『The Culture Map』①異文化の測り方
『The Culture Map』/ Erin Meyer
経営思想家ベスト50(thinkers50)にも選ばれたErin Meyerが著者。
本書には、多国籍チームをマネジメントするためのノウハウがちりばめられている。
海外企業で働く人はもちろん、外国人上司を持つ人、海外代理店とやりとりがある人など、国際ビジネスに携わる人にとっては必読の書だろう。
また、各章に登場する異文化しくじりエピソードは読み物としても十分に面白い。
英語レベルも比較的平易で、英語学習にもオススメ。オンライン英会話の教材に使ったら講師との会話がかなり盛り上がった。
異文化理解のための8つの尺度
本書は各地域の文化を評価するために8つの評価観点を紹介している。それぞれの観点から文化を相対的尺度(scales)で評価していく。
8つの観点については以下の通り。
1. Communicating
2. Evaluating
3. Persuading
4. Leading
5. Describing
6. Trusting
7. Disagreeing
8. Scheduling
詳細については別記事で説明する予定。なので、本記事では僕自身が本書を読んで得た教訓についてまとめようと思う。
まずは自国の価値観を知ることが大事
異文化評価は相対的に行うもの。多国籍メンバーの文化を測るためには、日本文化が国際的にどのような評価をされているかを知る必要がある。
普段から馴染みのある自国の文化でも意外と気づいていない特徴がある。実際に僕もこの本を読んだことによって、日本文化の再発見があった。
例えば「Leading」の章によると、日本は極めて階層的なマネジメント制度を好む国であるという。敬語や上座などの慣習や社内の組織構造などを思い出し、腑に落ちる内容だった。
本書を読めば、日本文化は独特で極端であることがわかる。「日本の常識は世界の非常識」であることを理解したうえで、異文化を知ることが大切だと思った。
文化は二分割できない
「あの国は時間にルーズだ」「アジアは階層社会だ」など、僕たちは文化を分かりやすく二分割して理解しようとすることがある。
しかし、実態はもっと複雑なのだろう。日本と比べて時間が厳格でない国々でも、自由度の高い国とそうでない国がある。ヨーロッパと比較して階層社会が好まれるアジアの中でも厳格な管理が好まれる国と比較的ゆるやかな国がある。これを理解するためには尺度として文化の違いを認識する必要があるだろう。
似た文化の国同士でのやりとりにこそ細心の注意を
日本人にとって、中国や韓国は比較的文化が似ており価値観も近い。だからこそ油断しがちになるが、むしろ関係が近い文化圏の人々とのコミュニケーションにこそ気をつけなければいけないと思った。
極端に異なる文化と接するとき、僕たちはその違いに簡単に気づくことができるし、相応の準備をするだろう。
しかし、一方で似ている文化圏でのコミュニケーションは何とかなると勘違いしてしまうかもしれない。そして、微妙なずれが大きなトラブルに発展するリスクもあるのだ。
事前に各観点ごとにどれくらいの差があるのかを調べておくことで避けられるリスクもあると思う。
まとめ
『秘密のケンミンSHOW』が好きな人間であれば、本書は楽しんで読めると思う。
一方で「大阪人は全員おしゃべり」というのが明らかな間違いであるのと同様、国ごとの文化を完全に一括りにすることは誤りだろう。国ごとに文化の特徴や傾向はあるかもしれないが、人それぞれ考え方や性格が異なることも事実。大枠として文化の違いを理解することは大切だけど、個々人によってアプローチを変えることも忘れてはいけない。
もちろん、複数の文化背景を持つ人や、国籍と居住地が異なる人もいるしね。
余談
本書の日本語版タイトルは『異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』。
原題のまま『カルチャーマップ』じゃダメだったのかなあ。原題のまま日本でもヒットした『FACTFULNESS』みたいな例もあるわけだし。
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