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半年ごとに領有権が変わる島

 二つの国の国境には、しばしば領土問題が存在します。領土問題については、過去に下のような記事を書きました。

 今回は、フランスとスペインの間にある小さな島の話をしましょう。ここは係争地ではなく、「定期的に領有権を譲り合っている」土地です。

 大西洋に流れるビダソア川は、フランスとスペインの国境をなしています。この川に浮かぶ小さな島がフェザント島です。

 フェザント島は、フランスとスペインの共同統治領となっており、半年ごとに領有権を譲渡しあっています。毎年、2月1日から7月31日まではスペイン、8月1日から1月31日まではフランスが管理するのです。

 なぜ、このようなことが行われているのでしょうか。

 フェザント島は、古くからフランスとスペインの外交交渉の場として使われてきました。例えば、政略結婚で相手国に嫁ぐ王女の引き渡しなどが行われました。

 17世紀、カトリックとプロテスタントの宗教戦争である三十年戦争が起きました。ブルボン朝のフランスとハプスブルク朝のスペインは、ともにカトリックでしたが仇敵同士であり、三十年戦争でも戦いました。

 三十年戦争は1648年のウェストファリア条約をもって終結します。しかし、フランスとスペインの戦争は続き、1659年のピレネー条約によってようやく終わりました。

 ピレネー条約が結ばれたのがフェザント島ですが、その際、この島が両国の共同管理下に置かれることが決まりました。

 さらに1856年、バヨナ条約が結ばれた際、フェザント島は半年ごとに両国が交代で管理することになりました。

 こうして、一年の内半分はフランス領、半分はスペイン領になる不思議な土地ができたのです。

 

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