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5分で読める現代短歌

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毎週水曜日、北虎あきらが現代短歌を一首ずつ紹介しています。 「そもそも短歌ってどう読むものなの?」から「どんな種類の歌があるの?」くらいのひとに読んでもらえると特にうれしいです。
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記事一覧

スタントマン/5分で読める現代短歌27

 うつくしい歌だと思う。哀切の歌だとおもう。  おそらくは映画、のメイキングかもしれない…

北虎あきら
2週間前
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この頭に手を/5分で読める現代短歌26

 初読はインターネットだった。  わたしのTwitterには短歌の話題がときどき流れ、いくらかは…

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夜をきさらぎ/5分で読める現代短歌25

白い息に白い息被せゆく夜をきさらぎ、きみもさびしいといい /虫武一俊  おそらく〈きみ〉…

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普通のままに/5分で読める現代短歌24

真ん中にあっても二度と使われず臍はくぼんだ姿のままで /山本夏子  2016年に現代短歌社賞…

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ふへんてきな/5分で読める現代短歌23

恨まれる心づもりはできていて、でも窓辺から共に陽を見た /榊原 紘「でも窓辺から」  第二…

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人類の繁栄は/5分で読める現代短歌22

ドーナツの箱が道路に置いてある 人類の繁栄はこれから /鈴木 ちはね  第2回笹井宏之賞(20…

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ディスビデオ/5分で読める現代短歌21

This video has been deleted. そのようにメダカの絶えた水槽を見る /岡野 大嗣  岡野大嗣だいじの第一歌集『サイレンと犀』(2014)より。  木下龍也(『つむじ風、ここにあります』『きみを嫌いな奴はクズだよ』)の影響を受けたと公言しているとおり、社会や生死へのシニカルな態度、ポップさを備える。木下との共著『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』(2018)や、第二歌集『たやすみなさい』(2015)、谷川俊太郎を迎えた木下との三人共

イルカがとぶ/5分で読める現代短歌20

イルカがとぶイルカがおちる何も言ってないのにきみが「ん?」と振り向く /初谷 むい  歌集…

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手羽先の拳銃/5分で読める現代短歌19

手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗 /工藤 玲音  くどうれいん、と読みま…

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いずれきたる/5分で読める現代短歌18

あなたからきたるはがきのかきだしの「雨ですね」さう、けふもさみだれ /松平修文  松平修…

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縦書きの国に/5分で読める現代短歌17

縦書きの国に生まれて雨降りは物語だと存じています /飯田 和馬  初読で意味がわかって、「…

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小鳥をのせる/5分で読める現代短歌16

ここはしづかな夏の外側てのひらに小鳥をのせるやうな頬杖 /荻原 裕幸  荻原おぎはら裕幸の…

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ひとりの躑躅/5分で読める現代短歌15

さみしいは何とかなるがむなしいは 躑躅の低いひくい木漏れ日 /千種 創一  第二歌集『千夜…

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四葩がゆれて/5分で読める現代短歌14

曲がつてる道は遠くが見えなくて安心できた 四葩がゆれて /魚村 晋太郎  四葩(よひら)は、紫陽花のこと。鬱蒼と茂った紫陽花の道が、さらに曲がっている。先行き、不明。〈ゆれて〉いるからには、たまのような紫陽花の花々が、わずかばかりに伸びた茎の先に付いているのだろう。行く手を阻む紫陽花に目を向ければ、ひとつふたつの大きな球形だった紫陽花の色が、小さな花の集合だと分かる。さらに細かく視れば、その小さな花に見えていたひとつひとつは額であって、花弁らしい花弁はないが確かに蕊などを抱