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なんらかのレビュー

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2018年4月の記事一覧

ああ、愛しのごみ屋敷:『堆塵館』

ああ、愛しのごみ屋敷:『堆塵館』

今日はエドワード・ケアリー作、古屋美登里訳の『堆塵館』レビューです。小説です。もともとは十代の少年少女向けに書かれたものだそう。三部作なのですが、私は一部『堆塵館』と二部『穢れの町』が特に好きです。

まずは、あらすじ(東京創元社のページより引用)。

ロンドンの外れの巨大なごみ捨て場。幾重にも重なる山の中心には『堆塵館』という巨大な屋敷があり、ごみから財を築いたアイアマンガー一族が住んでいた。一

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本は友人、そしてサーフボード:出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

本は友人、そしてサーフボード:出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』を読んだ。すぐ読み終えた。めちゃめちゃ面白くてめちゃめちゃ勇気が出た。久しぶりに、人生に前向きになれた。元気を出すためにすることは、たくさん寝ることでも高級スーパーに行くことでもなかった。この本を読むことだった。

まずは手短にあらすじ。

・著者は花田菜々子さん。
ヴィレッジヴァンガードの店長を12年してい

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休み休みつらくてもいいじゃんか:『岡崎に捧ぐ』

休み休みつらくてもいいじゃんか:『岡崎に捧ぐ』

私は、私だけがつらいと思いたい。
他の誰よりも私がつらいと信じたい。
私のつらさについて話してもどうせわかってもらえないから(というか、向こうが「わかるよ」というのがいまいち信用できないから)人に話したくはないけど(というか話してはいて、その度に「やっぱりだめだった!」と敗れ続けているけど)、なんか、寄り添ってもらった、って実感がほしい。

…というときに読むべき漫画が『岡崎に捧ぐ』である。

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仲良しじゃない人と共有する、輝く時間について:『ハレ婚。』

仲良しじゃない人と共有する、輝く時間について:『ハレ婚。』

「非イスラム教徒の日本の人が、一夫多妻制度をやったらどうなるんだろうなあ」とは、やっぱり考えるのであって、そんな思考実験を漫画にしてくれている(たぶん)のが、『ハレ婚。』である。

家族について考えさせられる作品だということで読み始めたのだが、読み進めるうちに共通するものがあるとひらめいたのは、意外にも、『SLAM DUNK』だった。

私の人生の目標として、私のことをいいと思ってくれる人とばっか

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六方美人:『A子さんの恋人』

六方美人:『A子さんの恋人』

「八方美人」は、顔を向ける人の視点からみた言葉だけど、向けられる八方からその人を眺めたら、たぶん、よくても「六方美人」くらいなんじゃないかね。

A子さんの恋人は、「二方ぶす」も丁寧に描いている作品で、だから私は好きだと思う。もっと言えば、「六方ぶす」も「一方ぶす」も、色々出てきて、それぞれがきちんと描かれているから、好きだと思う。

例えばA太郎という人が出てくる。この人、モテる。恋愛だけじゃな

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