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[気づきの日記帳02]誰も見たことのないすごいアイデアなんて存在しない

[社会人2〜3年目の気づき]

「誰も見たこともない凄いアイデアをよろしく」
クリエイティブを仕事にしている人は、きっと一度はこんな言葉で仕事を依頼されたことがあるのではと思います。ある時は、クライアントのマーケティング責任者から、オリエンテーションの席で。またある時は、広告会社の古株CDから、競合プレゼンのキックオフミーティングで。それは、小さなアイデアに閉じこもることなく大胆な提案をしろ!という煽りの気持ちを表現した言葉とも言えるもの。ですが、いいアイデアとはなんだろうを日々悩み、考え、苦悶し続けている若手企画マンにとっては、見たこともない凄いアイデアって何なのか?という難解な問いを与えられ、深い悩みの淵に立たされるものにもなってきたのです。

新入社員の頃は、そのオーダーを真にうけて、「見たこともないアイデア」を考えてやると懸命になっていたこともありました。画像や映像を見まくり探しまくって「見たこともない」の答えとなり得るネタを探しもしました。同年代のクリエイターの中で、自分が一番先にその境地に達してやると熱くなってもいました。しかしそんなある時、所属チームの先輩にクールに言われてしまいます。

「お前さあ、見たこともない凄い企画なんて、この世にあると思うわけ?」「え、ないの?」

とある一冊の本が、その問いに、決定的な答えをもたらしてくれます。
「アイデアのつくり方」
(ジェームス・W・ヤング著、CCCメディアハウス、1988年刊)。
広告系のクリエイティブ組織にいる人であるなら、一度は手にしたことのあるであろう名著です。1時間で読み終えるほどのコンパクトな一冊ですが、出版から数10年の時を経てもなお、色褪せることのないクリエイティブ思考の真理を伝える一冊として読まれ続けています。

この本の中のもっとも有名な一説:
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

誰も見たことのない凄いアイデアを考えよと言われていた日本中のクリエイターがたちがこの一文で救われました。そうか、誰も見たことのない企画なんて成立しないんだ。そこに目指すべきゴールはないんだ。どんなに一部の大人が求めてこようとも、それに惑わされることはないんだ。そんなオーダは無視していいんだ。どんな凄い企画であっても、その本質は、すでに存在する要素と要素の組み合わせなんだ。組み合わせの新しさが重要なんだ。

人間の判断は常に相対的です。あ、新しい!と感じる人の心の中では、心にしまわれた「それまで」との比較の中で、新しい!という判断が下されています。誰も見たことのない新しいものを目にしたら、人はそれを判断する前例が存在しないために、新しいとも古いとも判断できません。心の中に基準のないものには判断は生まれないのです。クリエイティブを仕事にしている人は常に、既知の要素をネタとしながら、それが新たな意味と価値を持ちうる新たな組み合わせを常に探し求めているのです。多種多様にある組み合わせ可能性の中から、もっとも大きな差分を作る=インパクトを生み出す組み合わせを探し出して世に送り出しているのです。それは、どんなに卓越した仕事を生んできたトップランナーであっても同じです。人々の共感を生み出してきた過去の要素を深く学習し、同時に、それまで誰も思いつくことのなかった他の時代的要素との新たな組み合わせを発見し、その人ならではのスタイルでデザインをほどこし、世に送り出しているのです。福田がこれまで出会ってきたたくさんの一流クリエイターの中に一人として、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」に異を唱える人は存在していないのです。

誰も見たこともない凄いアイデアなんてない。それだけのことと言ってしまえばそれまでですが、真に企画を上達するために重要なポイントが、この気づきにあると思っています。いい企画を考えだすことの基本は、誰も思いついていない革新的組み合わせ=EDITを考え出すことなのです。天井を見つめ、革新的新しい何かが降りてくるのを待つことではないのです。偶発的なひらめきに頼るものでもないのです。
だから時代的にベストな組み合わせ=EDITを生み出すために、
1.どれだけ幅広い領域のネタを頭に格納しておくか
2.格納された要素を縦横無尽に組み合わせる柔らか思考をどう育てるか
3.誰も気づいていない組み合わせ=EDITを選び出す目を育てられるか
このシンプルな3つが高度にできる能力を育てることが重要なのです。

いち早くその事実に気づいて、組み合わせを前提とした思考での精度を上げること、そのための鍛錬を繰り返すことが大切なのです。

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