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「畜産」の魅力

先日取材を受けている中で、
「京都の街中で生まれ育ち、どうして畜産の道へ?」
と問われて少し変わっている自分を自覚しました。
この仕事が好きで誇りを持って働いているので
その経緯と考えについてまとめてみます。

ヒヨコ→ニワトリ→肉・卵

ヒヨコ

その背景を辿ると小学生の頃に遡ります。
今となっては曖昧な記憶になりますが、
理科が好きな私は夏休みに自由研究のためか
青少年科学センターに連れて行ってもらいました。
そこに卵の人工ふ化を見るコーナーがあり、眺めていました。
普通は卵から孵化するヒヨコを見て
すごい!と感動するのでしょう。
しかし、私は側から聞こえるヒヨコたちの声に惹かれて
近寄ってみると孵化したヒヨコがたくさんケージにいました。
そこには「無料で配布しています」と書かれており、
母に「ヒヨコが欲しい!」とお願いしました。

普通であれば親として嫌がるところ、
私の母は一緒になってどの子にするか選んでくれました。
後になって聞くと、母は田舎出身で子供の頃に飼っていたからだそう。
最初は2羽もらったものの暑い頃に弱らせて亡くしました。
それを教訓に次は3羽もらって育てました。
みんな色が違って可愛がるも性別まではわかりませんでした。

ニワトリ

一か月もすると手の平では収まらなくなって
ヒヨコではなくなりました。
ペットとしてそれぞれ名前を付けて呼びながら育て、
母の庭の手入れのお供に外でも過ごしていました。
成長するとトサカのサイズで性別がわかり、
オス2羽とメス1羽であることが発覚しました。

メスをオスが2羽で襲うのでこれは良くないなという話になり、
ある日母が不意に紐を持って1羽のオスの足に縛り吊り上げました。
すると、暴れて抵抗していたのに次第に動かなくなっていき、
さっきまで目の前で生きていたニワトリが死んだという事実
それを母がしたという現実を受けて涙が止まりませんでした。

鶏肉

可愛がっていたペットが死んだことにショックを受けて
その後の展開をあまり覚えてはいないのですが…
母は絞めた鶏を見様見真似でさばいたそうで、
気付いた時にはクリスマスのチキンとして食卓に上っていました。
抵抗がありながらも命は粗末にできないと食べてみると
パサパサで全然美味しい感じられませんでした。

その経験から美味しいお肉が食べられるのはすごいことで
お肉を美味しくするには技術が必要だということがわかりました。
それと同時に「いただきます」は「命をいただく」ことへの
感謝の気持ち
なんだという実感が湧きました。

残った2羽は大きくなり、メスは卵を産むようになりました。
白色レグホーンだったようで卵を産んでも温める様子は無かったため
食用として回収し食卓に並ぶようになりました。
スーパーで買うものと違って温かく、目の前にいる産んでくれたメスに
「いただきます」を伝えながら家族で美味しくいただきました

動物好き→畜産

ペットは違う

残ったオスは卵を産めず肉にもならず
愛玩動物として可愛がり8年間生きて生涯を全うしました。
中学時代には職業体験で動物病院に行き看護師を経験しましたが、
ペットは人のエゴでしかない、私の中では違和感が残りました。
動物園の飼育員なども考えた上で、進路を考えた時に「動物が好き」の角度が都会の環境と合わないと感じ、
大学進学で京都を離れるなら憧れの北海道!を目指すことにしました。

大学進学は北海道へ

進学するなら国公立。と言われていたので
「北海道大学」を見てみましたが学力高くて難しい…
それなら同じ道内の「帯広畜産大学」!
動物いっぱいいるし、北海道らしい酪農風景で学べるやん!
みたいな最初は安易な考えで決めましたが、
オープンキャンパスに行ってその環境に惹かれて進学を決めました。

鶏の研究

大学では主に牛について学んでいましたが、
肉の飼料対効果を見る研究室だったので
屠畜に関わり牛だけでなく豚も扱っていました。
私は鳥類を希望し「ダチョウで研究がしたい!」とお願いしましたが、
ダチョウ1羽では難しいと言われてしまいました。
しかし、先生ご尽力のおかげさまで北海道で開発された
肉用地鶏(ニワトリ)を研究できることになりました。

研究で育てたヒヨコ

研究室の先輩・後輩だけでなくサークルの後輩たちにも手伝ってもらい、
物置になっていた鶏舎を片付けるところから始めました。
ヒヨコを入れて毎日餌をあげたり掃除し約3カ月間飼い育て
自分たちの手で順に屠畜していきました。
研究では脂や肉を用いて、実際に食味試験も行いました。
骨もバイト先のカフェに持ち込んで鶏ガラとして余すところなく使いました。

畜産という仕事

農業の中でも畜産は3K(臭い、汚い、きつい)と言われ、
環境汚染や動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点からも叩かれます。
特に、命を落とす「屠畜」という作業があるので
「残酷だ」と忌み嫌われがちな仕事です。
しかし、その子の能力を最大限発揮させて活かしきるというのは
他の農業と変わらないのではないでしょうか。
また、私の昔の経験から「お肉が美味しく食べられる」というのはすごいことなのです。
それは普段は当たり前でも、農家の知恵と技術のたまものなんだということを一瞬でも感じていただければ幸いです。

畜産の魅力

そして、命のありがたみを「いただきます」と
より実感できるのがこの仕事の魅力だと思います。

目の前の子たちのおかげで収入や暮らしが支えられているだけではなく、
命を生かしながらも食を通じて私たちは生かされている。
みんな繋がっていて命のバトンを繋いでいるのです。

目の前の子たちには「ごめんなさい」よりも「ありがとう」の気持ちを持って接し、
食べる時にはちゃんと「いただきます」と「ごちそうさま」で感謝を伝えます。
肉や骨、皮として命を活かしきり、その存在が私たちの肉となる。
これからもこの「畜産」という仕事に誇りを持って胸を張って背中を見せ続け、
子ども達に「いただきます」の意味を伝えることで
命のバトンを繋いでいきたいと思います。

最後に

ニワトリは旦那さんも大学で飼っていたらしいので
子どもがもう少し大きくなったら一緒に世話して
みんなで卵を食べるのが夢です。
また、本業である「牛」に関しては
どうしても長くなってしまうので
また別でまとめてみたいと思います。

乞うご期待です!

橋本 葵

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