『The First 90 Days』⑤組織再編のための第一歩
『The First 90 Days』/ Michael D. Watkins
前回の記事:『The First 90 Days』④新環境での仲間づくり
転職のノウハウ本は数多くあれど、転職後の振舞い方についての指示書は少ない。そのため本書は極めて稀有な実用書といえるだろう。
今回は、新しい環境へ異動した2ヶ月後を想定したプランについてまとめる。
組織の評価をする
最初の1~2ヶ月を終えたら、いよいよ行動に移す段階へと入っていく。このときには既存メンバーと良好な人間関係を築き、あなたの意見が受け入れられやすい状況になっていることが望ましい。
これまの観察結果を元に、組織の現状を整理していく。整理する観点としては、組織戦略・組織構造・業務プロセス・メンバーのスキルなどがあげられるだろう。
組織の現状整理の観点(例)
組織が目指す方向性は正しいのか?
メンバーの役割分担や関係性に問題はないか?
効率的で持続可能なプロセスが構築されているか?
メンバーは業務遂行を行うためのスキル水準を持っているか?
その後、組織の目標と解決するべき課題を宣言する。曖昧な目標ではなく数値目標を設定することができれば、メンバーとの認識齟齬を避けることができるだろう。また達成するための条件も明確にすることができる。
メンバーの評価を行う
組織の現状を評価し、具体的な目標と課題を設定できれば、次に行うのは各メンバーの評価だ。
上司とミーティングした際と同様、各メンバーの価値観とビジョンを調査する。そのために、メンバーそれぞれの経歴や過去の業績を知ることが重要になるだろう。
もしメンバーの数が少なければ、一対一のミーティングを活用しても良い。時間をかけなくても個別に話し合う機会を作ることが大切だ。
メンバーの情報が整理できれば、誰が新たな組織目標に貢献してくれそうか?そのために能力を発揮してくれそうか?ということを判断する。
熱意があって優秀なメンバーは誰か?あるいはその逆でパフォーマンスの低いメンバーは誰か?決してあなたの好き好みではなく、新たな組織の目標と課題に照らし合わせて評価していく必要がある。
「正しい」メンバーを選ぶ
優秀で熱意あるメンバーは自律して行動してくれる可能性が高い。
一方でパフォーマンスの低いメンバーがいれば、配置転換を行ったり、レベルアップを促したり、最悪の場合は組織から取り除いたりする必要があるかもしれない。おそらく、これが最も難しいステップの一つだろう。
何もそこまでしなくても...と思うかもしれないが、組織の成功は「何をやるか」ではなく「誰と働くか」次第で決まるという研究結果もある。それほどにメンバーの編成は慎重に検討すべき案件なのだ。
とはいえ... これはあなたに強力な人事権があればの話。本書は日本企業向けに書かれた本ではないし、一方でマネージャークラスの人間に向けて書かれた本である。多くの日本人読者にとってここまでの権限はないだろう。
それでも、「優秀で熱意あるメンバーに権限を委譲する」「パフォーマンスの低いメンバーに寄り添い、活躍するための協力をする」といったようなできることは必ずあると思う。
本書をさらに活用するために
本書で語られている以外のフレームワークや実用書の内容を併用すれば、さらに効果的な判断ができると思った。
例えば、メンバーの評価時には2-6-2の法則など人材評価のフレームワークが使えるのではないかと個人的に考えている。
メンバー選定の重要性については、以前解説した『Good to Great』(邦題:『ビジョナリー・カンパニー ② 飛躍の法則』でも同様のことが指摘されていた。併せて読み直したい。
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