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第2話『野球とコネと単細胞』
それからの日々は、アイサン漬けだった。
朝から晩まで、起きている全ての時間、とにかくアイサンを使いまくった。
3日目くらいになると、流石に目が疲れてきて、少し使わなかった時間もあるし、1日くらい休もうかと思ったこともある。
しかし、コネを使ったやりとりを1日休むと、一気にみんなとの会話が噛み合わなくなる恐れがあった。
それほどまでに、コネでの会話のウェイトは重い。
特に、テステロの話題は
閑話休題『とある中学の裏サイト』
723:2年3組のテステロ、あれってどうなった?
724:なんか、失敗したらしい
725:なんで?
726:一人、参加しなかった奴がいるんだって
727:なにそれ。ありえなくない?
728:なんでなんで?
729:それ誰よ?
730:さあ?
731:そこまでは知らない
732:関係者とかいないの?
733:2-3の奴なら知ってるんだろうけど
734:誰かー、2年3組の人いませんかー??
735:い
第5話『We can't read our hearts』
人の心は見えない。
ある時から、アタシはそう考えている。
自分が親友だと思っていても、たやすく裏切られる。自分が何も思っていなくても、大事に思われていることもある。
だから、友情なんてまやかしだ。
でも、それでも人は生きていかなければならない。
誰かと関わり合いながら……。
アタシは芽依。
堀北芽依。
中学2年生の、どこにでもいる……ちょっとワケアリな女の子。
「練習終了! お疲れさん! 片付けた
第6話『The first step』
「おはよ、有紗。今日はもう行くの?」
「あ、お、おはよう。芽依……」
次の日の朝、アタシは、いつもより少し早く有紗との待ち合わせ場所にやって来た。
いつもアタシは有紗を待たせてしまう。でも今日は、昨日、一緒に帰れなかった分、アタシが待っていようと思ったのだ。
しかし、なぜか、有紗はもう待ち合わせ場所から少し離れたところまで歩いていた。
「もしかして、昨日言ってた用事って、朝もあるの?」
有紗は昨日
第7話『A fighter』
明確に異変を感じたのは、体育が終わった時だった。
今日は、なんだかやけに視線を感じる気がした。
そして、その感じは、体育の時、頂点に達したのだ。
今日は、1学期最後の体育の日で、水泳の授業を終えたアタシは、水着から体操着へと着替えようとしていた。
水着を脱ぎ、下着をつけるまでの間、猛烈に視線を感じたのだ。
更衣室には女子しかいないし、身体を見られても別になんとも感じない。
しかし、今日は明らかに変
閑話休題その2『2030.7.18』
2030.7.18(晴)
今日、芽衣ちゃんから、プラネタリウムへ誘われた。
鈴木くんと、私と、芽衣ちゃんで、プラネタリウムへ行こうって。
そんなことになったら、きっと、きっと楽しいと思う。
行きたい……。
でも、今は……。
さっき、鈴木くんからコネが来た。
嬉しかった。
芽衣ちゃんと私の仲を心配してくれてるみたい。
なんでもないよって言ったけど、ホントは、そんなことない。
何があっても
第8話『パンとコーヒーと共通項』
この間の木曜日、俺はホリキタからプラネタリウムに誘われた。もともとは、ノグチも誘って、3人で行く予定だった。しかし……。
「なんていうか、ゴメンね」
目の前にいるホリキタが、ぺこりと頭を下げる。
一瞬、ホリキタの着るタンクトップの隙間から胸が見えそうになり、俺は慌てて頭を下げた。
「いや、なんつうか、俺のほうこそすまん」
俺は結局、ノグチとホリキタの仲を取り持つことができなかった。
だから、俺たち
第9話『プラネタリウム』
科学館やプラネタリウムへ続くエレベーターは、ロケットの打ち上げをモチーフにしている。エレベーターが動き出す前には、カウントダウンをする音声が入り、動き出してからは、ロケットブースターの射出音が轟々と響く。そして、エレベーターの外には、宇宙空間を模した空間が広がっているのだ。
何度来ても、この光景には心が躍る。
「俺、このエレベーター好きなんだ。なんか、ワクワクしねぇ?」
ホリキタに問いかける。ホリ
閑話休題その3『帰還不能点』
「それじゃあ、二学期も元気で会いましょう! ……カズキぃ、宿題、楽しみにしてるからねぇ」
担任のミキヤ先生がそう告げると、カズキくんはニヤけながら、「そう言われると、出すしかないのねん」と言った。
あたしはすかさずツッコミを入れる。
「いやいや、宿題は出す以外の選択肢ないから!」
クラス中に、どっと笑いが起きた。
「タマキさんの言う通りよ。よろしくね、カズキ!」
カズキくんの「ふぁーい」と言う気
第11話『ホシノシズク』
——毎日が楽しくて。
——嫌なことも、すぐに楽しみの中に流されていく。
——ずっとずっと、そんな風に世界は続いていく。
——アタシは、そう信じていたんだ。
——これはアタシの、最高で最悪な、あの頃の話し。
"Offline hearts:May's lovely bad memories."
「メイちゃーーん! 待ってぇーー!」
後ろから、ドタドタと言う足音と、アタシを呼ぶ声が近