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誰のものでもない土地の話

 領土をめぐる争いは、日本だけでなく世界中にあります。

 領土係争地といえば、「双方が領有を主張する」ものを思い浮かべるでしょう。しかし、中には領土紛争の結果、「誰も領有権を主張しない」状況になった土地があります。こうしたどの国も領有していない土地を「無主地」といいます。

 エジプトとスーダンの間の「ビル=タウィール」と呼ばれる地域がそれです。下の地図の白い部分にあたります。

ビルタウィール

 なぜこのようなことが起きるのか。国境地帯の東にある緑色の地域「ハラーイブ=トライアングル」の存在がヒントです。

 この地域には油田や金鉱があるため、エジプト・スーダン双方が領有権を主張しています(エジプトが実効支配)。

 エジプト側は、植民地時代(1899年)にイギリスが引いた下の境界を根拠にしています。

ビルタウィール2

 一方、スーダン側は1902年に引き直された境界をもとに、領有権を主張しています。

ビルタウィール1

 双方が、ハラーイブ=トライアングルが自国に入った境界を主張した結果、ビル=タウィールについてはどちらの国も「自国領ではない」ということになりました。

 ビル=タウィールは資源もない砂漠地帯なので、双方が相手に押し付け合う形になっているのですね。

 こうして、ビル=タウィールは「どちらも領有権を主張していない」という奇妙な係争地となってしまったのです。

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