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Forget Me Not

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#ウィスキー

Forget Me Not(第14章)

Forget Me Not(第14章)

これは何?
 絵を描けなくなった画家である日向理仁を中心に、湖畔で起きた失踪事件の解明を試みるお話。

第14章
 「この前は気分を害するような話をして悪かった。すまない。」
こんな一文から始まる手紙を、私はロクスケ宛に書いた。
ロクスケを家に呼んだ日から5日が経過したが、あの日から私は気が変になっているようだった。

胸の内に留めている間は気分的に楽になるために早く打ち明けてしまいたいと感じるも

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Forget Me Not(第12章)

Forget Me Not(第12章)

これは何?
 絵を描けなくなった画家である日向理仁を中心に、湖畔で起きた失踪事件の解明を試みるお話。

第12章
 私はキッチンに立ち、ここにやってくる前の自分が何をしようとキッチンへ向かったのかを懸命に思い出そうとしていた。私の息で膨らませたはずの考えが、外部からの光を鈍い虹色に反射しているはずのところ、そうかと思えば意図せぬタイミングでパッと消える。子供じゃああるまいし、自分の考えは自分の金庫

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Forget Me Not(第10章)

Forget Me Not(第10章)

これは何?
 絵を描けなくなった画家である日向理仁を中心に、湖畔で起きた失踪事件の解明を試みるお話。

第10章
 「どうも、こんばんは。青葉です。ちょっと、一緒に飲みませんか。」
雨粒が屋根を叩く音に混じってインターホン越しに聞こえる声もまた、湿気を帯びていた。
何かしらの期待や希望で織られたソフトな手触りの布に包まれていながらも、そこから漏れ落ちる滴。

こういうものは立ち止まって分析するよう

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Forget Me Not(第2章)

Forget Me Not(第2章)

これは何?
 絵を描けなくなった画家である日向理仁を中心に、湖畔で起きた失踪事件の解明を試みるお話。

第2章
 雨が降らない日、私は車に乗って近くの町へ出掛ける。時間はだいたい決まって午前10時ごろ、コーヒーとパンの簡単な朝食を済ませてからになる。ひどい寝坊グセのある新聞配達人だって、その時間までに朝刊を投函しなかったことはない。遅くなった朝には一口サイズに個包装されたチョコレートが一緒に入って

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