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誰が為に秋は来る

残暑の厳しい時期はまだ夏の名残りを感じ、それが過ぎるといつの間にか寒くなり、もう冬が近いのかなと思う。そう考えると秋とはずいぶん曖昧な季節なのかも知れない。夏と冬の狭間の季節。

しかし秋の存在感はなかなかのものだ。個人的に秋は紅葉の綺麗な時期だなと思っているのだが、それを措くとしても、○○の秋という表現の多さに驚く。食欲の秋、運動の秋、芸術の秋、読書の秋、などなど。なんでもよいから秋に押し込んでしまえという投げやりな雰囲気が無いでも無い。

確かに小学校の運動会は秋に行われていた。文字通り「秋の大運動会」と銘打たれていたように記憶している。まあ、冬場に屋外で活動するのは寒くて億劫だし、燃え盛る夏の暑さの中で身体を動かすのは自殺行為に近い。今年の夏の、あの馬鹿げたスポーツイベントを尻目に散々議論された通りである。残るのは春と秋だが、年度が変わる春は入学式や卒業式などの行事でてんてこまいなわけで、つまり消去法によって秋が選ばれているのだろう。

芸術の秋というのも個人的には不思議で、なぜ秋?と思わざるを得ない。日本で1番大きなアートイベントはアートフェア東京だと思うのだが、これは毎年3月に開かれる。世界的に有名なアートバーゼルは6月の開催だ。研究休暇をスペインで過ごしていた2018年に片道7千円ほどの飛行機に乗ってバーゼルを訪れたのは良い思い出である。芸術イコールアートフェアというのは偏った見方かも知れない。が、それを考慮に入れても、秋が芸術の季節であることにさほど根拠は無いように思う。

食欲と読書については、言うまでもなく、これは通年だろう。少なくとも季節に関係なく私は腹を空かせるし本も読む。とはいえ食欲に関しては、人間がまだ冬眠の習慣を持っていた頃、食料が消えゆく冬を前にして秋にたらふく食べ物を腹に貯め込んだことと関係があるのかも知れない。

まあよい。とにかく理由はよく分からないが、とにかくせっかくの秋なので、私も人並みに美味しい物を食べ、身体を動かし、絵画などを愛で、読書に勤しもうと思う。皆さんもきっと同じだろう。

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