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諏訪原小説コレクション

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#シュール

【小説】野菜の一生

 やあ! ぼくはナス! ヨシイエおじさんの畑で育った大きくて新鮮なナスさ!
 ぼくは人間においしく食べられるためにここまで育ってきたんだ。今日の朝収穫されて、袋に詰められて、直売所に並べられて。そしてぼくは今さっき人間に見初められて、ほかの野菜たちと一緒に車で運ばれている。
 ああ、ぼくはどんな料理にされるんだろう。ナスをおいしく食べるならやっぱりシンプルな焼きナスかなあ。お肉と一緒に炒め物にされ

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【小説】苦悩の人

 目が覚めると、目の前には女が一人。
「おはようございます。あなたは選ばれたのです」
 俺はてんで意味が分からず、「選ばれた?」と間の抜けた声で繰り返す。
「そうでございます。あなたは選ばれたのです」
「選ばれたとは何にですか。そもそもここはどこなのですか。俺は確かに昨日、自分の部屋で自分のベットの上で瞼を閉じたはずなのですが」
「あなたは選ばれたのです。あなたはただ、それを受けいれるだけでよいの

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【小説】溺れるアロサウルス藁をも掴む

 アロアロアロアロ。アロ。アロアロンアロアロア、アロロアロアロ。アーロアロアロ。アロサウルス、アロアローロアロロアロ。アロロ、アロアロロ。アロンア。
 アロアロアロ。アロロ、アロロンアロアロ、アローアロー。アロアロアロ、アロンアロンアロン。アローアーロ。アロンアロンアロンアロアロン。
 アロロ、アロン。アロアーロアロアロロアロ、アロアロアロアーロ。
「アロロロ、アロアロアロロ、アロアロ。トリケラト

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【小説】メシマズヒロイン地獄変

(この小説は、カクヨムにて開催された崇期様主催の企画「笑いのヒトキワ荘・ドジョウのおでん杯」に応募した作品です)

 昨日で付き合って一年になるわたしの彼は、今まで一度もわたしを抱いてくれませんでした。理由を聞いても、彼は決まって「亜衣のことは好きだよ。でも今日はちょっと疲れているんだ」と言って悲しそうな眼をしてそそくさと自分の部屋へ入っていきます。
 なのでわたしはその謎を解くため、彼の部屋へと

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【小説】魔法少女マジカルフレア!第八十九話「史上最強の敵、ドジョウ伯爵!」

(この小説は、カクヨムにて開催された崇期様主催の企画「笑いのヒトキワ荘・ドジョウのおでん杯」に応募した作品です)

 あたしの名前は炎田萌果、どこにでもいるフツーの中学三年生! だったんだけど、ある日突然妖精のみーたんが現れて「魔法少女になって地球の平和を守ってほしい」ってお願いしてきたの! おじいちゃんの遺した借金の金利を減らすことを条件に魔法少女になったあたしは、今日も地球の平和を守るため、こ

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【小説】神の一手

 時はデス令和五〇〇年。将棋界は未曾有の危機に瀕していた。AIの発達は凄まじく、もはや人間の思考は対局に介在することなく、人間の皮を被ったAI同士の戦いの如き様相すら見せていた。
 そんな最中、かつての名人果糖九段は若手の有望株半尻七段との順位戦での対局中、誰も見たことの無い斬新すぎる新手を繰り出した。AIですら予想することの出来なかったその一手は対局相手である半尻七段の闘気を文字通り根こそぎ奪っ

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【小説】カレーにズッキーニを入れた男

 休日の朝。家の近所を散歩していると、見知らぬ男に呼び止められた。
「お前、カレーにズッキーニだけは絶対に入れるなよ」
「はい?」
「だから、カレーにズッキーニは入れるな。さもなければ、お前をここで殺さねばならない」
 そう言うと、男は肩にかけたカバンから、布に包まれたなにやら細長いものを取り出した。あっけにとられる俺を尻目に、男は布をするするとほどいた。青黒い刃が朝日に照らされギラリと光る。

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【小説】アヴェンジャー・ババア~怒りの中国自動車道~

 中田洋子(81)はその日、四年ぶりに我が家を訪問するというひ孫をもてなすため、郊外のショッピングモールに買い物へ行く予定を立てていた。洋子は運転免許を数年前に返納して以来、郊外への移動は決まって路線バスを利用している。その日も洋子は十時三十八分に近所のバスターミナルを出発するために家を出たのであった。時刻は十時二十二分。
 洋子の家の近所にあるバスターミナル――鳥鳥駅前バスターミナルは、ゴールデ

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【小説】スペース節分

 皆さん、準備できましたか?
 ……、いい返事ですね。今年もこうやって四年一組の仲間たちで季節の行事を楽しめることが、先生とっても嬉しいです。きっとこれも皆さんが毎日お勉強を頑張っていることとあのお方が海のように深く深く深く我々を愛してくださっているからでしょう。
 あっごめんなさい、先生ったらついついまたお話が長くなっちゃったわ。
 じゃあ気を取り直して、元気にスペース豆まきを始めましょうか!

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【小説】ブラックホールとゴシップガール

「今日からうちに配属されることになったブラックホールくんだ。さあ、ブラックホールくん何か一言」
 宇宙服を身にまとった課長が虚空に向かってそう促した。課長はどうやら奥さんの言いつけは守らないタイプの人間らしい。宇宙服がパツンパツンだ。
「どうも、ブラックホールです。まだまだ分からないことだらけですが、一生懸命頑張るのでよろしくお願いします」
 パラパラとまばらな拍手がフロアに響く。我々総務課らしい

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【小説】上海老人交流会

 小さい頃にニュース映像で見た上海の街並みに、純朴だった少年の私の心は見事に惑わされた。
 それから六十年。私は上海へのあこがれを胸に抱きながら生きてきた。長期の休みがあれば欠かすことなく上海へ足を運び、上海になじみの店が何軒もできた。私の家、一人で自由気ままに暮らすその家には、上海ゆかりのものが所狭しと飾られている。
 しかし、あれだけ愛してやまない上海にすべてをささげる、私の理想としていた素晴

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【小説】怪奇!梨人間

「いいか、この村では決してリンゴを食べてはいけないぞ。リンゴを食べたら梨神様の怒りに触れて、恐ろしい目に合うからな。まあに、そんなに怖がらなくてもいいぞ。何せ、リンゴなんかよりも梨のほうがおいしいに決まっているからな。ほれ、どんどん食えよ。宗太郎。どんどん食べて大きくなって、じいちゃんの畑を継いでくれよ」
 じいちゃんはそう言って、ガハハと豪快に笑いました。ぼくはそんなじいちゃんの笑った顔がいっと

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【小説】怪人○○女

 薄暗い部屋の中、二人の男が話している。一人は真っ黒なケープに体を包み、右目には黒い眼帯をしている。眉間にしわを寄せ気難しそうな顔で、傍らに立つ白衣をまとったもう一人の男に声をかけている。白衣の男は口元に白いひげを蓄えたいかにも学者然とした見た目をしている。
 そして、男たちの目の前には怪しい光を放つ大きな装置が一つ。
「なあ、博士よ。今回こそは成功するんだろうな?」
「なあに、心配はいりませんぞ

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【小説】ビート板になった男

「それでは、非生物への転生コースで転生物はビート板でお間違いなかったでしょうか」
 目の前にいる長髪の少女はそう言うと、私の前に一枚の書類を差し出した。そこには『特別転生許可証明書』と書かれていた。私は大丈夫ですと一言言って、前田良夫と大きく堂々とサインをしたのであった。

 思えば私の人生ほど不憫で理不尽なものはなかった。身長は成人しても平均身長に遥か届かず、就職活動では二百社落ちてようやく内定

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