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経営者(社長)のための2024年問題 #1

トラックドライバーの2024年問題。他の記事では取り上げない問題の本質を分かりやすく解説します。

2024年4月1日から、トラック運転者のための労働時間等の改善基準が改正されます。この事に関して、多くのニュースや記事が配信され、社会的な関心も高まっています。

内容を見ると、「これまでのような長時間労働ができなくなる」「これまでの働き方では物流の3割以上が輸送できない可能性がある」など、同じような中身となっているようです。また、変更になる基準の細かな部分を取り上げて、解説している記事も多く見られます。

今回、タイトルに「経営者(社長)のための」と付けたのには訳があります。それは、現在のマスコミの取り上げ方では、今回の改善基準の変更のポイントが、経営者(社長)の皆さんに、正しく伝わっていないのではないか?、と不安に思ったからです。

では、具体的に見ていきましょう。

1.緑ナンバー運転者だけでなく、白ナンバー運転者や個人事業主も対象になる。

今回の改正について、厚生労働省の「自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会」の中で話し合われてきました。そして、これまでは緑ナンバー運転者だけが対象だった範囲が、白ナンバー運転者や個人事業主まで広げられました。

この事を、対象が広がった範囲に入る会社の経営者(社長)の皆さんは理解され、対策を講じておられるでしょうか?もう、そんなに時間が残されていません。とても心配です。

例えば、白ナンバー運転者を例にとると、自分の会社の工場で作った製品を自社のトラック(白ナンバー車)を使用して店舗まで配達する、などの場合が当てはまります。

また、個人事業主を例に取ると、宅配業者などの下請けとして、軽トラックを個人で所有して配送している社長ドライバーの方々や家族が該当します。

2.社内での職種や肩書きは関係ない。

これは、追加された白ナンバー運転者や個人事業主だけではなく、緑ナンバー運転者も含めたすべてに言えることですので、しっかりと理解しておきましょう。

つまり、今回の改正の基準となる人は、「主たる業務が自動車の運転である人」であると言うことです。

もう少し詳しく解説すると、
自動車を運転する時間が労働時間の半分を超えており、その業務に従事する時間が年間総労働時間の半分を超えることが見込まれる場合には「主たる業務が自動車の運転」である
と判断されます。

社内での職種や肩書きは関係ありません。

人手が足りないので、管理職の方が自分の仕事もしつつドライバー代わりにトラックを運転している場合など、要注意です。

あなたの会社の現状を、再確認する必要がありそうです。

3.違反すると「罰則」が科される。

時間外労働上限規制960時間について、これまでは適用が猶予されてきました。しかし2024年4月以降、違反した場合には、
6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
という結構重い「罰則」が科されることになります。

もちろん4月になったら、いきなり監査が入って処罰される、と言うことはないでしょう。しかしひとたび事故が発生し、勤務状況を調べられたときに基準を満たしていなければ、やはり処罰されると思っておくべきでしょう。

4.今まで使っていた下請けの運送会社や軽便などから、「今月はこれ以上無理です」と言われるケースが増えてくる。

今回の改正は、自分の会社のドライバーだけに適用されるわけではありません。当然ながら、下請けとして入っているドライバーの会社にも適用されます。

自社のドライバーの時間管理ばかりに悪戦苦闘していると、月末になって下請けの会社から、「今月は上限に達したので、明日からは来れません」などと、急に言われるかもしれません。

そんな時どうするのか、対策を考えていますか?

日頃からコミュニケーションをしっかり取って、いざと言う時慌てないように準備をしておきましょう。

5.改善基準告示の内容が、しっかりと理解されていないかもしれない。

ここまで書いてきた基準の正式な名称は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」です。一般的には「改善基準告示」と言われ、現在の基準は「平成13年8月20日国土交通省告示第1365号」が根拠になっています。

緑ナンバートラックの会社は、国民生活や産業活動を支えるという重要な役割を果たし、公益性の高い事業であることから、事業を経営する為には所定の要件を備えたうえで、国土交通大臣の許可を得なければなりません。

この要件を満たしているかどうかを確認するために、貨物自動車運送事業法によって位置付けられた「適正化事業指導員」が、事業者への巡回訪問及び街頭パトロールなどを通じて、輸送秩序の確立のための指導及び啓発活動を行っています。

つまり、緑ナンバートラックの会社は、基本的な事は既に理解しています。今回の改正は(厳しい内容ではありますが)、これまで行ってきたことを修正する、という作業になります。

しかし、白ナンバー運転者や個人事業主の会社は今回が初めてなので、一から構築しなければなりません。

時間がありません。すぐに動き出しましょう。

6.おわりに

実は今日が初めての投稿です。

私は、長年のドライバー経験の後、安全指導の仕事に従事してきました。これまで「誰も事故を起こして不幸になって欲しくない」という強い思いから活動してきましたが、そのためには経営トップの方々の考えが何よりも大事だと痛感しています。

「安全が第一」とよく言われますが、安全そのものが利益を生むことがないため、どうしても後回しにされがちです。

しかし大事故を起こしたために会社が傾いた・無くなったという例は、枚挙に暇がありません。

そうならないために、これからも経営トップの方々にも届くような文章を書いていくつもりです。

では、皆さん、ご安全に!


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