諏訪原天祐

へんてこりんな小説を書く人/作品集は架空ストアさんにて委託販売中!

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最近の記事

【小説】ブリ村ゴキ右衛門一代記

~前回までのあらすじ~  名門一族の末裔であったブリ村ゴキ右衛門は悪徳貴族のゴキ山一族の策謀によって故郷の村を追われてしまう。さらに最愛の妹ゴキ美の命を目の前で奪われたゴキ右衛門は復讐の鬼となりゴキ山一族を根絶やしにすることを決意する。  修行のために訪れた街で酒屋の娘ゴキ子と恋に落ちたゴキ右衛門はゴキ子の酒屋がゴキ山一族の配下によって経営の危機に追い込まれていることを知る。ゴキ山一族の幹部の一人であるゴキ夫との壮絶な果し合いの末、辛くも勝利を収めたゴキ右衛門はゴキ夫の口から

    • 【小説】ありがとう

      「ありがとう」  ねぐらの入り口からケンさんはひょっこりと顔を出してそう言った。いつも快活でニコニコとした笑顔を絶やさない彼なのだが、なんだか今日はやけに難しそうな顔をしていた。 「いやいや、何のことですかケンさん。昨日の空き缶のことなら気にしなくていいって言ったじゃないですか」 「ありがとうな、ウッチー」  ぼくの話を遮るようにケンさんは妙に低い声でもう一度そう言うと、ふいといなくなった。なんとなく違和感を覚えたけれど、そんなことをのんびりと考える時間はぼくにはなかった。そ

      • 【小説】師匠

         えー、たくさんのお運びでありがとうございます。こんなにたくさんの方に足を運んでいただけるというのは、落語家冥利に尽きるものでありますね。わたくしもたいがい売れない落語家でありましたからね、こんなに多くの方にわたくし最期の独演会、来ていただけるなんて思ってもおりませんでした。師匠からはよく「お前は客入りが多いとはしゃいじまうからいけねえ」と言われておりましたが、これはさすがにはしゃがずにはいられないでしょう。  皆様もおそろいの一帳羅で着飾って、まるで渋谷のカラスのよう。なん

        • 【小説】溺れるアロサウルス藁をも掴む

           アロアロアロアロ。アロ。アロアロンアロアロア、アロロアロアロ。アーロアロアロ。アロサウルス、アロアローロアロロアロ。アロロ、アロアロロ。アロンア。  アロアロアロ。アロロ、アロロンアロアロ、アローアロー。アロアロアロ、アロンアロンアロン。アローアーロ。アロンアロンアロンアロアロン。  アロロ、アロン。アロアーロアロアロロアロ、アロアロアロアーロ。 「アロロロ、アロアロアロロ、アロアロ。トリケラトプス、アロロロロロロロ」  アロロアロロ。アロアロアロアロ、アロロ。トリケラトプ

        【小説】ブリ村ゴキ右衛門一代記

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        • 諏訪原小説コレクション
          18本

        記事

          【小説】胃もたれ侍、異世界へ行く

          「三郎!またか!」 「はあ、その通りです。誠にかたじけない」  弱々しくうなだれる三郎を見て、鼎蔵は大きなため息をついた。 「まったく、お前は剣の腕は立つのにどうしてそんなに腹が弱いのだ!われわれの悲願成就のために、お前の力は不可欠なのだぞ!」 「そうは言われても、儂にもどうにもならんのです」 「医者にはかかったのか」 「もう何度も。長崎で修行した何某とかいう医者にも見てもらいましたがね。どうも病というより、そういう性分なようで……」  三郎はそう言って、懐から粉薬を出し口に

          【小説】胃もたれ侍、異世界へ行く

          【小説】メシマズヒロイン地獄変

          (この小説は、カクヨムにて開催された崇期様主催の企画「笑いのヒトキワ荘・ドジョウのおでん杯」に応募した作品です)  昨日で付き合って一年になるわたしの彼は、今まで一度もわたしを抱いてくれませんでした。理由を聞いても、彼は決まって「亜衣のことは好きだよ。でも今日はちょっと疲れているんだ」と言って悲しそうな眼をしてそそくさと自分の部屋へ入っていきます。  なのでわたしはその謎を解くため、彼の部屋へと突入することにしました。 「ひろくん! 入ります!」  普段わたしは必ずノック

          【小説】メシマズヒロイン地獄変

          【小説】魔法少女マジカルフレア!第八十九話「史上最強の敵、ドジョウ伯爵!」

          (この小説は、カクヨムにて開催された崇期様主催の企画「笑いのヒトキワ荘・ドジョウのおでん杯」に応募した作品です)  あたしの名前は炎田萌果、どこにでもいるフツーの中学三年生! だったんだけど、ある日突然妖精のみーたんが現れて「魔法少女になって地球の平和を守ってほしい」ってお願いしてきたの! おじいちゃんの遺した借金の金利を減らすことを条件に魔法少女になったあたしは、今日も地球の平和を守るため、このマジカル自動小銃(SKSカービン)片手に悪の組織ワルワル団と戦っています!

          【小説】魔法少女マジカルフレア!第八十九話「史上最強の敵、ドジョウ伯爵!」

          【日記】新刊の話をさせてくれ

          みなさん、こんにちは。諏訪原天祐こと薬指長人間です。文学フリマ東京37までいよいよあと1週間ですね。諏訪原は楽しみすぎて興奮しています。 なにせ、諏訪原にとっては初めての東京のイベント。新刊の『遺伝子のゴール』も最高の出来になって、あとはみんなに読んでもらうだけ! ……読んでもらえる? そう、そこがいちばんの問題です。諏訪原は一介の同人クソ小説書き。しかもだいぶんニッチな作風のそれです。じゃあ、どうすればいいか。簡単です。宣伝! 宣伝するんや! というわけで、今回は新

          【日記】新刊の話をさせてくれ

          【小説】神の一手

           時はデス令和五〇〇年。将棋界は未曾有の危機に瀕していた。AIの発達は凄まじく、もはや人間の思考は対局に介在することなく、人間の皮を被ったAI同士の戦いの如き様相すら見せていた。  そんな最中、かつての名人果糖九段は若手の有望株半尻七段との順位戦での対局中、誰も見たことの無い斬新すぎる新手を繰り出した。AIですら予想することの出来なかったその一手は対局相手である半尻七段の闘気を文字通り根こそぎ奪っていった。  半尻七段、ショック死。  この対局をたまたま見ていた将棋連盟会長細

          【小説】神の一手

          【日記】もしも出囃子が必要になったら

          みなさん、こんにちは。諏訪原天祐こと天津飯大好き星人です。先日、空気階段の単独公演を見に行きました。もちろん公演の中身も最高だったんですが、何よりいちばん諏訪原が興奮したのが、 出囃子が鳴った瞬間でした。 空気階段の出囃子といえばJAGATARAの「タンゴ」。会場が暗転し、「タンゴ」が鳴る中、照らされた舞台に立つ空気階段の二人…。もうこのシチュエーションだけでご飯3杯はいけますね。いけるよね? ていうか、ただ諏訪原がJAGATARAと空気階段が好きなだけなのでは? 公演

          【日記】もしも出囃子が必要になったら

          【日記】文学フリマ大阪11頒布物紹介

           みなさん、こんにちは。諏訪原天祐こと罪人です。というわけで、 文学の秋だーーーー!!!!!  はい、そういうことです。いよいよ暦の上では秋、誰がなんと言おうと、30度越えの日がまだまだ続こうとも秋なんです。一年で一番同人イベントがカービィのボスラッシュが如く立て続けに開催される季節です。諏訪原も9月10日の文学フリマ大阪11を皮切りに、11月まで各地のイベントに出没します。しかも、諏訪原が文学フリマに出店するのは4年ぶり!!それも以前の名義だったり大学のサークルだったり

          【日記】文学フリマ大阪11頒布物紹介

          【小説】カレーにズッキーニを入れた男

           休日の朝。家の近所を散歩していると、見知らぬ男に呼び止められた。 「お前、カレーにズッキーニだけは絶対に入れるなよ」 「はい?」 「だから、カレーにズッキーニは入れるな。さもなければ、お前をここで殺さねばならない」  そう言うと、男は肩にかけたカバンから、布に包まれたなにやら細長いものを取り出した。あっけにとられる俺を尻目に、男は布をするするとほどいた。青黒い刃が朝日に照らされギラリと光る。 「俺はこいつでお前を叩き切る準備ができている。お前はここで一言、『カレーにズッキー

          【小説】カレーにズッキーニを入れた男

          【小説】アヴェンジャー・ババア~怒りの中国自動車道~

           中田洋子(81)はその日、四年ぶりに我が家を訪問するというひ孫をもてなすため、郊外のショッピングモールに買い物へ行く予定を立てていた。洋子は運転免許を数年前に返納して以来、郊外への移動は決まって路線バスを利用している。その日も洋子は十時三十八分に近所のバスターミナルを出発するために家を出たのであった。時刻は十時二十二分。  洋子の家の近所にあるバスターミナル――鳥鳥駅前バスターミナルは、ゴールデンウィークの中日ということもあり、普段のさびれた様相とは打って変わって、主に大都

          【小説】アヴェンジャー・ババア~怒りの中国自動車道~

          【小説】スペース節分

           皆さん、準備できましたか?  ……、いい返事ですね。今年もこうやって四年一組の仲間たちで季節の行事を楽しめることが、先生とっても嬉しいです。きっとこれも皆さんが毎日お勉強を頑張っていることとあのお方が海のように深く深く深く我々を愛してくださっているからでしょう。  あっごめんなさい、先生ったらついついまたお話が長くなっちゃったわ。  じゃあ気を取り直して、元気にスペース豆まきを始めましょうか!  せーの!  太陽系生命体は外!  縺ッ繧薙§繧?⊃縺溘?様は内!  太陽系生

          【小説】スペース節分

          【小説】ブラックホールとゴシップガール

          「今日からうちに配属されることになったブラックホールくんだ。さあ、ブラックホールくん何か一言」  宇宙服を身にまとった課長が虚空に向かってそう促した。課長はどうやら奥さんの言いつけは守らないタイプの人間らしい。宇宙服がパツンパツンだ。 「どうも、ブラックホールです。まだまだ分からないことだらけですが、一生懸命頑張るのでよろしくお願いします」  パラパラとまばらな拍手がフロアに響く。我々総務課らしい、なんとも気だるげな光景である。  ブラックホールが席につき、各々がのっそりと業

          【小説】ブラックホールとゴシップガール

          【小説】上海老人交流会

           小さい頃にニュース映像で見た上海の街並みに、純朴だった少年の私の心は見事に惑わされた。  それから六十年。私は上海へのあこがれを胸に抱きながら生きてきた。長期の休みがあれば欠かすことなく上海へ足を運び、上海になじみの店が何軒もできた。私の家、一人で自由気ままに暮らすその家には、上海ゆかりのものが所狭しと飾られている。  しかし、あれだけ愛してやまない上海にすべてをささげる、私の理想としていた素晴らしい生活を送っている半面、私の心にはどこか空虚な穴が開いていた。  その穴の理

          【小説】上海老人交流会