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#002.トランペット本体について知ろう

トランペットの荻原明(おぎわらあきら)です。

今回は「トランペット本体」について解説します。
まずはこちらの写真をご覧ください。

楽器の型番やメーカーによって細かな部分の形状や、場合によってはパーツそのものがあったりなかったりします。その理由は2つ。予算の都合で「まあ、なくてもなんとかなる」ところを削いでしまった結果。ですから安い楽器には付いてないパーツがある、ということ。

もうひとつは製作者の大いなるこだわりによるもの。「ここにこのパーツがこうやって付くと良い音になる!」とか。
そうして値段が跳ね上がったり跳ね上がらなかったりします。


今回紹介するために撮影したこの楽器、僕がいつも使っているオーストリアのSchagerl(シャーゲル)というメーカーなのですが、結構斬新な形をしておりまして一般的ではございません。

よって「なんか私のと違う」と思われる方が非常に多いはずですが、大丈夫です。僕のほうが違うので。しかしとても良い楽器です。


それでは、各部分について解説してまいります。


マウスパイプ


マウスピースを差し込む「レシーバー」と呼ばれる部分からまっすぐ伸びている管です。

この部分、唇の振動が最初に共鳴する非常に重要な部分です。管の中が汚れていたり、錆びたり、ぶつけて凹んでいると、楽器が持っている本来の持ち味が発揮されません。大切に扱いましょう。


チューニンズスライド(主管)

マウスパイプの先に大きくカーブしている管があります。ここが「チューニングスライド」または「主管」と呼ばれる部分です。この部分は引き抜くことができます。

これ以上ひっぱると抜けてしまいますし、実際の演奏でここまで抜くことはありません。

すべての管は金属同士で繋がっているので、擦れて傷が付いたり削れることのないよう、「グリス」という粘度の高い油を接続部分に塗ります。このグリスは隙間から空気が逃げないよう密閉度を高めるためにも大切です。

グリスについて詳しくはまた後日解説します。

また、チューニングスライドには「ウォーターキイ」というものがついていて、コルク部分を開け、ここから水分を逃します。楽器によってはコルク部分がゴムであったり、システムの異なるものもあります。

管楽器は管の中に空気が入っていくので、暖められた管内に結露が発生し、ウォーターキイ付近に溜まります。また、ピストンの動きをスムーズにするためにバルブオイルを塗布しますが、これもウォーターキイのほうへと流れてくるので、ここから逃すわけです。

日本語ではしばしばこの水分を「ツバ」と、ウォーターキイのことを「ツバ抜き」などと呼びますが、楽器を吹いていて唾液が管内に流れることはほとんどありません。したがって、


「ツバ!やだーーーきたないーーーー!」


とか言う人がいますが、そういう人には「水蒸気と油です!」。とご説明してください。まあ、結局のところあまりキレイではないので説得力はありません。

ピストンバルブ

3本あるピストンを様々な組み合わせで押すことにより、音の高さを変化させます。

上の写真で言うと、向かって左から1,2,3番バルブと番号が付いています(構えたときの手前が1番ピストン)

ピストンを取り出すと、必ずどこかに番号がふってあります。
構造については後ほど詳しく解説します。

1番スライド/トリガー

1番ピストンから繋がっている短めの管を1番スライド(抜き差し管)と呼びます。

スライドと呼ぶくらいなのでこの管も抜くことができます。

この管は演奏中に抜いたり入れたりすることがあるので、コントロールできるように指掛けがついていて、これを「1番トリガー」と呼びます。お安い楽器ですとここにトリガーが付いていないものもあります。

2番管

トランペットの中で一番短い管です。演奏中に操作することはほぼありませんが、これも抜くことができます。


3番スライド/トリガー

1番スライド同様演奏中に抜いたり入れたりするので、こちらにも指掛けである「3番トリガー」がついています。

もともと管が長いのでこんなに伸びます。

ピストンの仕組み

トランペットの重要なパーツであるピストンについて解説します。まずはこの中身を見てみましょう。


ピストン上のネジになっているキャップを開け、ピストンを守っている管(バルブケーシング)から抜き取ると、中身はこのような構造になっています。バネが見えますね。

最後まで抜くと、

こうなっています。穴が空いていて、変な形に貫通しているのがわかります。

ピストンの上のほうはバネにより押せば戻る機構に、下のほうは穴が空いていて、押したときとそうでないときで管の長さが変わるようになっています。

それぞれのピストンを押したとき、先ほど紹介した1番から3番までの管(迂回管とも呼ばれます)と接続され、管の全長が長くなります。ピストンを押さないとそれぞれのそれぞれの管には接続されません。

そしてこのピストン、全部分解することこうなります。

結構パーツがありますね。慣れないうちに分解すると戻せなくなるかも?!

...まあ、実際はそんなに複雑じゃないので、ぜひご自身のトランペットを全部分解してみましょう(2番管がどっち向きかわからなくなる人が多いのでご注意を)。

ちなみに、ピストンの底(ボトムキャップ)もネジ状になっているので回せば取れます。ここにオイルや汚れが溜まりやすいのでたまに開けて確認しましょう。


簡単にコンディションチェックを


トランペットを分解したときにしか気づかない管の中の汚れや、抜けるはずの管が抜けない(抜けるけどすごく固い、スムーズに動かない)、などはありませんか?

管内の汚れは本来楽器の特性(=抵抗感、共鳴)を変えてしまう恐れがあります。そうならないよう、定期的な掃除は必ず行いましょう。

そして抜けるはずの部分が抜けないのは、錆びて金属同士がくっついてしまった結果です。こまめにグリスを塗らないとこうなります。

また、1番スライドと3番スライドはツルツルと抵抗感なく動くのが当然の部分です(うごかすときには必ずそれぞれ1番ピストン、3番ピストンを押した状態で行います)。ニュルニュルと粘るような動きをしたり、ガリガリシャリシャリと金属が擦れ合う音がしたり、途中でひっかかりがあるなどは正常ではありませんので、オイルをさしたり、洗浄したり、楽器屋さんで修理をしてもらうなどの対策が必要です。

楽器の洗い方やグリス・オイルについては後日詳しく解説しますが、まずはご自身の楽器のコンディションをチェックする目的で全部分解してみましょう!

それではまた次回!


荻原明(おぎわらあきら)


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