリム(唇が当たるところ)はケガや皮膚炎を発症する可能性もあり、非常に不衛生です。そうでなくても使用前に徹底的な清掃をしましょう。しかし、できればマウスピースくらいは自分のものを持つべきだと思います。マウスピースは数千円台から手に入れられるものも結構あります。

また、マウスピースと一緒に、マウスピースブラシも購入しましょう。マウスピースは結構汚れます。

私はハンドソープを使って洗っていますが、推奨されているわけではないため自己責任でお願いします。

バルブオイル

ピストンの動きをスムーズにするためのオイルです。楽器を購入すると一緒に付いてくる場合も多く、もちろん最初はそのオイルでも構いませんが、必ずいつかは使い切ります。

そこで楽器店にオイルを買いに行き、あまりの種類の多さにどれを買えばいいのかわからなくなる、なんてことも最初はあるでしょう。
オイルも、改良されたり消えていったりマイナーチェンジしたりと、ずっと同じものが並んでいるわけではありません。

しかも実際に使ってみないとそれが良いと感じるかもわからないので、「絶対これが良い!」とは言えませんが、とりあえず昔からずっと売っていて、楽器屋さんもずっと仕入れているメーカーのものを選べば大丈夫かと思います。

メーカーによっては新しい楽器用、古い楽器用など、いくつかの種類を出している場合もありますので、もしわからなかったら楽器店の方に相談するのが一番良いと思います。

グリス(スライドグリス)

バルブオイル同様、楽器店にはたくさんの「◯◯オイル」とか「◯◯グリス」といった名前のものが並んでいて混乱します。しかも名前だけでなく商品の形状までそっくりなので、ネットで調べて「ああ、これこれ」ときちんと見ずに買うと、それは木管楽器用だった!というオチもあるので気をつけましょう。

これはリップクリームのような形状ですが、指ですくって塗るタイプもあります。

トランペットのグリスは、金属と金属が直接擦れ合わないように、そして錆びないでスムーズに抜き差しができ、空気漏れが起きないように機密性を高める目的で使用します。

このグリスは、チューニングスライド(主管)と2番管にのみ使用します。
チューニングスライドと2番管がどこかは、前回の記事を参考にしてください。


(チューニング)スライドオイル

第1スライドと第3スライドに塗って動きをスムーズにするオイルです。この部分はとにかくスルっと、まるでトロンボーンのスライドのように抵抗感なく動くことが絶対なので、他とは違うオイルを使用します。

クロス


楽器表面は非常にデリケートで少しの摩擦でキズが付くので、専用のクロスを使用します。
素材やサイズもいろいろで、中には磨き液(ポリッシュ)が含まれたものもありますが、とりあえずは大きめで何も含まれていないものを1枚持っておきましょう。例えば「ポリシングクロス」という商品があるのですが、研磨剤が含まれているクロスなので確かにキレイにはなりますが、多用するのはおすすめしません。

クロスは楽器を片付ける最後に全体をキレイに拭くのはもちろんですが、演奏中に持っているところがベタベタしてきたり、汚れが気になったら気軽にフキフキします。

オイルが染み込んだクロスで表面を拭くと塗り広げてキレイにならないので、定期的に洗濯をするか買い替えましょう。

スワブ

マウスパイプ内とチューニングスライド(主管)の水分を拭き取る道具です。これらの部分は水分が停滞し錆びやすいので、その日の練習が終わったら、スワブで水分をすべて拭き取ります(他の部分はオイルが流れるので錆びにくい。ただし汚れやすい)。

この写真のスワブは1世代前のものです。現在は樹脂素材から紐になっています。

ちなみに、クラリネット奏者は演奏中も頻繁にスワブを管内に通しますが、クラリネットは素材が木のため、少しの時間でも水分が停滞しないようにするためにそうしています。一方トランペットは金属ですから、その日の最後だけで十分です。

楽器ケース

楽器を購入すると楽器ケースが付いてくる、というのは日本独自のサービスです(ヤマハや日本でBachを買えばケースが付いてきます)。外国の製品の場合、ケースが別売りの時がありますので購入時に注意しましょう。

というのも、ケースって意外に高額なんです。正規ルートで定価で買えば数万円はします。

楽器ケースは素材も形状も様々で、ご自身がどのようなシーンで楽器を使うかで選択が異なりますので、以下を参考にしてください。

[ハードケース]
ちょっとした衝撃、例えば自動改札など細いところを抜けたときにぶつけるとかでも楽器本体にほとんど影響が出ない硬い素材で作られたケースをハードと呼びます。保管をするときにはハードケースに入れておくことが無難です。

Bach製品を購入すると付いてくるダブルのハードケース。
かなり頑丈ですが、それだけ重さもあります

[ソフトケース]
布や皮、ナイロンなどを表面に使用し、クッション素材で楽器を守るタイプをソフトと呼びます。とても軽く、持ち運びの負担を軽減しますが、同時に外からの圧力に大変弱いです。トランペットは極めて薄い金属で作られているために、ほんの少しの圧力がかかれば簡単に曲がるし凹むし、潰れます。

ですから、満員電車や人混みを移動する可能性や、保管しておく場合はおすすめできません。初心者で楽器の扱いに慣れていない方もあまり使わないほうが良いと思います。

ソフトケース。写真のものは中のクッションが厚く、多少の衝撃には耐えられるかもしれませんが、やはり気をつけないと何が起こるかわかりません。僕は怖いので最近はまったく使わなくなりました。

[セミハードケース]
ハードとセミハードの境界線に明確な定義はないと思われますが、ハードほど頑丈ではないけれど、楽器を守るための素材がある程度入っているケースをセミハードと呼ぶことが多いです。

保管もできるし機動力も高いので、このタイプを使っている方が圧倒的に多いように感じます。

Schagerl(シャーゲル)のオリジナルダブルケース。
外側が少々柔らかいのでセミハードと言っていいかもしれません


こちらはマーカス・ボナというメーカーのダブルケース。軽量の割にしっかり作られているので、愛用者も大変多いです。他の管楽器のケースもたくさんあります。

収納本数、収納する楽器

トランペット奏者は、ひとつの演奏の現場で同時に何本もの楽器を持ち替えることも少なくありません。Bb管、C管、ピッコロトランペット、コルネット、フリューゲルホルン、Eb管やD管、ロータリートランペットなど...。

楽器ケースもそれを考慮して、1本(シングル)、2本(ダブル)、3本(トリプル)といったケースがあり、トランペット2本とピッコロなら入れられる2.5本(セミダブル)のケースもあります。フリューゲルホルンやコルネット、ロータリーの場合はトランペットケースに収まらない場合も多々ありますし、ものすごく工夫して作られ、いろいろ入れられるケースもあります。また、トリプルや4本入れられるケースになると、トランペットとは思えない大型サイズになり、持ち歩きが困難な場合もあります(そんなこと言ったら大型楽器の人に怒られちゃうかもしれませんが)。

こちらはジュピターの付属シングルケース。無駄なスペースをカットしているので、マウスピースとオイル類だけが、かろうじて入るようになっています。


シャーゲルの中はこうなっています。元々ロータリートランペットという種類が収納できる形状なので、クッションが少々独特な形状をしています。クッションの厚みがあり、かなりしっかり守られていますが、ベル部分のクッションが薄く、万が一ケースを落としたり、床に乱暴に置いた場合にベルが曲がる気がします。横からの強い圧迫も危険な気がします。


マーカスボナのダブルケース。コルネットが収納できるダブルはマーカスボナとプロテックというメーカーだけではないかと思います。私はコルネットを持ち運ぶことが多いので、マーカスボナをメインで使っています。収納する楽器によってクッション位置を変えられるのが秀逸です。

「どうせ私はこの先もBb管しか使わないから」という方も、メンテナンス用具やミュート(後日詳しく解説します)などを一緒に持ち運ぶことも多いので、いろいろ入れられるダブルケースが絶対おすすめです。

持ち運び
手に持って歩くというのは、楽器の中では小さいトランペットと言えども結構大変で、セミハードのダブルケースでも相当しんどいです。

最近の楽器ケースのほとんどはリュックタイプになっていたり、ショルダータイプになる引っ掛ける金具が付いているなど、持ち運びができるだけ楽になるよう工夫されています。

シャーゲルのケースはリュックタイプにもなりますが背負うストラップを収納することも可


このBachのケースはショルダータイプです。正直、結構疲れます。

日常の荷物を入れるカバンを肩にかける方は楽器ケースをショルーダータイプにすると肩に両方かけられなくて苦労したり、背負うタイプのケースを購入すると、リュックタイプのバッグは使いづらくなるので、いろいろご自身の生活に合わせたケースを手に入れられると良いですね。

天気、飛行機
「雨が降ると傘を持つ」ことを忘れてはいけません。手が2本しかないということは荷物と楽器と傘を同時に持つことが結構大変なのです。しかもそれで自動改札を通ったり買い物をするとなると本当に大変。

ほとんどの場合大丈夫ではありますが。ケースに防水加工がされているかも購入前に楽器店の方に確認しておきましょう。楽器が濡れてしまうのは当然アウトですが、ケース表面に撥水性がない場合、もしビチョビチョになると、クッション材にカビが生える可能性もあります。しかもそれが外からはわからないのです...。

稀ですがこのようなレインコートに使うような素材の防水カバーがケースに収納されているものもありますし、楽器専用の防水カバー単体で売ってるかもしれません(探したことがないのですが弦楽器専用のものはよく見かけますので)。サイズさえ合えば例えば登山グッズなどでも代用できると思います。

また、飛行機に乗る方は、ケースのサイズにも注意してください。セミハードなのに機内持ち込みができないのは非常に不安です。特に海外では荷物の扱いが信じられないくらい雑なので楽器がペッチャンコになった話も聞いたことがあります。

ということで長くなりましたが、楽器本体以外に用意したいものを挙げてみました。楽器購入の際には予算に余裕を持たせておきましょう。

それではまた次回!


荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。