ヒトラーの「秘密のリラックス法」とは
天才的な演説の才能を持ち、国民を扇動したことで知られるヒトラー。演説の秘密を知るのにお勧めの書籍は、高田博行『ヒトラー演説』(中公新書)です。同書には、ヒトラーが演説の技術を高めた工夫などの「舞台裏」が詳しく紹介されています。
その中には、ちょっと笑える意外な逸話も…
ヒトラーの師となったオペラ歌手
演説のため屋外で喉を酷使することの多かったヒトラーは、1932年ごろに声帯を痛めてしまいました。そこで、彼は「プロ」の技術を学ぶことにしました。極秘にパウル・デフリーントというオペラ歌手を招聘し、発声術のレッスンを受けたのです。
デフリーントは発声法だけでなく、怒りや喜びなどの感情を表す語句には感情をこめて話すと言ったテクニックなども伝えました。それにより、ヒトラーの演説はさらに魔力を増したといいます。
ヒトラーの精神集中法
ヒトラーの信頼を受けたデフリーントは、彼の部屋に自由に入ることを許可されました。
ある夜、デフリーントが部屋へ行ってみると、ヒトラーはシャツとパンツだけで仰向けになって、両足を高く上げて壁にもたせかけていた。「演説の前には、私はできる限りこの姿勢をするんだ。記憶力が高まる」とヒトラーは説明したという。
スポーツ選手がしばしば行っている「ルーティン」に似た行動でしょう。気持ちをリラックスさせ、集中力を高める効果があります。想像するとシュールではありますが。
気持ちが高ぶったときの対処法
デフリーントは、演説中に気持ちが高ぶったとき、落ち着かせる方法もアドバイスしています。それは、何かお守りのようなものを持っておき、興奮したらそれをじっと見る、というものです。
助言を聞いたヒトラーは、銀色の犬の首輪を取り出し、それをお守りにしたそうです。
デフリーントは1932年4月~11月にかけて、充実したレッスンを行いました。ヒトラーは魔術のような弁論術を用いましたが、その魔術の種明かしを見るような気分にさせる逸話です。
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