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『アイカツ!』と「どんなアイドルがどんなことをしても決して動じない心(DDD)」について~「アイカツおじさん」的考察~

まあさまざまな「やりがい搾取」と「身動きの取れなさ」で
心も身体も沈んでいるときはそこから全力で「解放しよう」
としている作品を読んだり観たりするのが一番。
(映画なら植木等の「無責任男」シリーズ、漫画なら
「紙の砦」をはじめとした初期の手塚治虫作品とか。
こうしたものは結構昔からあるものですけど)

といふことで所詮テレ東の持つパワーではオンエア地域に
含められなかった分東北には届かなかったけど、東北・関東の
「大震災後におけるアニメ文学の奇跡(軌跡)」といふ点で
観るならばその「コメディしかやりたくない」といふ
貫き通し方で女児玩具でトップに立つコンテンツにまでは
成長した『アイカツ』は『ガルパン』と共に必ず抑えて
おくべき作品だとは思う、といふ信念に基づいて、
案の定「アイカツおじさん」的考察で
こう「アイカツはいいぞ」と語ってみようと。

最初「アイカツ!」にまつわる考察で「すごいリテラシー
高いな・・・」を感じたのは、はじめのOP(Signalize!)
に付けられたこんなたとえでした。

稀勢の里があっさりともろ差しになった時くらいに不安になるOP


https://m.youtube.com/watch?v=ZqtJ39GvLTg&pp=ygUJU2lnbmFsaXpl

はじめにこの「アイカツ」界を統べるアイドル
(神崎美月◆寿美菜子[ミュージックレイン])
の代表曲がボサノバのラップ(Move on now!)である
とか非常に「攻めた」オリジナル楽曲の中でも、かなり
おどろおどろしいイントロで本当に不安になりそうな
感じではじまるOP曲を「稀勢の里があっさりともろ差し
になった時くらい」と表現する着眼点を持っている人が
支援している「アイカツ!」はすさまじくリテラシー
(知的評価)が高いな、と当時から思っていたものでした。

あとはやはりはじめから完成されてはいたアバンの登場
ガイダンス。
「私の熱いアイドル活動、アイカツ! 始まります!
フフッヒ!」
(やはりここは『サザエさん』の「ンガング(鼻濁音の
発音が正しく綺麗)」と並んで「フフッヒ」は譲れない)

それと共にはじめの主人公である星宮いちごとかつて
アニメ映画『鋼の錬金術師』に10歳で参加し、亡くなる
寸前の内海賢二氏に激賞されていた◆諸星すみれ{劇団
ひまわり}を「然(しか)と見よ」する為のアニメだと
思い知らされるようになってくるワケですが。

ま、美月さんはおそらく終生内海賢二が追いかけていた
水樹奈々リスペクトの影響を受けた最強キャラの理想像
なのだし、主人公星宮いちごの声優は晩年衝撃を受けて
とりわけ真面目かつ熱心にアフレコしていたとの噂も
ある映画ハガレンで見出された諸星すみれでここまで来た、
といふ実力の裏打ちがあるわけだし。

そこで上手く立ち廻るトリックスターが「あおい姐さん」。
(霧矢あおい◆田所あずさ(ホリプロ→ホリプロ際物))
アイドル博士のあおい姐さんがいちごを「スターライト
学園」へと導いていくサマは流石の手管で、まあ逆に
友達ポジションは「裏切れない」のセオリーがある為に
いちご不在時に深刻な悩みと葛藤があるのもまた一つ
「あおい姐さん」の魅力ではあるのですが。

https://dic.pixiv.net/a/%E7%A9%8F%E3%82%84%E3%81%8B%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%AA%E3%81%84

特に初期で観られた手法が「アタッキングサード」。
「(主に攻撃側の)3人目の動き」を現すサッカー用語の
一つですが、転じて会話術のバリエーションとしても
用いられるやり方。『アイカツ!』で言うと・・・、
やっぱり原典は6話だったか。

あおい「例えるなら美月さまはカレーでいちごは
らっきょう」
いちご「えー、ゆで卵がいい!」
あおい「美味しいのに」

6話「サインに夢中!」

そこで「あおい姐さん」がすかさず「アタッキング
サード」で切り込み「美味しいのに」 と言わせる
センスがたまらない。まあ後で述べますが、ここいら
へんがいかにも綾奈ゆにこ脚本ですね。

あとやはり初期に顕著なのはサンライズがメイン
なんだけど、「カリ城」から始動しはじめた旧TMS
(東京ムービー新社)の色が強い(巨人の星やバカボン
(初・元祖)なんかにもルーツを辿れる)テレコム・
アニメーションフィルムが関わっていたのでキャラの
主線がすごく太い、ってのも印象の一つとしてはある
ような(まあそこは友永和秀とかがいるわけだし、
どうしても線が太い1年目、って印象はあったかと)。

http://blog.livedoor.jp/katayoru/archives/29327763.html

https://livedoor.blogimg.jp/katayoru/imgs/5/0/500506b0.jpg

この作品でやはり信頼出来る脚本家を2人記憶出来た
のはその後のアニメ視聴にすごく役立ちました。

一人目は綾奈ゆにこ。6話のサイン会回「サインに夢中!」
をはじめ、思い入れの強い回が多く、ゆにこ回を追うだけ
でもそれはそれで楽しい。特にインパクトが強いのは、
18話のらいちきゅん女装して学園潜入の18話「チョコっと
らぶ」とかえで寿司とユリカ様回の渾身脚本に彩られた
第79話「Yes! ベストパートナー」。
 一口に言うと綾奈ゆにこは「ムダのない「けいおん!」
みたいなシナリオが過不足なく書ける人」。
ここは思い入れ強いので詳細は別件で書いた方がいいかな。

二人目は「過不足を感じることなく多くのキャラに台詞を与えられる
奇跡の魔術師」大知慶一郎。第13話のいちごが正月太りで
「美少女キャラを太らせる描写」に驚嘆する「カロリーの
悲劇!」をはじめとして、キャラの使い方とその人数の
巧みさに恐れ入る。本当に端役に至るまで目の行き届いた
脚本の台詞配りが出来るすごい人。
(太っているから、が悪いのではなく「明日から、明日
から」と嫌なことを先延ばしにする姿勢はアイドルとして
輝きたい自分を忘れてるから、に作用してアイカツシステム
が作動しない展開は天才的。「怠惰な生活をしてるとアイカツ
(アイドル活動)に響く」といった現実のアイドルにも
それとなく警鐘を鳴らすくらいのスタンスを主軸にして
ストーリーを構築してるのには感心した)

最近だと『ウマ娘』や『まちカドまぞく 2丁目』などで
そんなミラクルを見ることが出来ます(『ウマ娘』1期と
ほぼ同時期オンエアだった『ヒナまつり』は脚本と監督が
双方に参加していて、この時期(2018年第2クール)の
前半戦を大きくリードしてたんだっけ)。

後半に行くにつれ、ちゃんと「歌詞のアナリーゼ(分析)」
に主眼が置かれたタイトルが増えていたのも「アイカツ」の
いい特長。特に初期ED「カレンダーガール」は複数の
アナリーゼ回があるのに加えてあかり編の最終話(第178話)
にも起用された超重要曲。
(第22話「アイドルオーラとカレンダーガール」/
第50話「思い出は未来のなかに」(この歌詞はリプライズ
(2番からラスサビに向かうの前にあるCメロ)の歌詞
アナリーゼだったりする)のでフルコーラスかかります)

『アイカツ!』はシリーズとして非常にバラツキの偏差が
大きいので主にいちご編からあかり編までの正伝とも
いえる『アイカツ!』と「ホリプロフレンズ」と化して
心機一転し、「あのホリプロがよくもここまで改心した
もんだ」と思ってたら、いつの間にか「際物」という名の
「インターナショナル」に所属声優を封じ込めてしまって
アイムのいかにもなBBAのウジウジに踏み潰されて
しまった『アイカツフレンズ』の話になるのが、かくも
厄介なアイカツおじさんのセレクトにはなってしまうの
ですが。

因みに、のとりあえずな結語としては終了した頃に書いた
この項目から引いてみる。

カードダス的に世代交代を急ぎ過ぎたあまり「サイロ・
エフェクト」(日本的に言うとタコツボ化)が進みすぎた
結果、いちごちゃんの持ってた「フォレスト・ガンプ的
寓話」に基づく震災後文学アニメの電通的アプローチは
本質的に東北には届かず、あかり世代の努力が勤勉化
しすぎて逆に「東日本大震災」のハーフ・ディケイド
(5年後)に届かないまま並々ならぬ覚悟で「アイカツ!」
が性急に終わってしまったのが非常に残念な感じでもあり。

なので、折角平和になったのだから「パーッとやり
ましょう!」といふ喜劇を真面目な植木等にやらせた
「無責任男」シリーズや、「戦争が終わる!おおっぴらに
漫画が書ける!」を大きなエネルギーに変えて邁進した
手塚治虫のエネルギー同様、『アイカツ!』の御柱祭りで
サンライズ立ちしたいちごが木を伐採してクリスマス
ツリー作る話とか観ると、元気にはなれる。

だから「『アイカツ!』はいいぞ」とは言えるが、やはり
長期シリーズなのでところどころ「混ぜるな危険!」な
作品でもあるから、肝腎なところで「ハコ推し」に
なりきれないのも「うんうんそれもアイカツだね!」
の一つでもあり、ジレンマでもあるんですけどね。


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