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9月映画感想 ジャスティス・リーグ

 映画を見始めて……あら、ずいぶん色調が明るいんだな。
 今までのDC映画ならもっと画面は暗かったし、ザック・スナイダー監督はもっとギラギラするような絵画的な画面作りをしていたはず。『ジャスティス・リーグ』は人物のシルエットが明確だし、カット一つ一つに厚みを感じない。物語の進行もテンポが良く、きちんとコントロールされている感じがある。
 視聴を終えた後で知ったが、ザック・スナイダー監督は娘の不幸があって途中降板。ジェス・ウェドンが後を引き継いでいたという。ああ、それで……。えらく作風が変わったな……とか思って見ていたよ。

 さて、映画の本編。スーパーマンが死に、世界に新たな脅威が迫ろうとしていた……。
 この冒頭の展開、ちょっとよくわからなかった。レックス・ルーサーが残したキューブ……もしかして前作から何か伏線あったのかな? この頃は記憶がさっぱり続かないので、何も憶えていない。
 新たな脅威である、ハエのようなメカのようなパラデーモンと呼ばれるものと、それを束ねるステッペンウルフに対抗するための仲間を集める。
 ステッペンウルフだが……あまり格好良くないなぁ。ステッペンウルフと戦った回想のシーンが描かれるのだが、なんだかありきたりなファンタジー映画のような描写になっている。似たような映像を『ロード・オブ・ザ・リング』で見たなぁ……。それでステッペンウルフの由来がSFとファンタジーの合いの子のような描かれ方になっている。どっちつかずな中途半端な感じがなんとも居心地が悪い。これが今回のラスボス、というのはちょっとインパクトに欠ける。

 バットマンの仲間集めはかなり軽快に物語が進んで行く。登場人物の紹介がテンポ良く、わかりやすく進行していき、バットマンのチームに入っていくまでが合理的に描いていく。こういう展開の良さは、ザック・スナイダー監督にはなかった。むしろ監督代わってて良かったかも、と思えるところ。

 バトルシーンに入っていくが、案の定、バットマンが弱い。前作でもスーパーマン、ワンダーウーマンの戦いを前にして、「スーパーサイヤ人の戦いを見ているヤムチャ」状態になっていたバットマンだが、今回はさらなるスーパーヒーロー加盟でバットマンの存在感がますます薄くなってしまっている。サイボーグの参加で、バットマンといえば頭脳……だったところも持って行かれてしまったし。もはや、変な格好をしているただの金持ちでしかない。
 ゴッサムシティのいかれた犯罪者相手に、肉体も精神もボロボロにさせながら戦っていた頃のバットマンは格好良かったんだがなぁ。バットマンの存在感は、ゴッサムシティという場所とあの場所の物語の中でこそ輝いていたのだが、真のスーパーヒーローの前ではなんだが居心地悪そうに感じられた。バットマンはスラムのチンピラの前では強くても、所詮は人間だものなぁ。

 ワンダーウーマンは相変わらず好き。ガル・ガドットはスタイルがいいので、いい尻だなぁ……と眺めて楽しかった。

 それはそれとして、DCヒーローは1人1人が異様に強い。マーベルヒーローは特殊能力は持っていても、それ以外のところはさほどでもなかったりする。マーベルヒーローは特殊能力(……というか変異体)をうっかり与えられてしまった人だ。一方のDCヒーローは本当に超人揃い。バトルシーンの描き方がまるっきり違う。ほとんどCGになってしまうわけだが、度外れた力のぶつかり合いが見ていて楽しい。

 中盤を越えて、1時間10分くらいのところでスーパーマン復活。なんだ、意外にあっさり復活しちゃった。死亡から結構時間が経っているはずなのに、腐敗がまったく進んでいなかったところがスーパーマンらしい。
 復活したスーパーマンは、困惑して集まってきたヒーロー達と戦うことになるが……(ワンダーウーマンを始めとするヒーロー達が集まってくるが、バットマンは遅刻……バットマンは普通の人だから仕方ない)。展開は無理矢理な気がしたが、スーパーマンの異常な強さがよくわかる。超人であるはずのワンダーウーマンでさえもスーパーマンの前では「スーパーサイヤ人を前にした地球人」状態。クリプトン星人がいかに桁外れな戦闘民族だったかよくわかる。スピードが売りだったはずのフラッシュも、スーパーマンに破れてしまう。スーパーマンが強すぎて他のヒーローの特性がかすんでしまっている。
 しかし、スーパーマンはすぐにジャスティス・リーグに参加しない。ああこれは、スーパーマンをデウス・エキス・マキナとして使うつもりだな。
 映画はいよいよクライマックスへ、決戦の場ロシアへ集結する。ステッペンウルフはなんかラスボスとしての貫禄に欠けるんだよなぁ……と思いながらも、バトルはなかなか白熱する。まあ、結局はスーパーマンの参戦と同時に決着がついてしまうわけだけど。もう前衛スーパーマンであとはバックアップでいいよね、これ。

 『ジャスティス・リーグ』なかなか面白かったが、やっぱりヒーロー1人1人が薄味に感じられるのが難しいところ。『アベンジャーズ』も薄味だったから、ヒーロー集結映画はどうにもキャラクター整理が難しい。『ジャスティス・リーグ』の場合は、ヒーロー達を紹介する映画がない状態で作られてしまっているから「誰だお前」感が出てしまっている。『スーサイド・スクワッド』に登場したヴィランにも同じことを感じたけども。「ヒーロー集合映画」を作るにしても、順序を間違っている感がある。
 特にバットマンの存在が薄くなってしまっている。スーパーヒーローの中でもバットマンだけが異彩というか……いやいっそ場違い感がある。一応リーダーとしてヒーローチームを指揮する立場になったが、力はほぼ最弱(フラッシュよりかは腕力ありそう)、頭脳や諜報能力はサイボーグのほうが上、特筆するスーパーパワーもなし。それどころか、ゴッサムシティの闇にひっそり佇む、あの孤高の格好良さが消えてしまっている。他のヒーロー達と較べて、世界観が違いすぎる。(バットマンがいないとなんとなく成立しないのはわかるような気がする。バットマンがいなかったら、興行にも響きそうだし)
 『ジャスティス・リーグ』シリーズはこれからも続くようだけど……バットマンの扱いはこれからも変わらない感じなのだろうか。

9月6日

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