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【ドラえもん考察】「全く役に立たない道具」はなぜ発明されたか 

 便利で夢のあるドラえもんの秘密道具ですが、時々おかしなものも登場します。

 大長編ドラえもん『のび太とブリキのラビリンス』に登場した「荷物運び用荷物」は、「意味のない道具」としてファンの間で有名です。

「ホテルのボーイさんに恥をかかせないための荷物」と説明されますが、なぜこのようなものが開発されたのでしょうか。

何の場面で出てきた?

 問題の道具が出てくるのは、のび太とドラえもんが、ブリキ人形がスタッフを務める不思議なホテル「ブリキンホテル」を訪れたシーンです。

 ボーイの「ソレハコマル。荷物ハコビガボクノシゴトナンデス」という台詞に、鍵があると私は考えています。

産業革命期のイギリスで起きた運動


 ここで、唐突ながら世界史の話をしましょう。

 18世紀後半のイギリスで始まった産業革命では、繊維部門で技術革新が起き、生産性が大きく向上しました。

 ところが、機械の普及は既存の職人たちの仕事を奪い、生活を破壊するのではないかという不安をもたらしました。



 1811年ごろから17年にかけて、イギリスの繊維工業地帯では労働者が機械を打ち壊す「ラッダイト運動」が散発的に発生しました。

 現在でも、「AIが発達すると○○の職がなくなる」といった主張を見かけます。技術革新は、特定の職業の人の稼ぎ口を奪う可能性があり、しばしば軋轢の原因になるのです。

「荷物運び用荷物」は雇用を守った?

 さて、ドラえもんのやってきた22世紀の技術を考えてみましょう。
「四次元ポケット」を始め、重くてかさばるものを楽に持ち運べる技術が発明されています。

 こうした技術が開発された時、ホテルのボーイに限らず「モノを運搬する仕事」全般が打撃を受けたことは想像に難くありません。

 荷物を持ち運ぶ必要がなくなれば、「荷物を運ぶ仕事」は消滅します。しかし、そうした職についていた人々が路頭に迷ってもいいのか。

 技術の進歩を止めずに雇用を守るための妥協が図られ、「荷物運び用荷物」は生まれたのではないか――仮説にすぎませんが、これが私の出した現時点での結論です。


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