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『Good to Great』④負けないための組織づくり

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『Good to Great』/ Jim Collins

前回まではGreatな会社になるために必要な人材についてがテーマだった。Greatなリーダーとメンバーが揃ったら、いよいよ「何をするか」を考える段階。

事業内容がサービス業であっても、製造業であったとしても、Greatな会社には共通のプロセスがあるという。本章以降ではそれらについて学んでいく。

正しく課題認識をするために

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉がある。

勝敗の理をうまくまとめた金言であり、スポーツ・政治・ビジネスなど多くの場面で用いられる。野村克也元監督の座右の銘でもあったので、親しみのある人も多いと思う。

企業の業績についても同様だろう。不思議なことに、企業はほどんど努力をせずに業績を伸ばせてしまうことがある。好景気のとき、商品が予期せずヒットしたとき、予算消化のための大量受注があったときなどがその典型例。一方で、失敗するときには必ず理由がある。単に運が悪いから負けたということはあり得ないのだ。

著者のジム・コリンズは、残忍な事実(Brutal Facts)を正しく認知し立ち向かえることをGreatな会社になるための条件として挙げている。うまくいかない理由を正しく分析し、逆境を乗り越えることで革新への道筋が見える。そのためには、悪い報告を出し惜しまない風土が不可欠であるという。

悪い報告を出し惜しまない風土づくり

もし、メンバーが躊躇なく悪い報告ができる風土が整っていればどうなるか。損失あるいは遅延のリスクにつながる情報は全員に共有され、危機回避につなげることができる。そんなGreatな風土をつくるための方法として、リーダーが行うべき4つのことが示されている。

1. リーダー自身で答えを決めず、メンバーに考えさせること。
2. 対話や議論の場を設けること。ただし、決して威圧してはいけない。
3. 提案や提言に対して批判しない。批判させない。
4. 顧客からの意見を収集する仕組みをつくり、耳が痛い情報を重視する。

1~4共通して言えることは、リーダーはメンバーのための仕組みづくりに徹するということだ。トップダウン方式ではなく、メンバーの建設的な議論から意思決定する。マネジメントによる統制を行うことによって、組織の集合知を最大限に活用できるようになる。

減点式評価、派閥争い、ことなかれ主義...。もしあなたの所属組織にこれらが当てはまるるのであれば、残念ながらGreatな組織とは程遠いだろう。保身のために「良い報告」しか上がらない会議からは、本当に立ち向かわなければならない課題は見えづらい。

余談

これに類似する組織論はマネジメントの教科書にしばしば登場する。しかし本書が特別なのは、Greatな人材なくしてGreatな風土は成立しないという本質を示したことだろう。

土台が不安定なところに家が建てられないのと同様、いきなり風土づくりから着手するとおそらく失敗する。成功した企業のルールややり方を表面上真似するだけではいけない。最初に人。次に風土。そして文化。それを念頭に置く必要がある。

組織論・マネジメントの本としては、『管理しない会社がうまくいくワケ』がオススメ。『Good to Great』に書かれている内容と共通点も多く、より具体的な事例をとともに理想のチームについて考えることができる。

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