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知られざる江戸城の痕跡~外堀跡を歩く(前編)

 江戸城といえば、東京都千代田区にある城郭で、現在は皇居となっている場所を思い浮かべるでしょう。しかし、その部分は江戸城の中枢部で、城郭全体の一部にすぎません。

 往時の江戸城の外堀は、現代人には想像もつかないほど広大な地域に拡がっていました。JR飯田橋駅西口にある掲示板の図が分かりやすいでしょう。

 現在の御茶ノ水駅や水道橋駅、飯田橋駅、市ヶ谷駅、四ツ谷駅、さらに赤坂見附駅、虎ノ門駅あたりが外堀でした。(近代以降、外堀を埋めた跡地が鉄道用地になったのがわかりますね)

 とりわけ、飯田橋駅から南に約4キロほどの区間には、外堀や門、櫓の跡が点在しており、国指定史跡「江戸城外堀跡」となっています。

飯田橋駅:牛込門跡

 江戸城外堀跡散歩の起点は、JR飯田橋駅です。液を出るとすぐに「牛込門跡(牛込見附跡)」が目に入ります。
 城の外郭の門は、敵を監視する役目を負っていたことから「見附」とも呼ばれます。

切込接(左)と打込接(右)の境目

 石垣は、巨石を綺麗に成形して隙間なく積んだ「切込接きりこみはぎ」と、加工した大きな石の間に小さな石を詰める「打込接うちこみはぎ」を使い分けています。正面から見える部分は前者、見えにくいところは後者を用いているのがわかります。

「阿波守」の刻印がある

 普請に当たったのは阿波徳島藩主の蜂須賀忠英です。ここの石垣からは「阿波守」と刻まれた石が見つかり、近くで展示されています。

飯田橋~市ヶ谷間の外堀

 飯田橋駅から南に歩くと、かつての外堀の一部を見ることができます。

新見附橋より

 両駅の間にある新見附橋の上からの眺めです。

東西線市ヶ谷駅の展示コーナー

 東京メトロ東西線の市ヶ谷駅の改札内には、江戸城の石垣を再現したコーナーがあります。

発掘の成果をもとに再現

 城の石垣の裏側には、「裏込石」という小さめの石が詰められていますね。排水を良くするための工夫です。

四ツ谷駅:四谷門跡

 市ヶ谷駅から東京メトロで一駅乗り、四ツ谷駅で下車します。ここには四谷門(四谷見附)の跡があります。

 江戸城の半蔵門から四谷門を出ると、甲州街道につながります。四谷門も牛込門も、桝形と呼ばれる方形の区画(侵入してきた敵の動きを制約する仕組み)があったのですが、その面影はありません。

 開発の進んだ東京の真ん中に、これほど江戸時代の痕跡が残っていることに驚かされます。

(後編はこちら)

 

 


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